「 温泉旅行サイコー A 」

 自営業で、毎月ギリギリの収入で暮らしている我が家にとって、
急に降って湧いたような定額給付金は、ボーナスのようなものだ。

 これを、生活費の足しにしたら、
何に使ったかもはっきりしないうちに、数ヶ月で消えてしまうだろう。

 子供5人大人ふたり、計124000円、
などという臨時収入は、めったにないことだからこそ、
ここはひとつ、日常的な使い方はせず、
今しか出来ないことに使うしかない、と思った。

 ここのところ、親離れが著しい子供たち。
 はっきり言って、上の子たちとは、
もう一緒にどこかに出掛けることは、ほとんど無い。

 年に2回の帰省も、
家族全員のスケジュールをあわせるのが大変になってきている。
 高校生の長男は、バイトに忙しく、
土日は、いつも一日じゅう働いている。
 中3になった次男も、
吹奏楽部の練習が朝から晩まであり、土曜日は夜まで特訓だ。
 中学に入ったばかりの三男は、野球部に入ると言っているので、
これから3年間、土曜も日曜も長い休みも関係なく、
毎日毎日、練習に明け暮れ、
どこにも行けなくなる。

 中高生の3人のスケジュールが合うようなことは、
これからは、まずありえないだろう。

 こうなると、この春休みは、
全員揃った家族旅行の、最初で最後の機会かもしれない。

 もう、お金なんて全然無いけれど、
今しかできない貴重なこと、後回しにできないこと、
つまり、「子供がまだ子供のうちに行く家族旅行」をするしかない。

 そんなわけで、
すごい勢いで思い立った私は、
家族の共通の休日を確認すると、
後先考えず、発作的に家を飛び出し、
旅行代理店に行き、近場の温泉旅館に予約を入れてしまった。

 春休み最後の日曜日に一泊し、
次の日に帰ってくる、というもので、
一日目は、日光江戸村に、
二日目は、東武ワールドスクエアに行く、という予定を組んだ。

 初日の夕飯は、和洋中のバイキングで、
翌朝の朝食もバイキングということで、
嗜好も食べる量も全然違う子供たちは、
それぞれ好きなものを好きなだけ堪能できるだろう。

 いつも、
「出されたものを文句言わずに黙って食え!」
と母親の私に言われ、
好き嫌いも食い足りないも食べきれないも言えずに、
大皿料理を黙って食べている子供たちに、
たまには「楽しい食事」をさせてもいいんじゃないか。

 私とて、
自分の嗜好を後回しにして、
子供の残した物で腹を満たすようなことをしなくて済む。

 よっしゃ。
 和洋中バイキングでキマリ!

 学校から帰って来た子供たちに
「泊まりで温泉行くよ! 夕飯は、和洋中バイキングだよ!」
と言うと、
全員が「ヤッター!」と、ガッツポーズをした。

 私から持ちかけたイベントが歓迎されたのは久しぶりだ。
 最近は、ああしろこうしろとばかり言って、
完全に、うるさい嫌なカーチャンになっていたのだ。

 実家の両親も誘ってみたが、
「一家揃って家族旅行に行ったことがないのなら、
我々は遠慮するわ。家族水入らずでいっといで」
と言われた。

 私も子供たちも、
「ジジババがいた方が、確かに暑苦しいけど、盛り上がるのに」
と思ったが、
固辞してくるので仕方ない。

 今回は、親子7人で行くことに決定した。


 さて、初日は、
「和洋中バイキング」にすべての照準を合わせ、
より美味しく食すための計画を立てた。

 朝10時に日光江戸村に到着するために、
逆算して午前6時過ぎに家を出発する。

 昼食は、家から持参したおにぎりで地味に済ませ、
心身ともに、派手な夕飯への期待を高める。

 そして、午後3時くらいにチェックインし、
夕飯前に温泉でひとっぷろ浴びて、
一服した後、万全の空腹状態にてバイキング会場にピットインだ。

 よし! 完璧だ。


 前の晩、子供たちにも各自、荷造りをまかせ、
携帯電話を持たぬ三男四男に、それぞれ封筒を持たせた。
 封筒には、夫、私、長男、子供携帯と、
4つの携帯電話の番号が書いてあり、
中に、500円玉1枚、100円玉4枚、10円玉10枚を入れてある。

 家族7人で出かけるとき、
全員はぐれずに行動するのが非常に大変なのだ。
 特に、次男は、興奮すると誰にも声を掛けずに、
勝手に土産物屋などに入ってしまうので、
いつもはぐれてしまう。
 だから、大勢で出かけるときは、
必ず、子供たち共用の子供携帯を次男に持たせ、
肌身離さず身に付けさせている。

