インパク会場

pm4:45
一行のムードが、どんより と濁っている。


三男が、また興奮状態になり、ホームで駆け回って危なかったので、
<ばばじそ>がぶん殴ったらしい。
「ヒーーーーーーーーー!!」
と、全身を突っ張って、活魚の様に、ぴちぴち暴れ、
口から泡を吐き、涙と鼻水でずだずだになっている。

<ばばじそ>の教育方針は、一言。
「支配!」である。
意にそぐわない者には、問答無用で、怒りの鉄拳が振り下ろされる。

「勉強しろ」とか、「早く帰れ」とか、「母親を大切にしてよ!」などとは、
一切言わない。
自分も、元不良だからだ。
そして、チャキチャキの江戸っ子だから、筋の通らない事は、
「でえキレエ」なのである。

一方、三男は、ドイツ製の時計みたいに、きっちりした幼児である。
生まれた時から、きっちり筋が通っている。
が、いかんせん、精密機器ゆえに、ちょっとした事で、すぐ誤作動してしまう。

ところが、女親分<ばばじそ>は、そんな、ちまちましたこたぁ、
知ったこっちゃない。
ガキが危ない事してたらゴツ〜ン、なのである。
精密機器が、誤作動しているのを、ゴツ〜ン、としたら、どうなるか・・・?

叩くとまた動き出す、古いテレビみたいな、
単純構造体の<じじじそ>や、次男なら、これで納まるが、
三男には、通用しない。

「ヒーーーーーーーーーーーーーーー!!」
(ぴちぴちぴちぴちぴちぴち)なのである。
あと4分で発車なのに、このままで新幹線に乗るのはキツイ。
しかし、もう、こうなったら、素人には手に追えない。
子育て職人あかじそ、一行の注目のモト、じり、じり、と、三男に、ニジリ寄る。
そして、三男を抱きしめ、耳元で、つぶやいた。

「バーバがゴツンしなかったら、三男、電車に轢かれてたんだって。
危なかったね〜。轢かれなくて、良かったね〜。
お母さん、大好きな三男が無事で嬉しいよ〜っ!! 」

ぴちぴちと暴れていたイクミの、体の力が抜けて来た。
もう一息だ。

「バーバも、ちょっとやりすぎだよね。
お母さん、あとでバーバに言っておいてあげるね。
大事な三男にやりすぎないで! って。」

三男が小さくうなづいた。

「気分転換に、後で、美味しい物でも食べようか!
おりこうにできる?」
「うん」

よっしゃ!