いぷーさん 31800キリ番特典
お題「息抜き」
「 不立派タイム 」

 日本の女子は概して真面目で勤勉、
きちっとしていることが多い。 
 たいていの女子は、小学生の時、掃除の時間に
「男子はサボってばかりなのでちゃんとしてください!」
とキレたことがあると思う。
 小学校高学年では、
【チャランポラン男子対キチキチ女子】
という戦いの構図ができていたはずだ。

 かく言う私も、女子全体から見れば「オオボケ」タイプなのだが、
やっぱり気がつくと真面目で規範的な暮らしをしようと心がけている。

 で、真面目真面目に生きているうちに、
もう、どうしようもなくストレスがたまってしまう。
 息抜きをしないとイライラしてしまい、
夫や子供に八つ当たりしてしまうから、
「さあさあ、気分転換をしなくては、息抜きしなくては」
と思いつめ、返ってそのプレッシャーがストレスになっている。

 なぜ「息抜きをしなくては」と思うと、
自分は苦しんでしまうのか、と考えてみる。

 まず、上手に息抜きしている人たちの例を思い出してみた。

 忙しい仕事の合間にテニス!
家族がみんな寝静まっている早朝にジョギング!
休み毎に家族でアウトドア!
ママさんバレー!
ママさんコーラス!
仕事が息抜き!
子供の寝顔を見ると癒される!

 ああ、どれもこれも馬鹿みたいに立派すぎるっ!!!

 立派すぎて私にとっては全然息が抜けないものばかりだ。

私は、自慢じゃないが子供の頃からテレビっ子で、
放っておけば朝から晩までテレビを見ている。
 ゲームにハマれば、朝から晩までゲームをしている。
 気に入ったCDは、何百回でも繰り返し聞きまくり、
DIYや手芸の雑誌は、ボロボロになるまで眺めている。
 部屋の中で、ひとりで紙に何かを書いていると
何もかも忘れて夢中になってしまう。

 ひとりで、何をしているというわけではない、という時間が
一番気楽だと思っている。
 だから、恐らく私にとって「息抜き」とは、
「趣味」とか「レジャー」とか「スポーツ」とか、
単語ひとつで表せる立派なことではないのだと思う。

 全然立派ではない時間が、私の息抜きなのだ。

 今まで、生きている時間すべてを、
ちゃんと生きなければと思っていた。
 無意識のうちに、
「誰にも叱られないようなこと」「立派なこと」を、
ひっきりなしにしなくてはならないと思っていた。

 それは親になってから特にだ。
 ちゃんとしなくては、というプレッシャーが
常に自分につきまとっていたような気がする。

 朝、ご飯を作って、子供に食べさせて、
ちゃんと時間通りに送り出し、
急いで家事を済ませ、仕事に出かけ、
きちっと仕事をして、子供が帰ってきたら宿題を見て、
忘れ物がないようにチェックしたり、連絡帳に判子を押したり、
ご飯を作って食べさせて、風呂に入れて寝かしつけて、
疲れ果てて帰ってくる夫とは、
ろくに口も利かずに寝てしまう毎日。
 布団に入ったら入ったで、
乳児に乳をやったり病気の子の看病をしたりで、
一晩きっちり横になって寝なかったりしている。

 24時間、頑張り通し。
 24時間、ご立派タイム。

 で、時々ブチッとキレて、病的に落ち込んだり無気力になったりする。

 息抜き(不立派タイム)なしで生きていたから、
ずっとこの【定期的に心のブレーカーが落ちる】という状態から
抜け出せなかったのだ。

 私は、もう決めた。

 私は、【不立派タイム】で息抜きしよう、と。
 後ろめたさ無しでダラダラしようと。

 立派な妻や立派な母親は、夫や子供にとって息苦しいだけだ。
 家族も息苦しいし、私も息苦しい。
 馬鹿みたい。
 結局、全然立派じゃない。

 だから、これからは、不立派でいきます。
 完全天然オリジナルの私でいきます。

 これからの人生、全部息抜きっ放しでGOGOです。


                    (了)

   (しその草いきれ) 2004.5.4. あかじそ作