子だくさん 「夏休み経済報告 ’10」

 
 子供が乳幼児、あるいは、主に小学生だった頃は、
連日、昼食は、そうめんそうめんの連続だった。

 「え〜〜〜っ! またそうめん?!」
と、声を揃えて強く抗議されると、
「うるへ〜! 嫌なら昼抜きだぞ〜!」
と怒鳴り返せば、みな黙って食べた。

 しかしながら、上の二人が中学に入り、
夏休みも連日部活で、大会前の猛練習となると、
朝から晩までずっと学校なので、
夏休み中、毎朝、弁当水筒を二つづつ持たせ、
家に居る小食のチビ3人と私は、
昼ごはんも、ちまちまと家にある物をつまんで終わりだった。

 そして、上二人が高校生になると、
夏休み中は、ずっと家に居る。

 学校のある日はふたりとも毎日弁当を持って行くが、
夏休みともなると、
受験生の長男も、たまにしか活動しない軽音楽部の次男も、
家で一日中ゴロゴロしていて、
朝から晩までメシメシ言っている。

 中学生の三男は、野球部の早朝練習で、毎朝4時半起き。
 2リットルの水筒に麦茶、
500リットルの水筒にスポーツドリンクを入れて持って行き、
6日に一回、ジャグ当番で親が9リットルのジャグに麦茶を入れて、
ある時は校庭に、ある時は駅に、またある時は試合会場まで運ぶ。

 例年なら、毎日、朝から晩まで練習があり、
前述の飲み物プラス「特大弁当」と、デザートとして、ゼリーやフルーツ、
はちみつレモンなどを持参させるのだが、
今年は異常な猛暑のため、
子供たちの健康を考えて、まだ涼しい早朝から昼過ぎまでの間に
練習を行うことにしたらしい。

 だから、午後の2時とか3時とか、
家族が昼食を終えて、ちょっと買い物にでも行こうかな、
という中途半端な時間に帰ってくる。

 そして開口一番、
「腹減った!!! めし!!!」
と、叫ぶのである。

 三男と夫以外の5人分の昼食を作り、食べさせ、
やっと後片付けを終えた頃に、
また、
「めし!!!」
ときて、
もたもたしていると、
「めしまだ?! 腹減って死にそう!!!」
と、激しくせかされる。

 連日、休み無しで、早朝から午前中まで、
猛暑の中、死に物狂いで配達してきて、
やっと終わらせて帰ってくるとすぐに子供4人の昼食を作り、
そして、自分もやっと食事にありついて、
一休みしたら、すぐにまた人一倍味にうるさい三男が帰ってきて、
「めしめしめしめし!!!」
と言うので、夏休み前半は、私は、完全に疲れきってしまった。

 夕方になると、毎日、居間で突っ伏している私を見て、
さすがに子供たちは心配し、
8月は、自主的に昼食を作ってくれるようになった。


 次男は、そうめんが物凄く好きなので、
時々、私に代わってそうめんを茹でてくれた。

 長男は、冷やし中華が好きなので、
庭からきゅうりをもいできて、全員分の冷やし中華を作ってくれた。
 三男の分は、スープを掛ける寸前まで作って、
冷蔵庫のチルド室に入れておいてくれるので、
そういう日は、私も少し楽ができた。

 一回の昼食分として、
6枚切りの食パンを3パック買っておくと、
各自、ジャムを塗ったり、
シナモントーストを焼いたり、
ケチャップを塗り、とろけるチーズを乗せ、バジルをかけてピザ風にしたりして、
勝手に昼食を済ませてくれるので、
仕事が長引いたときなどは大助かりだった。

 長男は、学校で補講、
次男は、軽音の部活、
三男は野球部の練習、
四男は、学校のプールなどで、
各自、バラバラの時間に外出するので、
一気にそうめんを茹でて食事、
というのもだんだん難しくなってきていたので、
安いレトルトカレーを大量に買ってきたり、
一人分づつ個別包装された「チャーハンの素」を用意したり、
お茶漬け海苔をたくさんストックしたりして、
各自で作って、別々に食事できる用意もした。

 なにせ、母親の私が、
昼時仕事で居たり居なかったりなので、
今までのように手間を掛けて節約料理をふるまうことも出来にくくなっている。

 また、一日中家に居る予定だと言っていても、
高校生たちは、突然友人に携帯で呼び出されて、
用意した食事も食べずに出て行ってしまうことも多い。

 中学生の三男は、
部活が終わった途端、
帰宅し、昼食をかっこんですぐに、
野球部の友人たちとプールや外遊びに出掛けてしまう。

 出掛ける予定も、食事の予定も、まったく立たない。

 また、受験生の長男は、
毎日のように「オープンキャンパス」という大学の見学会にあちこち出掛け、
交通費だ、昼食代だ、と言って、
毎日2000円、3000円と持って行く。

