「 送迎バスラッシュ 」


 夕方の3時から4時ごろにかけて、
家の前で幼稚園の送迎バスを待っていると、
娘の通う幼稚園のバス以外にも、
3〜4種類の違う幼稚園の送迎バスが行き来する。

 この辺は、田舎だし、徒歩圏に幼稚園が無いため、
いくつもの園の送迎バスがたくさん行き交っている。

 4メートルの細い道路で、
大きなスクールバスがギリギリですれ違う光景は、
見ていてヒヤヒヤする。

 そんな中、スクールバス以外にも、
何台も大型のワゴンや小さめのバスが行き来しているのに
気が付いた。

 よく見ると、車体には、
【ショートステイ おげんきくらぶ】とか、
【介護施設 よつば園】とか、書いてある。

 わが家の2軒隣にも、3軒隣にも、
別の施設のバスが、ほぼ同じ時刻にやってくるではないか。

 あ、そう言えば、朝もそうだ。

 朝、8時から9時にかけて、やはり幼稚園バスを待っていると、
夕方と同じように、各幼稚園、各介護施設のバスが、
あっちこっちにお迎えにやってきているじゃないか!

 そうか。

 幼稚園児が朝晩バスで送迎されるのと同様に、
介護施設でも、朝晩、バスで送迎されているのだ。

 幼児が午前9時前後から夕方3時4時まで幼稚園に行っている間に、
親が勤めに出たり、買い物に行ったりできるように、
介助の必要なお年寄りが、
昼間、ショートステイとして施設に行っている間に、
家人は、仕事や外出ができる、というわけか。

 幼児と、介助の必要なお年寄りは、
家人の世話レベルとしては、ほぼ同程度、ということなのか。

 まあ、幼児の世話の方が、圧倒的に楽だと思うが、
施設に預ける時間帯や、
送迎システム(運転手+先生=運転手+介助者)など、
幼稚園の送迎と酷似しているように思う。

 生理用品と紙おむつのノウハウが歩み寄って、
お互い、機能がアップしているように、
幼稚園とショートステイのノウハウも、
互いに交換し合って、似通ってきたのか?

 まあ、制度のできた順からして、
介護施設の方が、幼稚園のノウハウに寄せてきた感はあるが。

 ともかく、今日も、送迎バスが、わが家の前の狭い道の前で、
猛烈にラッシュ状態になっている。

 大学生の長男が幼稚園の頃は、大型の送迎バスだったのが、
子供がどんどん減ってゆき、今では、送迎ワゴンになっている中で、
介護施設の大型送迎バスは、ワゴンと同じくらい多い。
 全体の数も、下手したら、幼稚園バスよりも多いくらいだ。

 ああ、こんなにも目に見えて子供の数が減り、
それと反比例するようにお年寄り人口が増えてゆき、
毎日、幼稚園に行く感じで大勢が「通園」しているのか。

 こうなると、週3回くらい通う、就園前の幼児クラブのように、
ショートステイを「卒業」した、重い介護の必要なお年寄りを時々預かる
「後期高齢者園」みたいな「通園専門施設」もできているだろう。

 幼児クラブでは、まだまだ赤ちゃんでバブバブしている2〜3歳の子が、
「ママ〜!」「ママ〜!」と号泣しながら、先生たちにだっこされているけれど、
「後期高齢者園」では、ボケ気味のお年寄りが、
徘徊したり、わあわあ叫んだりするのを、担当の介護士さんが、
ひとりにひとりついて、「よしよし」したりするのかもしれない。

 となると・・・・・・

 産婦人科で、生まれたばかりの赤ん坊が
ガラス越しの新生児室に一列に並べられているように、
もうすぐ亡くなるお年寄りたちも、
ガラス越しのICUで並べられて展示(?)される日が来るのだろうか?

 怖い〜〜〜〜〜!
 イヤだ〜〜〜〜!


 (了)

(しその草いきれ)2011.10.18.あかじそ作