話の駄菓子屋 「大腸内視鏡レポート その1」
 
 
 
 母親が、10年ほど前に
急性大腸炎を起こして入院したとき、
大腸にカメラを入れる「大腸内視鏡検査」というのを受けた。
 そして、直径3センチほどのポリープを3個取り除き、
無事、退院した、ということがあった。
 
 その検査は、
いわゆる胃カメラの大腸版みたいなもので、
小型カメラの付いたミニミニ植木バサミみたいなものを、
肛門から挿入し、
大腸内のポリープを見つける、というもので、
その場で切除可能なポリープは、
先っちょのはさみでちょん切ってしまうのだ。
 そして、その組織を病理検査にかけて、
良性腫瘍か悪性腫瘍(ガン)かを調べる。
 
 その際、大腸の中にウンチが詰まっていたら腸壁が見えないので、
前日は、消化のよい大腸検査食(レトルトおかゆなど)を食べ、
その晩、第一回目の下剤を飲んで寝る。
 翌朝からは、完全断食で、
大量の下剤入りジュースのようなものを、
時間を掛けてゆっくり何度も飲み、何度も排便する。
 ゆるゆるの便は、時間を追うごとに徐々に薄くなり、
最後は、薄い黄色の水様になる。
 
 この話を母に聞いたとき、
「宿便一掃でよかったじゃん」
と思ったのだが、
この検査は、医者の上手い下手によって、
かなり痛みに差があるらしい。
 
 母は、我慢強い上に、出産経験者だったので、
「こんなのどうってことないわい」
と、ふてぶてしく笑い、
検査の直後にスタスタ歩き回ってタバコをふかしていたが、
同じ日に同じ検査を受けたよそのおじさんは、
「もう死ぬかと思った」
「二度とこんな痛いことしないぞ」
と、腰くだけになっていたらしい。
 
 ところが、その母が、
6年前くらいに、突然腸閉塞を起こし、
また大腸内視鏡検査を受けると、
これまた3センチほどのポリープが3つ4つ取れた。
 
 前も今回も、ポリープは良性だったようだが、
その後、定期的にこの検査を受けるようにと医者に言われているにも関わらず、
一向に受けようとしない。
 
 そこで、私や父がしょっちゅう検査を促すのだが、
「大丈夫よお! ほっといて!」
と、そのたびぶち切れてしまうところを見ると、
やはり、下剤は苦しく、
検査は気持ちのいいものじゃないようだ。
 
 
 私は、30歳頃にヤクルトに勤め始め、
それまでの
「排便は、一ヶ月に1〜2回」
という、異常なほどの便秘から開放された。
 
 その日売れ残った乳酸菌飲料を毎日飲み続け、
自転車で一日中お届け(配達)しまくっていたので、
大腸内は、善玉菌が優勢になり、
更に、運動によって、腸の運動が活発になり、
大腸が絶好調になったわけだ。
 
 それから12年。
 ヤクルト勤務をやめてからも、
毎日乳酸菌飲料を飲み続けているため、
毎朝、食後には、黄色いバナナ状の健康なウンチが出ていた。
 
 いきむことなく、
寝ぼけながら便器に腰掛けているだけで、
勝手にするすると健康なウンチが出ていた。
 
 今まで、散々苦しんでいた、
脳貧血や、めまいや、腹部膨満感や、ひどい生理痛など、
便秘に伴う不快症状が、すべて治ってしまった。
 
 子供の頃からずっと虚弱体質だったのに、
快便体質になってから、
風邪を引きにくくなり、
なにより、アレルギー体質が、断然改善された。
 花粉症も、慢性鼻炎も、目のかゆみなども、
嘘のように軽減されていった。
 
 「腸の健康とアレルギーとは、絶対関係あるぞ!」
と、私は、ずっと前からひとりで力説していたのだが、
みんな笑って本気にしてくれなかった。
 
 しかし、そのことがマスコミで最近明らかにされたのを見て、
「ほらね!」
と、ガッツポーズをしたものだった。
 
 そんな、快便生活12年を過ごし、
すっかりトラブルと無縁になっていた私の大腸が、
この秋、異変を起こした。
 
 便秘ではなく、毎朝便は出るのだが、
今までのようにするする出るのではなく、
何か途中で引っかかっているような感じがあり、
ものすごく細い便だったり、
ウサギのフンみたいにコロコロの粒状だったりして、
何だかおかしいのだ。
 
 おまけに、排便後に出血が何度もあった。
 
 前から何度も切れ痔でお尻から血が出たことがあるが、
今度のは違う。
 お尻は、痛くもかゆくも無い。
 もしかしたら、内側の痔かもしれないけれど、
母のこともあるし、30歳までの異常な便秘歴を考えると、
私も腸にポリープのひとつもできていて当然だ。
 
 どうしよう・・・・・・
 
 一瞬迷ったが、2秒目には、迷いは消えていた。
 
 「私も大腸内視鏡検査を受けよう!」
 「母のように、腹痛で七転八倒する前に、悪いところは切っておこう」
 
 心の中で、
「どう思う?」
と、友人(昨年、乳がんのため43歳という若さで亡くなった)に問いかけてみたが、
私の中の彼女は、
「検査しときな〜。ゆりちゃん、まだ小さいんだから、長生きしなきゃ」
と言ってくれた。
 
 「よし! やるぞ!」
 
 いつも、小さいことにウジウジと優柔不断に悩むのに、
こういうときの自分の決断力は、我ながら凄まじいものがある。
 すぐに、かかりつけの医者に駆け込み、
事情を話して、検査機関に紹介状を書いてもらい、
その日のうちに検査の予約をしてきたのだった。
 
 決戦は、1月中旬。
 
 薬局で、スペシャル下剤セットを処方された。
 売店で、大腸検査用レトルトおかずセットも買ってきた。
 
 母に報告すると、
「ホントにするの〜? ただの痔じゃないの〜?」
と、乗り気でない感じだったが、
「子供が多いから、バアバみたいに、突然倒れるわけにいかないのよ。
私は、先手必勝で、こっちから攻めていくよ。こっちの都合のいい日程でね」
と言うと、
「そりゃそうだわね」
と納得し、検査中の末っ子の世話を申し出てくれた。
 
 さてさて、どうなることやら。
 乞うご期待?!
 
 
 
 【追記】
 
 大腸に不安のある方、
内視鏡検査におびえている方など、
これから私が実際に体験して、
克明にレポートいたしますので、
どうぞ、ご参考にしてくださいませ。
     
 大腸がんは、自覚症状の無いまま進行し、
気づいたときには、だいぶひどくなっていることが多いと聞きます。
 私が、切り込み隊長となって、突っ込んでいきますので、
(いや、『突っ込まれてくる』か?)
どうか、レポート結果を読んで、
大腸が心配な方は、私に続いてください。
 
 どうしても、忙しさにかまけて、
自分の健康を後回しにしてしまいがちですが、
育ち盛りで手のかかる子供がいる方こそ、
ふるって検査をしようじゃありませんか?
 
 自分のためだけではなく、
家族のためにも、
自分の心と体を大切に使おうではありませんか?!
 
 志半ばで、
巣立つ前の子供を3人を残して逝ってしまった友人に代わって、
私は、声を大にして言いたい。
 
 病気になる前に、
未病のうちに、
メンテナンスしよう!
 
 年末の大掃除みたいに、
毎年、一箇所づつでいいから、
体の大掃除をしよう!
 
 悲しむ家族の顔を見たくないからね!!!
 
 
 
 
         (了)
 
 
 
 (話の駄菓子屋)2008.12.16.あかじそ作