「軸」 ―41歳女子のうた―


 いやはや
迷いの多い人生であるが
その理由が
ふとわかった

 私の今人生における軸
つまり
テーマというものが
いまだ決まっていないではないか

 子供の頃は
勉強しろ運動しろ友達と仲良くしろと言われていたから
だまって言うことを聞いていただけだし

 ねえちゃんになってからは
世間並みにしなくちゃだわと
結婚して子供産んで
一生懸命育てていた

 そして
子供がちゃんとものを言うまでになってきた
ここ数年

 わたしゃ一体どうしたいんだよ、と
これからどこへ
どうやって行きゃいいのさ、と、
ぽつねんと立ちすくんでいる

 道しるべはひっきりなしに掲げてある

 こちらへどうぞ
 あちらはいかが、と

 しかし

 そのどれもこれも
興味の無いことだったり
ひどく難しそうだったり
うさんくさいやら
向いていないやら

 私に向けた道しるべは
ひとつも無し

 いや、ちがう

無数にある

 無数にありすぎて選べず
皆無に等しい

 行動的な人なら
こんなに戸惑うまいが
引っ込み思案の臆病者には
しり込みしてしまうばかりの
刺激だらけの世の中

 一歩表にでたら
すぐに傷だらけのぼろ雑巾になってしまいそうだ

 無防備に人前に出たら
瞬時にすべてをむしりとられそうだ

 今までの経験が
ますます自分を臆病にし
とりあえずの自分の軸を
「自己防衛」ということにしてしまっていたが

つまらん

そんなん
全然つまらん

 生きていること自体が
「死ぬまでの暇つぶし」とか
「息を殺してかくれんぼ中」とか
そんな感じになってくる

 まだ結論はいらないけれど
方向性がほしい

 具体策はこれからじっくり自分で探すから
せめて軸に何を置くかは
決めておきたい

 でないと私のようなへっぴり腰は、
青空の下には出られないのだ


 そんな迷えるおばちゃんと化した
私・41歳の女子だが

 最近出会った13歳の少年が
―次男坊の友人なのだが―
人生は脱力して好きなことをするべし、と
教えてくれた

 そして最近出会った中古の車が
「バモス!」
―いいからともかく行ってみようぜ―
と、示唆してくれた

 いちいち難しく考ないで

まずは靴を履け
そして外に出よ
人に会え
話せ聞け見よ、と言う

 その際痛い目に遭っても
そんなのはいいから
ともかく結論を急がず
どんどん行ってみな、と

 きれいにまとめようとしなくていいから
前へ進め、と


 私は決めた
「軸」を自分の中に持とうと

 具体的なテーマは
まだよくわからないけれど
ともかく今までのように
自分の人生の軸を玄関先にわざとらしく飾って
よそ様向けに
「私いい人ですから〜」
みたいな旗を掲げておくのはやめよう

軸は本来中心に据えられ
そこを基準に均等に遠心力がかかり
きれいに回る、という仕組みなのであるから

その軸を玄関先に飾っていたら
ちゃんと人生が回るわけはなく、
ちゃんとまっすぐ立っていられるはずもない

 軸がデンと真ん中になかったら
バランスもへったくれもないわけで

 ともかく私は自分の軸を
自分の真ん中にブスッと差し込んでやることから
始めることにした

 中心に「自分仕様」の軸を持ち
好きなことを、
四の五の言わず、まずスタートさせてみる
自分の人生を回してみる

 これ

 回るんじゃないか?






  (了)

(話の駄菓子屋)2007.9.25.あかじそ作