ゆうさん 101500 キリ番特典/お題「30年ぶりの同窓会」 |
「 同窓会 」 |
父の会社の転勤が3年ごとにあったので、 私は、学校を卒業しても、すぐにその地を離れてしまい、 たとえ卒業生の名簿に載せられても、 すぐに行方知れずになってしまう人である。 それに、卒業した後、 友だちとマメに連絡をとるタイプでもないので、 きっと、私の知らないところで、 何度となく同窓会が開かれたことだろう。 会えば、きっと学生時代に返って、 懐かしく盛り上がれるのだろうが、 あいにく、小学校も中学校も、高校も、 私は、自分らしさを出せずに過ごしたので、 あまりいい思い出がないのだ。 割とのびのびやっていた大学の演劇部のOB会でさえ、 何となく出席するのが億劫だ。 古い友だちとは会いたいが、 「懐かしむ」ということがあまり好きでなく、 気持ちが常に将来にしか向いていないからだろうか。 そんなわけで、以前、 中学の同窓会に一回だけ出席しただけで それ以外、一度も同窓会に出たこともない。 その一度きりの同窓会だって、 元不良が好青年になっていて、 モテモテだった子が悲惨な変貌をしていたことが面白かった以外、 あまり楽しくなかったような気がする。 ただ、 「あかじそ、女らしくなったな!」 とは、散々言われた。 また、2次会3次会で盛り上がろうとしていたのに、 「もう10時だから帰るぞ!」 と、隣に住んでいた親友の彼氏に むりやりタクシーに詰め込まれて家に帰らされたのが、 非常に面白くなかった。 中学時代、色気もクソもなく、 まったく女扱いされなかった私が、 同窓会でやたらともてたので、 半分身内みたいな親友の彼氏が、 異常に心配してそういうことになったのだ。 親にも無断外泊を許されていた (完全に放任されていた)当時の私が、 なんでお前みたいな赤の他人に指図されなきゃならんのだ、 と、飲み足らなさも手伝って、 本当に不快で不快で、 何年経っても腹立ちが収まらなかった。 大学を出て、結婚してからも、 古い友達の誰にも告げずに引越しを繰り返したので、 私は、完全に行方知れずになり、 結果的に過去を捨てたようなものだ。 しかし、こちらが連絡を取らなくても、 やたらとマメな友人というのがたまにいるもので、 いまだに中学時代と高校時代の吹奏楽部の友人が 年賀状をくれ、こちらも返事を出している。 大学時代の演劇部の友人は、 「古い友人」という感覚はなく、 夫も演劇部の先輩で、同じ穴のムジナということで 夫が連絡を取り合っての付き合いはいまだに続いている。 そんなわけで、 小中高の同窓生の動向は、 まったくと言っていいほど知らないし、 私の動向も知られていないと思う。 しかし、中学時代の同級生の弟がプロ野球選手になり、 メジャーリーグで投手をやっていることなどを知ると、 なんとなく誇らしく思えたりする。 かつての友人が、 離婚してひとりで頑張って子供を育てていることや、 旧家に嫁いで、跡取りを産め産めと言われながら 女児ばかり3人産んで、肩身の狭い思いをしていることなど、 例のマメな友人から聞いたりすると、 たくさんの人の人生を垣間見る同窓会というものも、 文学的でまた面白いのかもなあ、とも思える。 しかしまた、反対に、 そのマメな友人が、私のかつての地元で、 私のいないところでたくさんの人に 「あかじそちゃん、5人も子供作って」 とか 「甲斐性のないダンナで苦労して」 とか、 余計なことを吹聴しているというのも事実で、 そういう情報を知らない間にみんなに握られながら 「あら、みなさましばらくですわ〜」 と、お洒落して出向くのもアホらしいなあ、ともまた思う。 そんなこんなで、あと数年で小学校卒業から30年が経つ。 地元ではいまだにクラスメイトはつるんでいるだろう。 きっと私の身元もマメな何者かによって知れてしまうだろう。 行くべきか、行かざるべきか? ああ、自分のことを知られたり見られたりするのは、億劫。 しかし、みんなの歩く人生ドラマも見てみたい。 悩むなあ。 (了) |
(しその草いきれ)2005.10.18.あかじそ作 |