「子供の作文」



 前々から、子供の作文ほど美しい文学はない、
と思ってはいたが、本当に学年末ごとにそれを痛感する。

 一年分の作文をファイルに入れて持ち帰ってくるのだが、
それらを読むのが面白くてしかたない。

 今回は、次男の作文で随分楽しませてもらった。

 さて、次男の作文本編を紹介する前に、
その周辺事情をまず述べておかなければなるまい。

 周辺事情とは、こうである。


 秋にアカンボが生まれたのだが、
その後のインフルエンザシーズンに、私が、子供たちに、
「学校のばい菌を赤ちゃんにもって来ないでよ!」
「手洗いうがいをいつもの10倍やってよ!」
(いつも手を濡らす程度しかやらないので、
10倍のつもりでやっと普通の手洗いうがいになる)
と、口うるさく言っていた。

 それを恐ろしく遵守した小5の次男。

 アカンボを「自分の命」だと言ってはばからないほどの、
妹への深い愛。
 で、そんな次男が風邪をひいた。
 風邪をひいているのに、アカンボを抱っこしたがるので、
 「マスクしてよ〜」
と、私が言うと、
これまた激しくうなづいて、マスク装着を激しく遵守した。

 食事中も、マスクをしていて、口にものを入れるときだけ、
ちょびっとだけ口を出して、すぐしまう。

 「そんなに厳密じゃなくてもいいよ〜」

と言っても、

「いや、赤ちゃんにうつしたくない。絶対赤ちゃんは、僕が守る」

と、言ってきかない。

 そんなこんなで、2週間。

 もういい加減、風邪も治っているんじゃないか、
と思うのだが、次男は、
「いやまだ念のため」
とか言って、マスクをはずさない。

 母が、
「ジローったら、ここのところ常にマスクしていて、何だか怪しいわよ。
 変な子だ、っていじめられるから、やめさせなさいよ!」
と、私に言ってきた。

 私も、ちょっとそう思っていたので、
「もう風邪治ってきてるし、マスクはずせば」
と言ってみたが、次男も結構頑固で、
「まだだめだよ」
と決して取らない。

 なにせ、学校でも家でも、寝るときも食べるときも、
常に24時間マスクをつけているので、
何だか不審な空気すらかもし出している。

 何度も何度も注意しても、
しかし次男の決意は変わらない。

 そんなある日、学校で持久走大会があった。
 私の体調が悪かったので、申し訳ないが、
今年は、見に行ってやることができなかったが、
その日は、天気もよく、無事終わったようだった。

 「なんとかお天気もったわね〜」
などと、近所のお母さんと立ち話していたら、
そのうちの子供が、
「おばちゃん、ジロー君、マスクして走ってたよ」
と言う。

 「なに〜〜〜〜〜〜〜?!」

 マスクして持久走って!

 アホか!!!!!!!!!

 走るときは、外だし、周りの空気が動いているんだから、
誰にもうつさないし、うつされないっつーの!

 第一、マスクして走ったら苦しいだろうが!

 私は、次男が帰ってきたら、
とっちめてやろうと、メラメラしながら待っていた。
 しかし、次男は、実にすがすがしい顔で帰ってきて、
「今回、順位は、ビリから2番目だったけど、悔いは無いよ」
なんて、きれいな目で語るものだから、
叱りそこねてしまった。

 な〜にやってんだか・・・・・・・

 その後も、次男のマスク生活は、
数ヶ月にも及んだ。
 風邪は、治ったが、
インフルエンザの菌を学校から持ち帰りたくない、
アカンボにうつしたくない、
と、流行が落ち着くまで、マスク装着をやめなかった。

 その一方で、長男三男四男が、
ものすごくいい加減な手洗いうがいをやっているのだから、
無駄だと思うのだが。

 
 さて、それからまた数ヶ月。
 先日、終業式を終えて、
次男が持ち帰った作文帳。

 読んで、ひっくり返った。

 また私は、こいつにやられた。

 その作文がこれである。



 ああ・・・・・・

 えらそうに、※←こ〜んなただし書きまで付けちゃって・・・・・・


 先生に、いい部分を赤線引いてもらったりして・・・・・・


 親が思うようには、子供は育たないけれど、
親が思った以上のことを思っていることがあるみたいだ。

 子供の作文・・・・・・・

 今後、シリーズ化が期待できますな・・・・・・


     (了)



(子だくさん)2006.3.28.あかじそ作 つーか、次男作?