『育児グッズに物申す』


 うちの第1子は、バブル全盛の時に生まれた。
したがって、育児用品は、今よりもずっと高価だった。
 そして、高いのに・・・・・・最悪のセンスだった。

 今でこそモノトーンやナチュラルカラーの育児グッズも流通しているが、
10年前は、ひどかった。
 まず、マタニティー服を買いに行った時点でへこむ。

 淡いピンクのオーバーオール、そして胸当てには、
とっても不細工なワンちゃんのイラストがプリントしてある。

「こりゃあ、やばいでしょう?」

と、隣の服も見てみる。 

「おっと、紺のジャンパースカートもあるでないの!」

と、手にとると、可愛いロゴだ!

「おぅっ? いんでない、いんでない?」

と、よく読んでみると

<LOVE SWEET BABY>

と書いてある。

「おいっ! 文法めちゃくちゃだよっ!」

 でも、私には、まだ笑う余裕があった。

 ついでに、ベビー服も買っておこうと、ワゴンの上の
小さな小さなドレスに手をかける。
純白でシルキータッチの上等な出来だ。
 しかし!
 嗚呼・・・・・・。
 金の糸で、さりげなく刺繍されている。

<kumakuma land>

「どんなランドなんだよ、そりゃ!」

もちろん、マイナーなクマの顔が刺繍してある。
 純白のシルキータッチが台無しだ!

 なんせ、クマは、ベビーグッズのどこにでもいる。
クマだらけ、と言っても過言ではない。
 クマ、って熊だぞ。
ベビーもママも、食われちまうんだぞ!
 何だ、kumakumaって! 阿呆!

 もう、購入意欲減退も、はなはだしい。

 私は、膨らみかけた腹をさすりながら、家路につき、
苦笑しながら玄関のカギを開けようとすると、閉めたはずのカギが開いている。
 ギョッ、としながらも、そっと中に入ってみると、部屋の中では、母が、
こちらをにこにこしながら見ている。

「合鍵で入らせてもらったわよ! ほらっ! 買ってきたわ! これ!」

 嫌な予感だ。
まさか、kumakumaか?!

 6畳間全体に広げられた、マタイティードレスと、ベビーグッズの数々には、
おびただしい数のクマが!

 よだれかけには、<PAKU PAKU KUMA-CHAN>
ベビー用食事イスには、<BEAR BABY>
ロンパースのクマの下には、<I LOVE BEER>

と、書いてある。
「ん? BEER?」
BEARでなくて?

「おいおいっ! スぺル間違えるなよ!」

 新生児の服に「ビールすっきやねん」は、ないだろ!
それとも、シュールなシャレか?(多分違うな)
 
 何でもローマ字にして並べりゃあ、オシャレだと思ってるいるんじゃ?!
文法の違いも、微妙に気持ち悪いぞ!
 何だ! <BEAR BABY>って! 
<熊 赤ん坊>ってどういうこと?

 そして、こんなもの、誰が買うんじゃい!
って、私のベイビーが使うのか〜〜〜〜〜い!!

 もう・・・・・・笑えない。
 
           
                   (おわり)
2001.10.17 作:あかじそ