あほや 「バカ夢」 自分の大笑いする声で目が覚めた。 物凄く面白い夢を見たのだ。 私は、横に寝ていた夫を無理矢理起こし、 今見た夢の説明をしようとするのだが、 思い出すだけでおかしくておかしくて 笑って説明できない。 ヒーヒーおなかを抱えて笑いつつ、 やっと息を整えて、私は夫に説明を始めた。 「あのね、私は北海道のシラカバの林に居てね、 気が付いたら、横に妖怪人間のベラがいるの! でさ! ああ〜っはははっ、 だはははははははは! でね、ベラがね、 ああ〜っははははっ! ベラがね、 『このシラカバでダジャレ大会をするよ!』 とか言っちゃって、 みんなでシラカバの木を囲んでダジャレ大会!! プ〜〜〜ッ!!!」 私は思い出しては、おかしくておかしくて 吹き出さずにはいられないのだが、 夫は憮然として無表情で聞いている。 「でね、 その中の一人が 『テメー、知ってるくせに、 シラカバっくれるんじゃない!』 とか言っちゃて! ブブブブブブブ〜〜〜!」 夫無反応。 「それ、おかしい?」 と、完全にムッとしている。 私は、口の中で 「シラカバッくれるんじゃあねえ・・・・・・」 とつぶやいてみたが、確かにまったく面白くない。 あれえっ? 何で夢の中ではお腹がよじれるほど おかしかったんだろう? でも私はめげずに話を続けた。 「でね、そしたら、ベラがね、 『おもしろくねえんだよ〜っ!』 って、そいつにムチ打つの! でね、でね、次のヤツが、 『自分も挑戦したいであります!』 って、なぜか戦時中の軍服で、ベラに最敬礼よ! うぷぷぷぷっ!」 「ふ〜ん」 夫は相変わらず憮然としている。 「でね、その軍人がいきなりベラの腰にしがみついて、 『シラカバないでくだせえ! オラをシラカバないでくだせえ! シラカバられて、もう、あちきは、シラシラでやんす〜!』 とか、わけわかんないこと言ってんの! だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っははははあっ!」 夫、あきれて薄ら笑いをしている。 「ねえ?おかしくない? おかしいよねえ!!」 私はそう言いつつも、 さっきほど笑えていない自分を感じていた。 「で、 『テメ〜、シラシラしてんじゃねえぞっ!』 って、軍人も容赦なくムチ打たれるの」 私は自分で説明しながら、 あまりにのつまらなさに驚いた。 しかし、一応最後まで説明しないと気持ち悪いので、 やっぱり薄ら笑いで話を続けた。 「で、 『やっぱり真打の私が出て行くしかないでしょう』 とか言って、 私がおもむろにシラカバの木の皮を筒状に剥いて、 『茶筒!』って言うの・・・・・・ ・・・・・・・・そしたら大うけで・・・・・・ ベラが笑いすぎて液体になって・・・・・・ ツボに入っちゃったんだけど・・・・・・ 何が面白いんだ?」 私は、呆然とした。 なんでこんなんで腹がよじれるほど笑ってたんだ? 目が点になっている私を見て、 今度は夫が吹き出した。 「ま、夢なんてそんなもんだよ」 それから十余年、 今朝、私はまたバカ夢を見た。 そしてまた、夫に報告してみた。 「夢の中で、大正テレビ寄席の牧信二が妊娠してね」 「なんやそれ?」 夫は、裏声で言った。 「相手は、ジャニーズジュニアの子でね、 もう公認なの!」 「何じゃそりゃ」 確かに。 全て間違ってる。 どこをどう公認したらいいのだ。 「年も年だし、第一、牧信二、男なのにね、 夢の中で私、夢だって全然気付かなかったの! 『牧信二、凄いじゃん!』 って、マジで驚愕してたんだよ」 「キョウガクすんな」 「で、すげえよ、すげえよ、っていう 自分の声で目が覚めたの・・・・・・」 「アホか!」 いっつもこんな夢ばかり見ているのだ。 もう38歳なのに、 お尻が3個に分かれちゃって困惑したり、 ハクション大魔王に弟子入りして 「ゲップちゃん」の仕事に真剣に従事したり、 そんなバカ夢ばかり見ている。 中でも一番イヤだったのは、あの夢だ。 朝起きたら顔が物凄く痒くて、 洗面所の鏡に顔を映して見てみたら、 顔全体にブルーベリーの実がびっしり生えていた。 「ギャ〜〜〜ッ!」 と叫んで、 慌ててその実をバリバリ剥がしていくと、 顔の表面全体が、 とうもろこしを食べた後の芯みたいになっていたこと。 「ギャア〜〜〜ッ!」 と叫んで飛び起きて、 思い出すたび何度も鳥肌を立てた。 もういやだあ! もうこんなバカ夢いやだあ! もっとキュンとなる夢や、 ワオ、となる夢を見たいのよ! 実生活がパッとしない分、 夢ぐらい素晴らしいものを見たっていいじゃない! バカはバカ夢しか見られないの?! はあ〜ん(;O;) (了) (あほや)2004.11.9.あかじそ作 |