「 必要な刺激 」
 生きていると時々、
物凄くひとつのことに執着してしまうことがある。

 近所との確執、
子供の友達の親とのトラブル、
嫁姑の因縁、
夫の許しがたい行為、
親に対する根深い恨み、
勤め先での煮詰まった人間関係・・・・・・。

 そのことばかりを思いつめてしまうときは必ず、
そのことだけで頭がいっぱいになってしまっている時なのだ。
 他に新しい刺激がないから、頭が暇で暇で、
そのことばかりに執着してしまう。

 憂鬱だったり、執着のネバネバに
心を乗っ取られてしまったら、
それは、新しい刺激を受けるに限る。

 知らない人の中に入って、新しいことを始める、とか、
行く先も決めずに出かけていくとか、
大々的な模様替えをするとか、
とにかく、頭にベッタリと巣食ったネバネバ野郎を
新しい未知の刺激で追い出してやればいいのだ。

 「そんなの、余計に疲れるんじゃないの?」
と思うかも知れないが、
それがいいのだ。
 新しい刺激の新しい疲れ、新しいストレスが、
ネバネバを無理矢理剥がして、頭の空気を入れ替えてくれる。

 だから、イライラしたり、
ひとつの悩みに取り憑かれてしまったときは、
外出なんて気分ではないかもしれないが、
あえて外に出た方がいいと思う。

 小さな刺激をたくさん浴びまくって、
ビタビタと心を湿らせる悪いネバネバを剥がそう。
 カビ取りみたいなもんだ。

 カビ取り剤は「ゲゲッ」となるほど刺激的だが、
ジクジクと根の生えた、陰気なカビをやっつけてくれる。
 科学薬品のカビ取り剤がイヤなら、
自然素材のカビ取り剤だってある。

 痛い刺激がイヤだったら、
自然素材の爽やかな刺激を受けに外に出ればいい。
 外で嫌な事があっても、
それはまた必要な新しい刺激であって、
それら嫌な刺激が数珠つなぎで順番に押して行って、
前の刺激をどこかへ押しやってくれるのだ。

 そうやって、ネバついたものを掃除しながら、
人は心の健康を保つのだと思う。

 「引きこもり」の人は、思い切って、
「出ずっぱり」に転向してみてはどうだろう。
 一回家を出たら鉄砲玉みたいに行ったきり、
みたいなノリを試してみたらどうだろう。

 どうせクサクサしているのなら、
外でいろいろ刺激を受けながら、
心の新陳代謝を活発にして、ハジけた方が楽しそうでしょう?

かく言う私も
時々ネバネバ野郎に心を乗っ取られてしまうクチだから、
気をつけようと思う。

 刺激をシャワーのように浴びまくって、
キレイな心で今を、
今現在を、
そして今の今の今を、
大事に生きていきたいと思う。


           (了)     チクチクする刺激

   (話の駄菓子屋) 2004.5.10 あかじそ作