「 この気質なんとかしろ 」 |
40歳過ぎても親に小言を言われていると、 「もういい加減にしてくれ!」 と、頭にくることも多いが、 すでに親御さんを亡くされている人たちにとっては、 贅沢な悩みなんだろう。 生きて元気で 「ああだこうだ」と心配する気持ちの出所に気づけば、 ありがたいことだと思う。 んが! 10年程前に両親とうちの家族とで、 当時まだ健在だった父方のじいちゃんばあちゃんを訪ねたとき、 私は、この一族の血筋の性質を、 あきらめよう、いや、受け入れよう、 いやいや、受け入れた後に何らかの対処をしよう、 と思った。 「おお、おやじ、おふくろ、俺の孫たちだぞ」 と、父が自慢げに自分の両親に紹介すると、 じいちゃんばあちゃんは、一瞬ひ孫たちに目を細めた直後、 すぐにまた父に向き直って、物凄い形相でにらみつけ、 「お前、まだ口の周りにできものこさえて!」 「また酒ばっかり飲んでるのか!」 と、延々叱りつけていたのだった。 ひ孫可愛いねえ、 しかし、それはそれとして、 息子この野郎、何だそのテイタラクは! 何度言ったらわかるんだ、 ちゃんとしなさい、しっかりしなさい! ・・・・・・という 親心。 もう、ちゃんと会社も勤め上げて、 家庭も円満、 子供たちをみな独立させ、 孫も出来た、 さあ、どうだ、おやじおふくろ! 俺、ちゃんとやっただろ、 こんな俺でも、しっかりやり遂げてきたんだよ! という状況で、 まだ口の周りのにきびを叱られている、父。 しかも、孫たちの前で。思いっきり。 娘の私から見ても、 「まあよく頑張ったんじゃないの? しっかりしてきたよ父」 と多少なりとも評価しているのに、 親は、まだ、このバカ息子の「先行き」を心配し続けている。 今もうすでに「先行き」に達していて、 そこそこちゃんとしているじゃないか、 と周りが一様に思っているのに対し、 親ってヤツは、いつまでも子供を心配し、 注意し続けなければ気がすまない生き物なのらしい。 いいじいさんが、 もっと年取ったじいさんばあさんに叱られている光景を見て、 まだ若い私が親にとやかく言われるのは 仕方ないことなんだなあ、と、 そこで私は、あきらめたのだった。 しかし、この「親の要求の高さ」と言ったら、 チョモランマ級なんだからたまらない。 しかも、このしょうもないアホアホ坊ちゃん(父)に対して、 どんだけ高いクオリティを求めているんだ・・・・・・ 博士や大臣にでもなれば許してもらえるのか? いや、ノーベル賞を取ってもまだ、 親ってヤツは、まだ、 子供に四の五の注意してくるのだろうなあ。 ああ、そういえば、 母方のじいちゃんは、亡くなる寸前まで、 娘である私の母の高血圧を心配していた。 親の中でも、放任主義の人もいれば、 自分の人生最優先で子供なんて眼中無い人もいるけれど、 うちの両親の両親は、4人ともみな、 「いつまでも子供を心配しまくり」で、 「子供のことで気が休まらない」のタイプの親だった。 そして、私も、その血を引き継ぎ・・・・・・ ああ、この血筋、この気質、 苦しいですから〜〜〜っ! 「子供」と書いて「気がかり」と読む、 そんな気質、辛いですから〜〜〜っ! この気質、何とかしてくれ! 性格は、努力で変えられても、 生まれもっての気質を変えるのは、不可能だ、って大学で習ったけど、 そこをあえて変えて行きたいのさ! 「はい、私、『気がかり』5人います」 なんて、つまんないから! 「『お宝』5つ持ってます」 と、心底思いたいから、 あえて血に逆らおうと思う。 親にとやかく言われても平常心を保ちつつ、 自分こそは、子供たちにとやかく言いすぎないようにするぞ。 おい、お前たち、子供たち〜! お前たちを楽しむぞ〜! お前たちと暮らせる人生を、満喫するぞ〜! 心配症やめるぞ〜〜〜!!! 心配症矯正ギブス装着!!! 根拠の無い絶対的安心感、装着! シャキ〜〜〜〜ン! (了) |
(しその草いきれ)2007.10.16.あかじそ作 |