 こうでもしないと、
次男は、本当にどこへ行っても行方不明になってしまうのだ。

 前の晩、
翌朝の朝食用においなりさんを30個ほど作り、
昼食用に鮭フレーク入りのおにぎりを20個ほど握り、
牛乳パックで作った「出先で捨てられる弁当箱」に詰めた。
 それを冷蔵庫に入れ、
自分や末っ子の荷物を詰めていたら、
もう夜中の1時を過ぎていた。

 翌朝は、5時に起きて子供たちに朝食を食べさせ、
寝ぼけてなかなか動かない連中を、
最寄のバス停まで引っ張って行かねばならない。

 6時には、家を出発したいので、
携帯のアラームを5時にセットして寝た。

 よし、完璧だ。

 ・・・・・・と、思ったら、
携帯の機種変更をしたばかりで、
アラームのセットを失敗してしまったらしい。
 ハタと目が覚めたら6時5分前だった。

 横で寝ているはずの夫は、
すでに布団にいなかった。

 「やばい! 寝坊した!」

 階下に降りると、
夫がひとりで自分の支度を終え、一服していた。
 自分ひとり早く起きて、洗濯物を干し終え、
充実した表情で一服つけていた。

 が、
 子供たちは、まだ寝ている。

 「ええええええ〜〜〜! 何で! 何で起こしてくれないの?!」

 「・・・・・・?」

 「何時に起きたの?」 
 
 「5時」

 「ええ! じゃあ何で起こしてくれないの?!」

 「・・・・・・」

 「ゆっくり寝かしてあげよう、とか思って?」

 「・・・・・・」

 「うんも〜〜〜〜! 何なんだよ〜!
 わけわかんねえぞ! おやじ! 
 とにかく、子供起こしてきて! 
 あたしは、化粧するから! 
 あと10分で出なくちゃだよ!!」

 「あ、はい・・・・・・」

 寝ぼけまくりの子供たちに何とかおいなりさんをいくつか食べさせたが、
起きたばかりで、みな、食が進まない。
 仕方なく、急遽これも牛乳パックに詰め、
昼食用のおにぎりと共に、
長男と次男のバッグに入れて持ってもらうことにした。

 「じゃあ、俺、先に行って切符買ってるから。駅で待ってる」

 夫は、逃げるようにさっさと自転車で先に行ってしまった。

 「おい〜〜〜!」

 残された5人の寝ぼけた子供たちと、私。
 出発時間は、あと5分。

 末っ子の着替えは、お兄ちゃんたちにまかせ、
急いでおいなりさんを食べ、歯磨きし、化粧するが、
あせりまくっているので、ファンデーションは、ムラだらけ!

 何でよ〜〜〜!

 リラックスしに行くはずが、しょっぱなからこれか!
 だから、夫と行動を共にするのは、嫌なんだ!

 半狂乱で家を出発し、
子供たちに「急げ〜」とか「道路の真ん中歩くな〜!」とか、
何度も大きな声を掛けていたが、
ふと、思った。

 こんな毎日から離れるための旅行じゃないか。
 楽しむための旅行だぞ。
 キーキー不機嫌になるのは、よそう。

 昨日までも、あさってからも、
日常生活の中でのしつけで必死じゃないか。
 だからこそ、今日と明日は、ただ楽しもうじゃないか。

 親子ともども、ゆるゆるしに行こうじゃないか。

 そう思ったら、少し気持ちが落ち着いてきた。

 バスが来て、駅に向かう途中、
三男が「お腹痛い」と言い出した。

 無理もない。
 朝食を食べるや否や出発したのだから、
そろそろ便の第一便が出たくなる頃合いだ。

 この、朝食後の、トイレタイムを取るために、
早めに起きる予定を組んでいたのに、
夫のトンチンカンな気配りで、
結局子供が行く道すがら便意で苦しむことになる。

 真っ青になる三男を見ながら、
また、夫にイラッときていたが、
もう、夫について考えること自体が体に悪い気がしてきたので、
考えることをやめた。

 駅に着くと、夫が改札のところにいたので、
切符を受け取り、
早速夫に三男をトイレに連れて行かせた。
 すると、3歳の末っ子長女が、
「ウリもいく〜」
と言い、ついて行った。
 長女は、出掛けにトイレに行ったばかりだから、
もう出ないはずだが、言い出したら聞かないので、
時間もないことだし、連れて行ってもらった。

 乗る予定の電車が、もうすぐ来るというのに、
夫と三男と長女が、なかなか戻って来ないので心配していると、
向こうの方からバタバタ駆け出してくるダサい小男と子供ふたりが見えた。

