登場人物    夫  「北の国から」の田中邦衛のような人
           妻             久本雅美のような人

エピソード   「お騒がせしました」の巻


<妻、病院から穏やかな表情で出てくる。>

<家に到着、玄関のかぎを開けて入る。>

妻 「ただいまぁ」
夫 「どうだった」
妻 「ただの下痢でしょう、だって。消化不良起こして、油ものがそのまま出てきた んじゃないかって」
夫 「ああそう、よかったじゃん」
妻 「お騒がせしました」
夫 「いいえ」
妻 「あんなに大騒ぎしたのに、やっぱ人間って、そう簡単には死なないね」
夫 「まあねえ」

<トイレから子供の声>
子供「おかーたーん、うんちでたー、ふいてー」
妻 「はいはい」
<妻、にこにこしながらトイレに入っていく>
<直後、妻、血相変えて飛び出してくる。>
妻 「大変大変。うんちが妙に赤いのよ。血かなぁ、なんだろなんだろ、やばいよね え」
夫 「おけつが切れたんだろ。だいじょぶ、だいじょぶ」
妻 「だって、おしり切れてなかったもん。やばいやばい。念のため病院つれてく よ」
夫 「だあいじょぶだって」
妻 「どうして見もしないで大丈夫ってわかるのよ。このままほっといてあたしの子 になにかあったらどうすんのよ」
夫 「俺の子でもあるけど」
妻 「何いってんのよ、ほとんど家にいないくせに」
夫 「仕事でしょうに」
妻 「作業能率が悪いから帰るのが遅くなるだけでしょ。あたしだったら短時間に濃 厚な仕事して、もっと早く帰れる自信るわよ」
夫 「はいはい」
妻 「じゃ、行ってくるから」
夫 「ちょっと待って。俺も最近よく便に血が混じるんだけど、先生に聞いてきてく んない」
妻 「ああ、それはぢだよ、ぢ。ほっといてよし」
夫 「何で俺だけそうなんの」
妻 「だって他人だもん」
夫 「ひでー」
妻 「事実を述べたのみじゃ」
夫 「はー」
妻 「だいたいねえ、他人のうんちの匂いって耐えらんないのよ。あんたのなんか、 ニガ酸っぱくて、おえっ、てなっちゃうのよね」
夫 「人のこと言えないだろ」
妻 「あたしや子供はいいのよ。臭ければ臭いほど、うっとりしちゃう」
夫 「よくいうよ」
妻 「だって、肉親だもん。肉親の匂いは香水で、他人の匂いは毒ガスだよ」
夫 「わからなくもないけど、はっきり言いすぎ」
妻 「あんたは、はっきり言わな過ぎ。じゃあね、行ってきます。あとよろしく」
夫 「ふー」


<妻、小脇に子供を抱えて、玄関を出て行く>
<夫、やれやれ、という顔からしめしめ、という顔になる。>
<夫、その場でゴローン、と横になり、幸せそうにふあーあー、と伸びをする。>

夫「やっと静かな休日。はー、素敵」



うるさすぎるよね、妻。逃げの一手だな、夫。
いつまで続く、大便騒動。 まだまだ続く、夫婦百態、。