punizouさん 86900 キリ番特典 お題「夫に捧げる○○」
「 夫よ、液体人間であれ 」

 外での男としての顔は別として、
夫として男に求められているのは、
「液体であれ」ということだと、私は勝手に思っている。

 「外で気を使って働いてきたのだから、
家の中では、俺の好きなようにやらせろ」
というタイプのコチコチの「固体男」は、
面倒くさいのでお断りしたい。

 「外でどうか」なんてどうでもいいから、
ウチでは、ウチの流れに乗れよ、と思う。

 幼い子供が残したおかずは、
文句を言わずに自らすすんで食べるとか、
ゴミが落ちてたらニョーボに
「ゴミ落ちてるぞ」
なんて怒鳴り散らさないで、
黙ってスッと拾ってゴミ箱に入れるくらいのことは
無意識にやってくれよ、と。

 あんたの留守中、
ニョーボは、三食昼寝つきで
ごろごろしながらワイドショー見て
せんべいでもかじっていると思ったら大間違いで、
自分の生理現象も二の次で
あんたのジュニアを育てるのに命がけなんだから、
少しは感謝の意を示せよ、と。

 幼い子供を心身共にまともに育てるということは、
はっきり言って手かせ足かせを付けて
42,195キロを全力で走るくらい大変なことなんだから、
会社で気を使ってどうこうとか、
取引先の上司のバカがどうとか、
そんなのとは次元が違う命がけの労働なのだ。

 だから、私はあえて言いたい。

 夫よ、家では液体であれ、と。
 自分の固い型に
家族を押し込めようとするのではなく、
ニョーボの命がけの事業を尊敬し、
家庭という箱の中で液体になって、
必要な隙間隙間に流れ込み、
その穴を埋めよ、と。

 もし働くニョーボを持ったなら、
家事育児も自分の仕事だと心得よ、と。

 女に仕事も家事も子育ても、
全部押し付ける男は、
もはや夫とは呼ばず、ただの種馬だ。
 そんな馬野郎が、家庭に金をポンと渡したところで、
そいつのことは、夫とも父親とも呼べない。
 あえて呼ぶなら
 「金持ってくる種馬」だ。

 イッチョマエに 
「夫」と呼ばれ、「父親」と呼ばれたいのなら、
家庭では、求められる存在になることだ。

 そして、女子供がどうもこうもならない
混乱状態になっているときには、
自分まで一緒になって混乱していないで、
ここぞとばかり、男を見せろ、と。

 冷静に客観的に広い視野で、
そのパニックを収めろ、と。

 それができなきゃ「夫」でも「男親」でもない。

 それをやらなきゃ、夫はいらない。
 気の利く近所のおばちゃんの方がいい。
 イケメンの御用聞きの方がいい。

 その辺の原則さえ守ってくれるのなら、
あんたがヨボヨボのじじいになったって、
ボロボロの寝たきりになったって、
面倒みてやる、って言ってんだから、
心して身の振り方を考えよ、と。

 自分のことはさておいて、
ニョーボの立場から勝手にいわせてもらうと、
・・・・・・そうなります。


 (了)

(しその草いきれ) 2005.8.9. あかじそ作