直線上に配置
 我が家は、典型的な「安物買いの銭失い」一家だと思う。
 結婚したとき以来一貫して
ずっと金は無かったが、
物は、足の踏み場も無いほど多かった。
 
 貧乏性ということもあり、
「安い!」となると、「買えば買うほどお得」と思い、
B級C級品でもバカスカ買いこんでしまうし、
とりあえず今は間に合っているというのに、
「今に使うかも」と思って、「買っとくか」となる。
 
 100円均一の店にとって、こう性質の人間は、
本当に「いい客(カモ)」だと思う。
 普段、10円でも安い物を買おうとチラシをチェックしているにも関わらず、
100均では、「ああ、あれも買っとこ」「これも買っとこ」と、
余計な物ばかり買いまくり、
帰ってきて使い始めたら、すぐに壊れた、なんて、毎度のことだ。
 
 そうやって一家の主婦である私だけでなく、
子供たちもみんな「銭失い」なので、
家の中がどれもこれも「安物B級C級品」で埋め尽くされ、
人間様の座る場所さえ脅かされている次第だ。
 
 子供は、どいつもこいつも「ガチャガチャ」に目が無く、
特に次男は、「面白グッズ」の前を素通りできないので、
次男の机の引き出しの中には、
「あ〜あ」
と誰もがあきれ果てるような、しょーもない雑貨が満タンに入っているのだ。
 
 そんな生活をずっと続けているせいか、
次男所有の物を年代順に一列に並べると、
「アフロ犬」「でんぢゃらすじ〜さん」「ケロロ軍曹」など、
その時その時流行ったものが脈々と綴られているのだった。
 
 
 我が家に物が多いもうひとつの原因は、
「みんなが物をたくさんくれる」
ということがある。
 
 こちらが望み、そしていただけた物は数少なく、
その99%は、「いいからとっとけ」と押し付けられた物だ。
 
 めいっこからのお下がりの服は、とても可愛く、
センスがいいので大いに助かっているのだが、
意外に困るのが、両家からの「捨てられないそれら」だった。
 
 母が昔、ハマりにハマって作りまくったパッチワークのバッグ100点以上、とか、
義母が脳出血で倒れた後にリハビリで作った工作品多数、とか、
そんなん絶対捨てられませんよ、という品々。
 
 何か、本人たちも気づかぬうちに、
濃ゆ〜い念が入り込んでいるようで、
飾るのも使うのも「怖い」代物たちである。
 
 彼女たちが亡くなってからでは、処分がもっと怖くなる。
 元気に存命中に処分しないと、これら大量の「念のかたまり」は、
生涯我が家の一角でどろどろと妙な「気」を発し続けるだろう。
 
 
 そうそう、意外と見過ごしがちなのは、本だ。
 
 子供たちは、漫画も好きだが、
ありがたいことに、本を読むことも大好きで、
夫が子供たちに買いえた大量の本が、
床が抜けるほどたまりまくっている、という事実も見逃せない。
 
 築30年超の床下の腐ったぼろい中古の木造家屋、
使い勝手の悪い収納ゼロの4DKという間取りで、
一家7人が押し合いへし合い重なり合って暮らしているというのに、
その上、各自が大量の物を持ち込み、
整理整頓も人任せ、という状況で、
母親の私が一瞬でも片づけの手を止めたら、
次の瞬間から人の住む場所ではなくなってしまうではないか。
 
 ああ〜〜〜〜〜〜〜、もうイヤ!
 
 物に支配されているこんな生活、イヤ!
 
 金も無いのに、みんな物買うな!
 
 「要らない」と断れず、そして、貧乏性で捨てられない我が家に、
近所の方たちよ、
お下がりを大量に持ち込むのはおやめください!
 「子だくさんで『困って』るんでしょ」
 「助けてあげる、気にしなくていいわよ」
って言うけど〜〜〜!
 
 「ありがとうございます」「助かります」
って本当に思うけど〜〜〜!
 
 一応、生意気にも、「好み」というものもあったりします!
 「プライド」みたいな物もありんす!
 
 もう家が、物でパンク寸前なんです〜〜〜〜〜う!!!
 
 
 この、「物の移動」(片付け・整理整頓)という作業に、
自分の人生の大半を占められているという現状に、
今こそ、別れを告げねばならない。
 
 家の中での主人公は、
「物」じゃなくて「人」なんだぞ、バカヤロウ、だ。
 
 私は、今日から「血も涙も無い取捨選択魔」となって、
生活に必要最低限の物だけを残して、
連日捨てまくる作業に取り掛かろうと思う。
 
 狂ったように連日リサイクルやら廃品回収に出しまくり、
リビングに秋風が爽やかに吹き抜ける頃には、
ガランとした部屋で、小指を立ててハーブティーでもすすっちゃうぞ!!!
 オラァ〜!
 
 
 とはいえ、
我が家には、「茶の間」はあっても「リビング」などという素敵なスペースは無く、
更に、わたしゃ、ハーブティーなんて苦手じゃないか。
 
 片付いた畳の部屋のちゃぶ台で、
番茶をすすって一服するのがせいぜいだろう。
 ああ、そんな当たり前のひとときを手に入れるために、
ねじり鉢巻で、鼻息も荒く立ち上がる!!!
 ダア〜〜〜!
 
 ・・・・・・って、ああ。
 この物・物・物の山、見てよ・・・・・・ 前途多難だよ・・・・・・ 
 ああ、がんばれぇ、私〜。折れるな〜〜〜。
 
 
 
   (了)
 
 
   (しその草いきれ)2008.9.2.あかじそ作

 

しその草いきれ 「安物買いの銭失い」