「 グッチョイス 」

 生まれる直前、
私たちは、神様の前で
3つ注文することができる。
 何が欲しいのか?

 親 子供 配偶者 
 家 友達 仕事
 地位 名誉 健康
 芸術 体力 美貌
 財産 技能 知恵
 エトセトラ、エトセトラ・・・・・・

 契約書にサササと3つ丸を付けて、
私たちは生まれる。

 そして、その後、
私たちは、もうひとつ注文する。
 荷物を何にするか?
 それは、欲しいものと抱き合わせで
必ず持っていかなければならないのだ。

 病気 業 不運
 孤独 悲観 貧乏
 エトセトラ、エトセトラ・・・・・・

 ある人は、
健康と仕事と偉業を注文し、
孤独を持って生まれた。
 確かに彼は、事業に成功し、
一生社会のために活躍し、
多くの人たちに慕われたが、
とうとう家族には恵まれなかった。

 またある人は、
芸術と技能と美貌を注文し、
貧乏を持って生まれた。
 彼女は世にも稀なる才能を発揮し、
後世に残る芸術作品を残した
美貌の鬼才だったが、
生前はその才能を認められることはなく、
貧しいまま亡くなった。

 私も生まれる前に
やはり彼ら同様、
平等にその選択を許可されただろう。

 しかし、何を注文したのか、
さっぱり覚えていない。
 おそらく、親と配偶者と子供を選んで、
悲観を持って生まれたのではないか。
 欲しいものを
確かに持っているにも関わらず、
毎日何となく悲しいのは、
そういうことなのかもしれない。

 でも、悲しいながらも
いつも思うのだ。

 私は、私の望んだものを持ち、
自分の選んだ荷物を背負っている。
 思うままに生きている。

 悲しいのは、私の趣味であって、
私は、やっぱり彼ら同様、
幸福な人間なのではないか?

 自分に持ちきれないほどのものは
持てないようにできているし、
無理にたくさんのものを望めば、
その分、背の荷は重くなり、
歩くことも立つこともきつくなる。

 選んだのは自分だ。
 「グッチョイス」と笑って生きていくために、
私は自分の「少しの持ち物」を
大切にして生きたいと思う。
 そしてまた、
自分の選んだ荷物をもまた愛して、
重さを楽しんで生きたいと思う。

 グッチョイス、私!
 オリジナルの人生を!


          (了)


(小さなお話) 2004.8.10. あかじそ作