「大腸内視鏡検査レポート その3」
 
 
 
  風邪をひいてしまった。
 長い時間穴あきパンツのまま、
尻を出したままにしていたからだろう。
 
 散々な目に遭ったが、
心配だった大腸が、今のところ健康だとわかってよかった。
 
 検査の後、
本当に全身の力が抜けきってしまい、
何にもできずに放心状態でばんやり座っていたら、
2度も大腸検査を経験した母から、
「お疲れ」
と、晩のおかずの差し入れがあった。
 
 助かった。
 
 もう、腸を使う食事に関して、
まったく意欲を失っていたので、
食べ盛りの子供たちの食事のことも、
考えたくないほどだった。
 
 重い体を持ち上げて、
何とか配膳だけは済ませたが、
自分は、何も食べたくなくて、
ただただ、ため息をつきながらぬるい番茶をすすっていた。
 
 ああ、完全に参った。
 
 「断腸の思い」とかいうことばがあるくらいで、
腸の痛みというのは、
ひとにとって、本当に相当ダメージがあるようだ。
 
 だからこそ、
腸が大病にかからないように、
しっかり大腸内視鏡検査をする必要があるのだろうが、
父方のじいちゃんが、亡くなる間際にこの検査を受け、
その後、急激に弱ってしまい、
結局亡くなってしまったことを考えると、
年寄りには向かない気がする。
 
 
 (ああ、ホントに大変な一日だった)
と、しみじみ思いながらトイレに入り、
用を済ませ、
はた、と顔を上げた。
 
 (なにこれ! 尻がつるつる!)
 パンツを持ち上げるとき、
いつもよりお尻の肉がすべすべしているような気がした。
 
 (え、え、え? 何で?)
 ためしに腿を触ってみると、
やはり、いつもの感触と違う。
 あきらかにつるつるしている。
 
 (んんんんん?! 何で?!)
 
 その後、風呂に入って湯につかり、
体のあちこちをなでてみたが、
どこもかしこも、
もちろん顔も、
ぜ〜〜〜んぶ、
今までなったことがないくらいに、
トゥルットゥルなのだ!
 
 「なんでぇ〜〜〜?!」
 
 思わず、大きな声で叫ぶ。
 何でこんなに急に、
全身、恐ろしくつやつやになっているっ?!
 
 
 ・・・・・・そうか。
 そうか、そうか。
 いや、腸か。
 
 便秘をすると、にきびが出る。
 つまり、大腸が汚れると、肌が荒れる。
 
 反対に、今日のように、
医療用の究極の下剤を使って大腸の中をきれいに掃除してやると、
肌が恐ろしく綺麗になるというわけか。
 
 待てよ。
 私の経験上、
大腸の腸内細菌が、善玉菌優勢になると、
免疫力が格段に上がって、
アレルギーが軽減される。
 風邪もひきにくくなるし、
ひいたとしても、すぐ治る。
 
 専門家の研究の結果、
ガンなどの抑制にも関係あるらしい。
 
 おいおいおいおいおいおいおい〜、
待てよ、待てよ、待てよ〜。
 
 大腸さんよ!
 
 あんたってやつぁ、よぅ、
普段は人が忌み嫌うウンチを、
嫌がりもせず、黙ってがっつり世話してくれて、
肌荒れやアレルギーなんかを起こして、
腸内のトラブルに対して、「危険信号」を出し、
必死に我々に教えてくれている、ってわけかい?
 
 おお、なんて!
 なんて律儀なヤツなんだ!
 
 あんた、ってヤツは、もう、
ハードボイルドだよ。
 まるで高倉健だよ。
 
 渋い大人の仕事をしているんだね。
 
 嗚呼・・・・・・
 
 私は、風呂上がりに、
半泣きになりながら、
我が下っ腹に手を当てた。
 
 (サンクス、大腸・・・・・・、この、頑張り屋さん)
 
 
 大腸内視鏡検査は、
思った以上にきつかったが、
一度は、受けるべきだと思う。
 
 より多くの人が、
この経験を、明日に生かすためにも。
 
 大腸は、人間の体の要のひとつだ。
 かなりキテル要と言える。
 
 それを、体の内側から、
えぐられるほどにぐりぐり実感するべきだ。
 
 腸に対して、
無意識に生きていては、ダメだ。
 腸が、今、ここで、
休み無く働いていることによって、
自分がこうして生きていられる、ということを、
意識しながら生きていくことは、必要だ。
 
 さあ、みなさん、
受けましょう。
 
 大腸内視鏡検査を受けて、
自分の体の働きを、
超実感、
いや、
腸実感してみると、
人生変わるやも、
知れません。
 
  
  (了)



   
【追記】

 その後、
意識的に大腸を大事にしていたおかげで、
すっかり風邪は完治いたしました。
 おまけに、持病の蓄膿も、
なぜか快方に向かっております。
 
 嗚呼、幸福のカギは、大腸にあり!

 ・・・・・・かも。
 
 
  (話の駄菓子屋)2008.1.27.あかじそ作