 私の日給を超える金額を毎日持って行ってしまうからたまらない。

 次男は、バイト探しに紛糾し、
いくつか面接を受けたが、
結局、夏休みじゅうに採用は決まらなかった。

 高校生ふたりの携帯代、計2万円弱は、
目下、ふたりともバイトをしていないので、
全部、私の稼ぎから捻出。
 これも、結構痛い。

 三男は、毎週末試合で遠征しまくり、
そのたび、バス代2000円、電車代1500円、部費3000円と、
ひっきりなしに集金される。

 その上、激しい練習で、
練習用ユニフォームや専用ソックスなど、
バカじゃないの、というくらいすぐに破れまくり、
アホか、と言うくらいバカ高いスポーツ用品を買い足すことを繰り返す。

 そして、腹が立つことに、
「お母さん、安いイグニオじゃみんなにバカにされちゃうよ。
ミズノかゼットじゃなきゃダメなんだってば!」
と、三男がガミガミ言うので、底値でしか物を買わない私が、
中くらいから高い方の価格設定の物を泣く泣く買っているのだ。

 あり得ないぞ、この出費!!!


 イレギュラーな食事に対応するための、個食用食費がかさみ、
更に、各種交通費、支払い、必要経費が尋常じゃなく多くなり、
この夏、ついに、各種支払い用メインバンクの残高が不足してしまった。

 国民年金の引き落としができなかった、という通知が、初めて送られてきて、
「貧乏でも支払い期限を必ず守ってきた」という自負のある私は、かなりショックだった。
 
 「高校の授業料が無償化」と言っても、
実際は、公立高校でも、
授業料以外に諸経費として月2万円以上支払わなければならないし、
私立の幼稚園は、相変わらず、年間40万円以上掛かるし、
高校生二人と幼稚園児ひとりの、計3人で、
通学の定期代やら何やらも合わせると、学費が年間100万円は軽く超える。

 児童手当も子供手当も、焼け石に水で、
子供がらみのことで、一瞬で蒸発してしまった。


 いつも貧乏だったわが家においても、
今年、来年は、まさに正念場で、
じ〜〜〜〜〜〜〜〜っと耐えねばならぬ。

 子供には、貧しさを実感させないように気を付けているが、
さすがにこのお金の掛かり方は、ヤバすぎる。


 また、夫の父が正月に亡くなったので、義弟が遺産を整理してみたら、
亡父が、家族に黙って親戚の会社の保証人になっていたことがわかった。
 その保証人という立場も相続しなければならない、と銀行に迫られ、
もしそれを拒むのなら、
「一時金」として、数百万円払え、と、訳のわからない要求をされてしまったともいう。

 
 何なんだ、その負の遺産。

 ただでさえ、鼻血が出るほど金欠なのに、
更に、その上、この極貧家族に多額の保証人になれ、と言うのか?

 
 やばい、ヤバすぎるぜ。

 亡父の弟にあたるおじさんが、
「保証人のことは、わしが責任を持っていいがにしてやるさかい心配せんでいいわ」
と言ってくれていると言うが、何だか気持ちの悪い話だ。


 ああ、この夏は、金掛かる!!!
 中高生のいる家では、そうめん攻撃は、もう通じない。

 知らないところで勝手に保証人にさせられて、
親戚の会社がつぶれたら、この家を乗っ取られることもあるってか?!
 
 あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、
いやだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

 下流家庭なのに中流家庭を装っていたけれど、もう無理だ!

 完全にわが家が最下層に流れ込んで行く音が聞こえるよ〜〜〜!

 ザザ〜〜〜〜〜〜〜〜ン、だよ〜!
 夫婦二人とも不眠不休で働いているけれど、
どんどん貧乏になっていくぞ〜〜〜!!!

 ザッツ、「ワーキングプア」だぞ〜〜〜〜〜!!!
 いいぇ〜〜〜〜〜〜い!!!

 もう笑うしかないぜ!
 あ〜〜〜〜〜〜っはっはっはっはっは!!!
 っだ!

 考えたって、悩んだって、
なあ〜〜〜んも解決しないもんね!

 働いて働いて、身を粉にして働くしかないもんね!
 何も難しいこと考えず、愉快に笑いながら、
働いて働いて、今日1日を乗り越えていくんだもんね!!!

 
 子供たちよ、よく見とけ!!!

 笑いながら汗を流す親の姿をな!!!




   (子だくさん)2010.8.31.あかじそ作