先日、四男の入園式で、とても悲しい思いをしてしまった。
園長が、父兄に向けて、
園生活の諸説明をしていた中で、
「原則として教師が薬を子供に飲ませることはしていません」
と言い、その理由として、ある事例を取り上げたのだ。
とある、ごく普通の保育園でのできごとだった。
朝、父親が園児を連れて登園してきた。
「風邪気味なので、食事の後にこの薬を飲ませてください」
と言って園児の担当の保育士に一瓶の薬を託した。
昼食後、その保育士は、
父親からの依頼通り、
赤ん坊の頃からめんどうを見てきたその子に
その薬を飲ませた。
すると、その子は突然容態が変わった。
血を吐いたのか、泡を吹いたのか、
あまりに生々しい状態だったためか、
園長はその辺の描写は避けていたが、
結局その子は病院に運ばれてしまった。
園の方から自宅に電話をすると、
その父親は亡くなっていた。
自殺だった。
無理心中だったのだ。
結局、その保育士は、
赤ん坊の頃から我が子のように可愛がっていた子を、
知らなかったとはいえ、毒殺してしまった。
保育士がその後、
どうなったかは触れられなかった。
子供が好きで、保育士を目指し、
一生懸命勉強して国家資格を取り、
晴れて就いた保育の仕事だっただろうに、
まさか自分の手で可愛がっていた子供を殺してしまうとは。
私は、その話を聞いて、
ショックで打ちのめされてしまった。
入園式と、その次の日、
私は怒りと悲しみと切なさで悶々としていた。
しかし、三日目の今日、思いなおしたのだ。
死んでしまった子供や、
重い十字架を背負ってしまった保育士は、
もう元の状態には戻れない。
その悲劇は確かに事実だった。
愛する父親に毒を盛られた。
信頼する保育士にそれを飲まされた。
そんなことを全然知らないまま、
ただ、促されるままに薬を飲んで、
突然この世のものとは思えぬ苦しみに襲われ、
アガガ、グググ、と喉を掻き毟って喘ぎ、のた打ち回り、
死んでいってしまった子。
そのいたいけな子の死を、「犬死に」にさせたくない。
死んでしまったその子に対して、
また、
生きたまま死ぬほど苦しんでいるだろう保育士に、
私は「毒消し」を飲ませたい。
二度とこういう狂った事件が起きないように、
世の中に対して大声で言いたい。
死にたい大人はひとりで死ね!
子供を殺すな!
子供を殺すな!
子供を殺すな!
自分が作った子だから、亡くすのも自由なのか?
それは大変な思い違いだ。
神やら仏やらから言い付かって、
お前みたいな馬鹿野郎から生まれてくれた、
そのケナゲな命に対して、
なぜ手をかける権利があるというのだ?
もういっときも生きていられないほど
苦しい思いをしているかもしれないけれど、
そんなときは屋上や農薬売り場に行く前に、
医者へ行け!
子供を殺す代わりに、
その狂った殺意を殺してしまえ!
たとえどんな理由があっても、
子供と一緒にあの世に行くことはできないのだ!
なぜなら、殺した親は地獄へ行き、
殺された子供は天国へ行くからだ。
しかもその子は、雲の上で、
会えるはずもない親を泣きながら永遠に探すだろう。
世の中に充満する毒。
その毒の霧を払ってやりたい。
毒を以って毒を制したい。
毒に対して毒を吐きたい。
毒を消して、
みんなで精一杯毒を消しまくって、
ちゃんときれいな空気を呼吸したいよ。
親に殺された子供たちも、
自らを殺した大人たちも、
生まれたときはアカンボだったのでしょう?
その誕生を誰かが喜んだのでしょう?
死なないでください。
勝手に死なないでください。
放っておいてもみんな死にますから、
勝手に死んではいけません。
あなたの命は、
何百年も何千年も前から続いてきた命の鎖です。
何百人何千人何万人の命のリレーです。
自分勝手に止めてはいけません。
もし、これを読んでいる人の中で、
ちょっと死にたくなっている人がいたら、
死なないでください。
先ほども言いましたが、
どっちにしろあなたはいずれ死にますから。
何も物騒なことをしなくても、
普通に死んじゃいますから。
あなたの勝手な死は、あなたの最大の汚点となります。
あなたの家族の、最大の苦悩になります。
あなたが思っているより、何十倍も何百倍も、
あなたの人生を、あなたの大切な人たちの人生を、
クソまみれにします。
苦しむあなたに、あえて苦言を言います。
死ぬな!
勝手に死なない!
ましてや子供を殺すなんて絶対にしない!
約束をしやがれっ!!
弱虫めっ!
何度も何度も何度も何度も、
何度も何度も何度も何度も、
何度も何度も何度も何度も、
何度も死にたくなっても死ななかった
この大弱虫の私に約束しやがれっ!
(了)
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