「 スピリチュアル 」

母は、昔むかし、銀座のシャンソン喫茶「銀巴里」で
美輪明宏がかつて丸山明宏だったころからファンだったし、
夫は、美輪さんの著書「紫の履歴書」などが好きで、
私も、ずっと前から大ファンだった。
 
 「ヨイトマケの唄」が好きで、
それを歌っている姿とか声とか、
もう、すげえや、としか言えないし、
泣いちゃうし、ともかくもう、うお〜!・・・・・・なのだ。

 そこへ持ってきて、江原啓之氏も好きで、
彼の特番は、欠かさず見ているので、
彼らの出演する番組=毎週水曜日放送の「オーラの泉」は、
絶対に外すことのできない必修科目だ。

 子供の頃から「いろいろ見えちゃう体質」の私としては、
「ああ、あれは、そういうことだったのか」
という説明が受けられて、安心したり、納得したり。

 夫も、この番組が好きらしく、
「おお!」とか「やっぱり!」とか、
ぎゃーぎゃー言いながら観ている私の横で、
音もなく静かに観ている。

 そこで、私も、私なりに、
自分の前世などを推理してみた。

 なんとなく頭に残る記憶をたどると・・・

 頭をグンッと殴られて絶命した記憶。
 そして、また、別の記憶として、
飛んできた槍で胸を射抜かれて即死した記憶。

 細かい手細工にこだわるところ。

 親兄弟を大事にしなくちゃ、という強迫観念。

 夫に対して、うんっっっっっざりしているのに、なぜか離れないわけ。

 以前、役員で一緒になった人を、
常に「親友」と心の中で慕い、
今年、彼女がPTA会長になったとき、
どうしても彼女を守り立てなくては、と思い、
そういうキャラじゃないのに、重要な役員に立候補したこと。

 私の推理は、こうである。


 私は、むかし、芸術的な職人だった。
 芸術に秀でた城主に気に入られ、
私たちは、立場を超えた友情を結んでいた。
 城主が、「いざ出陣」というときに、
前世の私は、迷わずいくさに出て、そして死んだ。
 で、城主の生まれ変わりである友人(現ピアノ教師)を、
今世でも、陰から支えようとしている。

 自分の友情のために、
行かなくてもいいいくさに勝手に行き、
勝手に死んだ私は、
親兄弟を悲しませたことを悔い、
今世では、親兄弟、子供たちを大事に思っている。

 で、夫は、
ひく〜〜〜〜い、ひく〜〜〜〜〜〜い、
ひっく〜〜〜〜〜〜〜〜い身分の者で、
身分の高い私を、遠くのほうからずっと見ていた。
 心から、心から、心の底から前世の私を敬愛していた。
 戦いの際、私を守るために
前世の夫が身を挺して戦死したため、
私は、夫に、前世の恩があり、
今世に至っても、
「お前あっちゃ行け」とは、なぜか言えないのだった。

 夫も夫で、
その高い忠誠心の報酬として、
今世で、敬愛するお方(=私)のそばで
「お仕え」することが許された。
 夫は、「念願かなって超ハッピー♪」なわけだから、
私からどんな厳しい扱いをうけても、
「へへ〜〜〜〜〜」
と平伏して、逆らわない。


 どうだ〜〜〜! この推理!!
 ツジツマ合う〜〜〜!
 相当無理矢理だけど、理屈は、合ってるぅ〜! 


 で、私も、私の家族も、
散々結構危ない目に遭っているのに、
今こうして無事に過ごせているのは、
ものすごく力のある方が
後ろで守ってくださっているからなのであ〜る!

 どうだ! どうだどうだ! いい感じだなあ!


 あれは、そう、十数年前のことだ。
 3月に上京してきた夫の母親と妹と一緒に、
幼い長男次男を連れて、東京ディズニーランドに行こうとしていた。
 いつもは、時間いっぱい遊びたいため、
開門時間には到着しておこうと、
自宅を朝7時から8時くらいに出発し、
地下鉄で行っていたのだが、
その日は、なぜか私は、ハタ、と、
「昼ごろ出かけよう」
と、思いたち、予定を変更した。
 そして、夫は、
「いつもの地下鉄でなくて、違う路線で行ってみたい」
と言った。

 で、その日、ディズニーに行き、
いつもどおり夢の国で遊びまくり、
そして、帰り道、
電車が異常に混んでいるのに驚いた。

 電車の中では、大勢の人が号外を読んでいた。
号外のタイトルは、こうだった。

 [ラッシュ時間帯の地下鉄でサリン撒かれる]

 すんでのところで
地下鉄サリン事件の電車に乗り込むところだった。
 あの朝、私が「昼ごろ出かけなさい」と
誰かに耳打ちされなかったら、
夫が、「地下鉄じゃない路線で行きなさい」と
誰かに教えてもらわなかったら、
被害者のリストに私たち家族が名を連ね、
乳幼児の死者となった我が子たちは、
「悲劇の子」として有名になるところだった。

 誰かが、私たちを守ってくれた。
 あのとき、それに、はっきり気付いた。

 その日以来、
自分たちは、誰かに守られているんだ、と、
私は、強く信じ、感謝している。

 スピリチュアル。

 私の推理は、めちゃくちゃ自分本位で
希望的観測の色が強いのだけれど、
「私のオーラの色は、黄色が強い」
という推理には、自信がある。

 黄色のオーラ=ユーモア心・・・・・・
 お笑いのことが常に頭の大部分を占めているのだから、
背中の後ろでは、
マッキッキなメラメラが渦巻いているでしょう。

 ああ、私は芸能人ではないけれど、
あの番組で、是非ホントのところをみてもらいたいものだ。
 
 先週、39歳にして「おばあちゃん」呼ばわりされて、
へこみまくったというのに、もう、この立ち直りよう。

 ノーテンキで、実に中途半端な霊能力を持つ私。

 アホやね。


 (了)

(しその草いきれ)2006.5.8.あかじそ作