SUNNYさん 22000キリ番特典
テーマ「フリーマーケット」
「フリーマーケット」

 この間、子供たちと近所のフリーマーケットに行ったら、
道端にずらずら並んだ「店」の中に、ひときわ目を引くお婆ちゃんがいた。
 ひと言で言うと、「古い!」。
 売ってる人間も古ければ、売ってる物も異常に古い。
 古いビニールバッグに、古い鏡、古い櫛、古い磁石、
古いチョッキ、古い手袋、古い木箱、古い風呂敷、
古いコップ、古いビン、古い時計、古いひも・・・・・・
などなど、こまごまとした、どれも恐ろしく古く、
こきたないものばかりが並んでいた。

 ―――こんなもの、誰が買うの?

 と、しかめっ面で通り過ぎると、私のすぐ後ろで

「これじゃ、フリーマーケットじゃなくて、ふりぃ(古い)マーケットじゃねえか」
という中学生たちの声が聞こえた。

 ―――ひどい。だが、うまいことを言う。

 私は、通りの突き当たりまで「店」を見て回り、
折り返してさっきのお婆ちゃんのところへ来て、びっくりした。

 完売していた。

 噂によると、さっきの売り物たちは、
どれもプレミアものの骨董ばかりだと言う。
 出すところに出せばウン百万というものもあったとか。
 それをあのお婆ちゃんは、
全部100円前後で売っ払ってしまったのだ。

 そして、驚くのはこれからで、そのお婆ちゃんは
最近死んだ夫の思い出の品を片っ端から処分して、
もうすぐ新しい彼氏と一緒になるらしい。
 
 しっくいの渋い「純和風の家」を全面改築し、
壁紙などは、水色の空に白い雲がプカプカ
浮いているものに張り替えた、とも聞いた。

 ―――これぞ、「フリーマーケット」だ。

 ずっと金持ちだったが、夫への長い服従生活で、
あのお婆ちゃんは不自由だったのだろう。
 「フリー」になった悦びに打ち震えながら、
道端でひとり古ゴザに座り、明日への希望に
胸膨らませていたお婆ちゃん。
 一見ボロイ売り物たちも、
ちゃんと物を分かっている人たちが買って行ってくれた。

 そういえば、あの古いお婆ちゃんは、古いが綺麗なひとだった。
 素人が見ても、ただの古いひとだが、
見る人が見れば、骨董ものの「古いいい女」だったのだ。


                                (了)

(こんなヤツがいた) 2002.10.28 作 あかじそ