「 脱喪中 」
 先週までトリプル喪中だったが、
今やっとふたつ喪があけてシングル喪中となった。

 松の内から父の兄が亡くなり、
その葬儀の日に母方の祖母が亡くなった。
 気持ちが沈みがちになる中、
入院中の父方の祖母の見舞いに行ったが、
薬のせいか、昏々と眠りっぱなしで話もできなかった。
 その祖母も、そのまま眠りの延長で亡くなってしまった。

 ひとつの死でも十分悲しみを引っ張れるのに、
三つも重なった日には、もうトホホだった。

 おまけに五月に夫の母が脳出血で倒れ、
一命を取り留めたものの、右の手足と言語に障害が残り、
今は自宅療養をしているが、鬱々と引きこもってしまっている。
 そして、この正月、夫の故郷に帰省して家に帰ってきた途端、
夫の父が腸閉塞で倒れたという知らせを受ける。
 検査の結果、直腸がんで、先日手術を受けたが、
何せ腸が弱っていて、うまく傷がくっつくかわからない。
 うまくなければ人口肛門を付けることになるという。

 死死死、で、重病重病。

 あーあ、重い。重いわぁ、ここんとこ。

 丈夫な実母も血圧が高いことに異常に神経質になってしまって
一切外出しなくなってしまったし、
目と鼻の先に住んでいるというのに、
この一年、うちの子たちとほんの数回しか会ってくれなかった。

 生きていれば、こういう年回りもあるのだろう、
とは思うけれど、こいつは効いた。身に沁みた。

 こうやって普通に起き上がって、
飯炊きしたり洗濯もの干ししたり、
自分の力でトイレや風呂に行けるのも、
実は物凄く素晴らしいことなんだと、マジで実感できた。

 嫌なことがあっても、
ひどい状況に置かれても、
気の持ちようひとつで何とかできる。

 おっと、「どんなことも笑いに変えろ」が私の心情のはずだ。
 死や病気や、寝たきりやボケ老人や
どうしようもない家族の性質や自分の性質だって、
笑いに換えて馬鹿らしくしてしまい、
ゲラゲラ笑いながら死んじまうのが私の目標だろうが。

 なに重くなってんだ、私よ。
 そういえば、最近は、エクセルの資格試験の勉強で、
ろくにオモテにも出ていないではないか。
 またいつもの季節うつ病か?

  蛍光灯を何分も直視して元気だせい。
 太陽にさらされて湿った気持ちを乾燥させい。

 いつもいつも、うっすら喪中気分だが、
もうそろそろ脱喪中せいっちゅーの!

 頭の中にセルがぴっちし並んでいて、
表計算がぐるんぐるんしているけれど、
近々夫のパソコンスクールで助手デビューするんだい。
 ワークマン行って、勝手に女子事務員風の制服買って、
ひそかに「コスプレ」するんだい。
 たまに女王様の格好でもして、ムチ振るいながら

「【セルの書式設定】をクリックおし! この豚野郎!」

とかやっちゃうぞ、こら!
 (やるな、こらっ!)



                (了)

   (しその草いきれ) 2004.1.20. あかじそ作