さよならインパク記念レポート


 総務省大臣官房の、新千年紀記念行事推進室の主催する、
インパク(インターネット博覧会)が、2001年12月31日に幕を閉じた。
 その閉幕日、「インパク感謝の夕べ」というイベントが行われ、
インパクにホームページを出展している設営者たちが、政府に招かれた。
 私も、子供4人を実家に押し付け、正装した夫を従えて出席した。
 子供の風邪をうつされて、胃の調子が良くなかったが、
パーティーに着ていく洋服など、まったく持っていなかったため、
着物で行くことにした。
 私は、着物を山ほど持っている。
 15年前に着物屋で働いていた母が、
もうちょっとで届く「売り上げノルマ」を達成するために、
毎月のように、私に着物を作っていたのだ。
 だから、私の知らない着物が、母のタンスにたんまり入っている。

「まだあの緑の更紗のも、ピンクの小紋も着てないでしょ」
 母は、タンスの引き出しを次々開けては、
まだしつけ糸も切っていない着物を出していった。

「青の訪問着に、このプラチナの銀の帯合わせてみっか!」

 母は、すばやくコーディネートすると、150センチそこそこの体で、
伸び上がったりしゃがみこんだり、前に回ったり、
後ろでひもをぐいぐい引っ張ったりして、
あっという間に、ガタイのいい私の着付けを終えた。

 私が、もたもたとバッグに財布などを移し変えていると、
「これ、食べていきな!」
と、母は、バターロールにレタスとハムとマヨネーズを挟んだものを
強引に渡してきた。
 
 胃が痛くなってきた。
食べ過ぎなのだ。
風邪で胃腸がへろへろな上に、食べすぎだ。
 でも、渡されたので、食べてしまった。

 さあ、出発だ。

 会場に入ると、11/30のインパク・パーティーで友達になった人たちが
あちこちにいた。
よし、ともかく、今回の目的は「政府のメシをゴチになる」ということなのだ。
 食うだけ食ったら、口紅を直して、挨拶しよう。
まずは、「政府のメシ」が肝心なのだ!

 私は、食った。
食って、食って、食いまくった。

 まずは、サンドイッチ。(ん? 揚げてあるぞ、これ)
次に、ピザ。(わっ、ちべたい、冷えてる、これ)
オードブル。チョコケーキ。イチゴのケーキ。

 うぐ!
口の中、油っこい!
喉詰まってきた!
そういえば、何時間も水分摂ってない!

 私は、ドリンクコーナーに行って、冷え冷えのビールをもらい、
一気に飲み干した。
うまいっ!
と、思った次の瞬間、胃がごぼごぼごぼっ、と、大きな音を立てた。

 ちょっと気持ち悪くなってきたので、部屋の隅のイスに座っていると、
何だか手持ち無沙汰になった。
「コーヒーもらってこよっ!」

 ドリンクコーナーに行くと、美味しそうなアイスクリームが何皿も出してあった。
思わず、一皿手にとる。
そして、食べる。

うまいっ!

 でも、胃が、物凄く冷えた。
痛い。

 そのうち、前回知り合いになった人に声を掛けられ、しゃべっているうちに
自然とコーヒーを飲んでいた。
いつの間にか、飲んでいた。

うっ! 

 立っているのがつらくなってきた。
気持ち悪い。
いやなあくびが、何度も何度も出る。

 頭を上げているのがつらくなってきた。
横になりたい。頭の血が、どんどん下がっていく。
脂汗が噴き出してくる。

 こんなときに、夫は、と言うと、デジカメを持って、
会場をうろうろうろうろして、行方不明だ。
目の前が真っ暗になる。着物姿でうずくまっていると、
こっちを見ている夫を発見した。

(コッチ来い! おらっ!)
私は、激しく手招きすると、夫を呼び寄せた。

「ウーロン茶、もらってきて!」
 夫が持ってきたお茶をひとくち、口に入れると、ますます胃がねじれた。

「ダメだ! 横になりたい!」
 私は、走ってトイレに駆け込んだ。
トイレに入ったら、嵐のような下痢だった。
 
とりあえず、出るものが出たら落ち着いたので、トイレから出ると、
イベントは終わっていた。
喉がカラカラだった。
このままだったら、ドロドロ血だ。
水分を補給しなくては。

 私は、そこにあった冷水機で、ずりりりりりっ、と、水を吸い込むと、
出口に急いだ。
そのうち、また気持ち悪くなってきた。

うっ。
吐きそうだ!

 急いで駅のトイレに駆け込む。トイレの個室に入って、
出すものを出してから、着物を直し、
そのまま床に尻をついて仰向けになった。
 
ダミだあ!
ダミダミッ!

目の前を、チラチラチラチラと火花が飛んでいる。
しかし、少しづつ、気分がおさまってきた。

 何とか気持ち悪さも峠を越えたので、トイレを出ると、突然後ろから

「あかじそさ〜ん」

と、声をかけられた。

「あっ、お疲れ様でした〜」

と、応えたものの、気持ち悪くて目の前ぐにゃぐにゃだったので、
相手の顔が判別できなかった。
(ごめんなさい・・・・・・)

 家に着いた。
帰り際、受付から受取った筒を開けてみた。
中から、賞状が出てきた。
感謝状だった。
政府からの、感謝状だった。
「インパクを、よくがんばりました」
と、あかじそ姉妹社あてだった。

 嗚呼、hana。
「感謝の夕べ」には、欠席したけど、感謝だよ、hana。
「今ごろ、ダンナの両親と一緒に、年越ししているのかな?」
感謝されたよ、私たち。
そして、私は、hanaに感謝だ。

頑張ったね、あかじそ姉妹社。
これからも、頑張ろう、あかじそ姉妹社。
そして、楽しもう、あかじそ姉妹社。

 面白くて、可笑しくて、楽しくて、哀しくて、嬉しくて、切なくて、
いろんないろんなことを乗り越えて、いろんないろんな人たちと一緒に、
生きていくあかじそ姉妹社!

 今日、私は政府にゴチになりましたが、その場で出してきてしまいました。
返却してきてしまいました。

ありがとう、政府!
また、呼んでね、政府!
政府とはじめて遊んだけど、「堺屋太一」は、面白いひとだったなあ。
ゲボゲボしながら聞いていたけど、あの人だけは、カンペなしで、
簡素なことばで未来を分かりやすく語ってた。
荒俣宏氏も、やっぱりさくさくとナイスな人だった。

2002年、あかじそ姉妹社、再出発だ!
去年のものは、みんな出た!
新しい気持ちで前進だ!

 うい〜〜〜っす!
 (げぼ)


           (おわり)