「 男と女(ミニ) 」


 小1の長女と中1の四男が、
夏休みの間、連日連夜、喧嘩ばかりしている。

 喧嘩・・・・・というか、
長女が、四男に対して、
いつもいつもキレているのだ。

 「うるさいよ! 近所迷惑!」
と、私が何度注意しても、
長女のヒステリックな金切声や泣き叫ぶ声が響き続けている。

 その「小さい女」(長女)の悲鳴の隙間隙間に、
「小さい男」(四男)が、へらへら笑いながら
「はいはい、わかりました、わかりました〜」
と、馬鹿にしたように話す声が聞こえてくる。

 何を話しているのか、
ちょっと耳をそばだててみると、
こんなことを話しているのだった。


 「あんたは、わたしのことを、なにもわかっていない!」
 「わかってるわかってる」
 「わかってない! わたしのきもちがわからないの?!」
 「だから、さっきからゴメンって言ってるだろ?」
 「ちがうの! あやまってほしいんじゃないの! きもちをわかってほしいの!」
 「だから、わかってるわかってる!」
 「ほら、いつもあんたは、わたしをバカにしてるの! おんなだと思って!」
 「バカにしてないって。可愛い妹よ〜ん」
 「さいあく! もう、あんたっておとこは、さいあくなのよ!」


 ・・・・・・何これ?

 痴話喧嘩?

 これ兄妹喧嘩だよねえ?!


 そして、喧嘩は、必ず、このように終結する。


 「じゃあ、結局、どうしたいの? 僕がどうすれば満足なの? え?!」
 「だ〜か〜ら〜! も〜〜〜〜〜う! キ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」

 身長120センチの長女が、身長145センチの四男に飛びかかり、
床に組み伏せて、胸倉を何度も引いたり押したりしている。

 「いってわからないから、ブツ! ばかばかばかばか!!」
 「ああ、殴ればいいさ! 殴って気が済むのなら、好きなだけ僕を殴れよ!」


 台所の床で大の字で寝ころび、
小さい女に殴られるがままになっている小さい男。

 泣きながら隣の部屋に駆けて行く女(ミニ)を、
遠い目で見やりながら、男(ミニ)は、小さくつぶやく。

 「可愛い女だ」


 な〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んだ、そりゃ!

 こんな「きょうだいげんか」、
お母さん、嫌だ〜〜〜〜〜あ!!!


   (了)



(子だくさん)2012.8.21.あかじそ作