子だくさん 「嗚呼、定額給付金」
ひとり12000円、
18歳以下と65歳以上は、20000円。
我が家には、3歳から16歳までの子供が5人と、
夫婦ふたりで、
合わせて124000円給付されることになる。
124000円。
食費にしたら、2ヶ月強、
学習塾の月謝なら4ヶ月、
住宅ローンだと、ひと月強で、
車検に出したら一回分。
育ち盛り、金かかり盛りの子供5人がいる、7人家族。
生活費に回したら最後、
124000円なんて、焼け石に水だ。
瞬時に蒸発してしまう。
だから、生活費には、回さない。
生活費に回して、その分貯金していたら、
「消費を促す」という、この給付金の目的は、果たせない。
生活が苦しいからこそ、生活費には使わない。
普段出来ない気分転換に使いたい。
アブクゼニは、パ〜ッ、と使うに限る。
たとえ、しょうもない政策から出た給付金でも、
出ることになったからには、
しっかりいただく。
しっかりいただいて、
しっかり消費することにする。
だからと言って、
「ありがとう心の友よ」と、自民党に一票入れるかといえば、
別にそうも思わない。
消費税でも何でも上げればいい。
その代わり、安心して年とれる国にしてよ。
子供や持病持ちの人の医療費、何とかせい。
先進国なら、福祉をちゃんとして。
子だくさん世帯の、年金の掛け金、ちったあ負けやがれ!
どうでもいいけど、
選挙の時だけ国民に笑顔振りまいて、
終われば「この下民ども」という態度、
豹変しすぎ!
選挙以降も仕事しろ!!!
政治家は、政治して!!!
「善きこと」をやって!
党とか、地元とか、そんなの知るか!
「政治」して!
もっと、生きやすい国に直せって!
野党だ、与党だ、
衆議院だ、参議院だ、って、
高給取りが馬鹿みたいに大勢いるんだから、
みんなでアイディア絞って、使える案出せよ。
私たちが、地面を這いずり回って働き回り、
ふらふらになりながら子供育てているのを、
高層ビルの上層階で、
夜景見ながらスコッチ飲んで、
「下の連中、アリンコみたい」
とか言って見下ろしてるんじゃねえぞ。
地べたに下りてきて、
一日でも庶民の暮らしをしてみやがれ。
「田舎に泊まろう」みたいに、
一般市民の暮らしの中に一晩浸かってみろ。
まったく、もう・・・・・・
まあ、それはそれとして・・・・・・、
もらうものはもらうのだ。
もらって、そして、使うのだ。
普段、自由に使えるお金が皆無だからこそ、
この124000円は、自由に使いたい。
家族全員で有効に。
外食?
高額な割に、みんなすぐ忘れるからボツ。
体感ゲーム機?
親子共々、もう「欲しい」のピークは、過ぎた。
新型家電?
今のが、まだ使える。
親に孝行?
ごめん、体で払います。
じゃ、なに?!
何に、どう使うの?!
「僕の友達は、自分の分もらうって」
中2の次男が言った。
「ちょっと待って待って。
【自分の分】っていう言い方、聞き捨てならないねえ。
子供自身に出てるんじゃないでしょ?
その子供を養育している親に出てるんでしょうに」
「いや、そうとも限らないんじゃない?」
そばで聞いていた夫も、変なことを言う。
「子供に2万やって、いいこと起こるわけないでしょうに。ろくなことないよ」
そんな会話をしている最中に、
テレビで「自分の分を親に請求している子供たち」の話題が出てきた。
それによると、
男子学生は、割と「親に従う派」が多いのに対して、
女子は、断然、
「自分の【取り分】は、何が何でもむしり取る」
という子が多いらしい。
「何を言ってんだ、この罰当たり者めが〜!」
私が、歯ぎしりしながらそのテレビを見ているのを、
次男は、チラリと見た。
「僕の友達のT君も、2万円もらうって」
「ええ! あの【いい子】のT君も?!」
「そうだよ。で、新しい眼鏡買うって」
「えええええ〜〜〜! 眼鏡!!!
親に買ってもらえよ、眼鏡は〜。まだ中坊だろ〜!
どこまで【いい子】なんだよ〜!
なんか、こっちが心配になるほど【いい子】だなあ!」
「でも、最新ゲーム機も、新作ゲームソフトも、
全部親が買ってあげてるんだよ。で、毎日親子で楽しんでるの」
「へえ〜〜〜。まあ、それはそれで、ありか・・・・・・
あんな【いい子】に育つんだから・・・・・・」
次男、人の顔色をじっと見ている。
「お前、T君がうらやましいんでしょお!!!」
「イヤ、別に」
「お前も、2万欲しいんだろお!!!」
「べ、別にぃ」
「うちはねえ! 自営業なんだよ。
ボーナスなんて、無いの!
だから、このお金は、最初で最後の大消費大会なんだよ!
だからねえ、【物】なんてゲスなもんは、買わない!
一生残る【思い出】を作るのに使う!
そうだ、旅行行こう!
7人もいるから、近場で何とか一泊できるかできないかだけど、
・・・・・・・泊まろう!
みんなで泊まって、
旅館で揃いの浴衣着て、刺身とかてんぷらとか食べて、
カラオケとかやって、
朝起きたら浴衣がはだけて、帯が一本、腹に巻かれてて、
みんなでそれ見て笑って、
アジの開きとか、生卵とか、
焼き海苔とかの、お約束の旅館の朝飯食べよう。
そうだ、そうしよう!」
これには、一家揃って、
「賛成!」
の声が上がった。
上の息子も高校生。
もう、家族とは、ほとんど絡まない。
これから次々と、息子たちは、
家族と行動を共にしなくなる。
もう、これが最後のチャンスかもしれない。
親もそこそこ元気で、
子供5人全員、まだ親元にいる。
「言うこと聞け」と言えば、ギリギリ聞く。
そうだ、旅行だ。
旅行、旅行!
あ・・・・・・
両親に声掛けるべきか?
近所に住んでて、
声掛けないとすねるよなあ・・・・・・
声掛けて、
また、いつものように、
「そんなもん行くか馬鹿野郎」
と言われるか、
あるいは、一緒に行って、キャツラに旅行をかき回されるか・・・・・・
ううむ・・・・・・迷う!
「とりあえず、旅行代理店でパンフレットもらってくるか」
「やった〜〜〜!!!」
その場にいた子供たちは、みんなガッツポーズだったが、
心の中で、いや〜〜〜な予感が・・・・・・
とんでもなく、何かをやってくれそうな気がする・・・・・・
じじじそが・・・・・・
案外ダークホースの、ばばじそも・・・・・・
いや、とんでもなく面白いエピソードが生まれる予感も・・・・・・
ああ、家庭人としての私と、
作文書きとしての私が、せめぎ合う・・・・・・
どうする?! 定額給付金!!!
その結果は・・・・・・
しばし、待たれよ!!!
《追記》
私の父は、麻生総理が着任早々、
「定額給付金を出す」
と、言っていたのをテレビで見た途端、
それを当て込み、
速攻で、泊りがけの釣りに行った。
まだ議会で通ってもいないのに。
私のダディって、そんな人。
(了)
(子だくさん)2009.3.17.あかじそ作