「 メインストリート 」

 子供たちの世話に追われ、
親に振り回され、
夫とは、コミュニケーションもとれず、
それでも、日々、一生懸命に立ち働いているお母さん。

 一日中仕事で外回り、
下請けの弱みで親会社の身勝手さに口答えも許されず、
悪くも無いのにあやまり通しのお父さん。

 クラスのいじめっ子に目を付けられ、
先生もあてにならず、
親友だと思っていた子も、
クラス替えと同時に冷たくなって、
おまけに、いつも親からガミガミ怒られてばかりの子供。

 ああ、何なんだよ、この世は。
 どうなってんの?
 つまんね〜の!
 全然面白くも何ともないじゃんか!

 ・・・・・・・そんな風にクサクサしてしまうことって、
長い人生の中では、何回かあるものだ。

 実際私は、今までの人生の大半を、
こうしたクサクサの中で過ごしてきた。

 夢中になれることも無く、
大笑いするようなことも無く、
笑顔を忘れてしまった時期があった。

 たまになら何とか立ち直れるが、
そういう時期が長く続くと、
いくら楽観的な人間でも、
すねて、いじけて、
だんだん卑屈な考えになってくる。

 世の中の、楽しそうな明るい喧騒は、
遠いところでやんやんやされていて、
自分という存在が、
路地裏の割れた植木鉢みたいに、
けものみちの湿った草みたいに、
トンネルの中のコオロギみたいに思えてくる。

 そういう泥沼状態になると、
周りの人間が
自分を苦しめるろくでなしにしか見えなくなるし、
こんなに苦しんでいる自分を
ちっとも助けてくれない周りを、
憎んで、恨んで、毒づくことばかりしてしまう。

 これは、思うに、
自分をわき道に追いやっている行為だと思う。

 自分が陥ったことのある「穴ぼこ」だからわかるのだ。

 そこは、自分の道じゃない。
 最初は、人の掘った落とし穴に落ちただけかもしれないが、
自分でそこから這い出ていかないこと、
いつまでも這い出ていけないでいることは、
結局、自分で穴ぼこを深くしていることになる。

 深くなりすぎて、
自分ひとりの力で出られなくなってしまった人は、
病院に行ったり、カウンセリングを受けて、
手を差し伸べてもらおう。
 助けを借りながら、そこから出るのだ。

 泥だらけになりながらも、
その穴ぼこから這い出せたら、
今度は、こういうことを心がけて生きたらどうだろう。

 「自分がメインストリートになる」

 どんなキツイ状況でも、
どんな悲惨な環境でも、
自分がこの世のメインストリートだと思うのだ。

 もし、日々の暮らしに疲れたお母さんがいたら、
仕事に煮詰まったお父さんがいたら、
頭の上の青空に気付けない子供がいたら、
自分をこう思ってみて欲しい。

 自分は、そういう役をやっているハリウッド俳優だ、と。
 自分には、いつでもスポットライトが当たっているんだ、と。

 疲れた自分を見つめ、
ボロボロになった気持ちを見つめて、
そういう自分にうっとりすればいい。
 頑張ってるなあ、
よくやってるなあ、
自分って、大したものだよ、と、
自分をほめたたえてやればいい。

 あくまで、自分は、メインストリート。
 どういう状況も、
この世のメインキャストである自分に課された課題だ、と。

 楽しいことも、悲しいことも、
嬉しいことも、悲惨な状況も、
メインストリートを行く自分の
人生の一エピソードなのだ、と。
 
 ときには、メインストリートだって、路地裏に入ることもある。
 けものみちや、トンネルの中を貫通することだってあるだろう。
 でも、どんな道でも、
そこはメインストリートなのだ。

 どんな狭いところを通っても、
どんなキツイ山道でも、
そこは、自分という国道なのだ。
 
 中央フリーウェイ〜♪ なのだ。

 どんな状況でも、
自分は、メインストリートを歩いている、
ということを、忘れてはいけない。

 どんなときでも
どんなことでも、
堂々と、
胸を張り、
自信を持って行い、
明るく行進しよう。

 はじめは、うまくできないかもしれない。
 うまく胸を張れないかもしれない。

 でも、無理してでも、
形から入ろう。


 どんなときでも
どんなことでも、
堂々と、
胸を張り、
自信を持って行い、
明るく行進しよう。


 さあ、もう一度。


 どんなときでも
どんなことでも、
堂々と、
胸を張り、
自信を持って行い、
明るく行進しよう。


 行進していくうちに、
大またでどんどん歩いていくうちに、
気がつけば、そこが
世の中のメインストリートになっていく。

 自分自身が、
メインストリートになっていく。
 自分にピンスポットが当てられ、
自分の物語がつむがれていく。

 何度でも、
何度でも、
何度でも、やってみよう。


 どんなときでも
どんなことでも、
堂々と、
胸を張り、
自信を持って行い、
明るく行進しよう。


 ほら、もう、そこは、メインストリートのまんまんなかだ。
 あなた自身が、大河ドラマだ。


   (了)

(しその草いきれ)2006.5.29.あかじそ作