「暑苦しいのよ熱いのよ イン・ワンボックスカー」
―――あかじそファミリー海に行く―――
<3日目・「さ、けえるぞ」> 3日目は、とにかく暑くて動かない車の中で、 みんなして、じりじりじりじりしていた。 10年前に中古で買った、このオンボロワンボックスカーは、 走っていれば冷房も効くが、停まってしまうと、カチッ、カチッ、と、 いや〜な音を立てる。 この前、冷房をカチカチ言わせながら渋滞に巻き込まれていたら、 突然、エンジンが止まってしまったらしい。 今日も、かなりの渋滞で、車は全然動かない。 窓を開けたり、だましだましエアコンをつけてみたりしたが、 とにかく、暑くて暑くて、たまったものではない。 子供達は暑い暑いと荒れ狂うし、アカンボは、超音波を発して怒っているし、 大人たちもイライライライラしている。 「ったく、前の車、何グズグズしやがってんだ! おいっ!」 「黄色で停まるなってのよ、ねえっ!!」 前の座席の老夫婦は、2人して濃いサングラスを掛けて、 時間が経つにつれ、どんどんガラが悪くなってくる。 クラクションをプップップップッ鳴らして、車間距離3ミリだ。 「よしなよ、そんなことしてたら、いつか刺されるよ!」 私だって暑いのだ。でも、この人たち、熱過ぎる! そして―――荷物と荷物の隙間に座って数時間が過ぎ た。 子供達は疲れ果てて全員眠り込み、 ばばじそは、たばこを吸い尽くし、じじじそは、半開きの目で、無表情に運転している。 (しかし・・・・・・まあ、良かったんではないだろうか・・・・・・) この旅は、 子供達には夏の思い出を、 じじじそには、激しい緊張と弛緩のメリハリを、 ばばじそには、腰痛を、 私には、人生観の変更をもたらした。 (まあ、これはこれで、良かったんではないか?) 無事、じじばばの家に到着し、私は、子供達を連れて家に帰った。 「もう、疲れちゃったから、夕飯は、インスタント・ラーメンにすっか?」 みんな、わーいわーい、と言った。 何よりインスタント・ラーメンが好きな子たちだ。 大助かりだ。 それぞれ勝手に、ハムだの味付け海苔だのを、顔の模様にトッピングして、 わいわい楽しく食べている。 その時だ! じじばばからの電話が入ったのは。 「あさって、墓参り行くよ!」 墓は、じじじその実家にあり、車で往復6時間はかか る。 「朝9時半に出発だ! 遅れるなよっ!」 終わったと思ったら、また、始まった。 今度は、一体、どんな「思い出」ができるっていうの? 軽いめまいを起こしながら、私は、自分のラーメンのどんぶりに、味付け海苔で、 (T_T) と、描いた。 (つづく) |
「墓参り ’01」 |