 やっと帰って来たか。

 「間に合った?」

 三男に聞くと、
「ユリがおしっこ出るとか出ないとか言ってがズグズしているのを待ってたら、
結局出なくなっちゃったよ。まだお腹痛いよ」

 「えええ〜〜〜!」

 「何でウンチ我慢してる人を先にさせてやらないの〜!
 ユリは、おしっこしたばかりって言ったじゃ〜ん!」
と、夫に詰め寄ると、 
 
 「ごめん・・・・・・」
と言うなり、黙り込んでしまった。

 (チッ)

 夫と関わると、交感神経が千切れそうにイラついてしまうので、
この旅の間は、極力関わらないようにしよう。


 快速列車が来て、全員で乗り込んだのだが、
日曜日なのに、意外と混んでいて、
家族全員がまとまった場所に座れなかった。

 てんでんばらばらに座り、そして、列車が出発した。

 落ち着いて周りをよく見ると、
中高年の登山客ばかりだった。

 男女入り混じった、いくつもの登山サークルの団体が、
そこここで大きな声で話し、騒いでいた。

 「アタシ、ミキティーんとこ行って集金してくるからさあ!」
 いかにもやる気マンマンといった感じの、赤いセーターのおばさんが、
隣の車両に駆け出していった。

 (ミキティーって!)

 「や〜だ〜。居なかったわよぉ、ミキティー。何号車にいるか電話してみるわ!」
 赤いセーターのおばさんは、
「携帯電話のご使用はご遠慮ください」
の電車のアナウンスの声にかぶせるような大声で、
「あ〜、もしもし〜! ミキティー? 今何号車? うん! あ〜〜、は〜〜〜い!」

と言い、
「3号車だったわ! ギャ〜八ッハッハッ」
と大笑いしながら先ほどと反対の方向に走っていった。

 (おいおい、中高年よぉ・・・・・・)

 ため息をつきながら、
散り散りに座った家族を見回してみると、
長男次男は、同じ車両に空席があるにも関わらず、
隣の車両で別々に座って爆睡しているし、
三男は、チョロチョロ動きまくって窓の外を覗いているし、
夫と長女は、一緒にまったり座っていて、
四男は、私の横で、分厚いマンガ本を読もうとしている。

 「何で漫画なんて持ってきたのよ? 
 窓の外見てごらん。桜が八分咲きで綺麗だよ」

と、私が車窓を見るように促すものの、
「うん」
と言い、チラッと外を見ただけで、
また漫画を読みだしてしまった。

 何よ・・・・・・せっかくの旅行なのに・・・・・・
高揚感とか、そういうの、無いの? 
 この子たちは・・・・・・

 すると、三男が、大きな声で言った。

 「お母さん、すごい気球!」

 指差した方向を見ると、
遠くの低い空に、気球が三つ四つ浮かんでいる。

 「ああ、ホントだ! すごい!」

 よく見てみると、相当高いところに上がっているものもある。

 「わあ、あれ高いねえ!」

 リアクションがイマイチの四男のわき腹を小突いて、
ほらほら、と、その気球を指差すと、
「うわあっ!」
と、いきなり四男が大きな声を出した。

 さっきまで全然気づかなかったが、
物凄く近くに気球があり、
思いのほか大きくこちらに迫って見えるのだった。

 「でっか! 近くで見るとすごい迫力だねえ!」

 やっと盛り上がってきた。

 「気球大会でもやっているんじゃない?」

 と、言おうとしたら、同じセリフを後ろの席のおばちゃんが言った。

 「あっこから落ちたら生きちゃいられないね」
 「死ぬね」
 「生きてても半身不随か植物状態でしょ」

 (何だよ〜、せっかく楽しい気分になってきたのにぃ・・・・・・)

 登山サークルの中高年たちのしゃべる大声は、
その後も延々続いたのだが、
「あの人も去年死んだわね」
「田中さんの奥さんも肺がんで死んだじゃない?」 
「死んだ丸山さんの甥っ子がね・・・・・・・」
と、5分に1回は、「死の話題」なのである。

 親を送り、
知り合いが次々亡くなり、
もう、自分たちの寿命の残りが少ないことが、
チラチラ気になっているのは、わかる。
 いやでもしょっちゅう「死」を意識しているから、
ついつい話題に出てしまうのもわかる。

 でも、そんな「死ぬ死ぬ」言わなくてもいいじゃないか。
 しかも、キャッキャキャッキャ笑いながら。

 次から次へと、
「死」をライトタッチな笑いに乗せて、
車内のリスナーたちに常時お送りしているのである。

 本当に、彼らの目的地の山のある駅まで、
面白い話題→死→美味しいお取り寄せ食品の話→死→今から登る山の特徴→死
といった具合に、とにかく、【うわさ話】と【デスジョーク】が順繰り順繰りなのだった。

 (ダメだこりゃ・・・・・・)

 登山客が一気にドッと下車し、
やっと車内が空いたので、
子供たちに呼びかけて、ひとかたまりにまとまって座った。

 寝ていた長男は、
「席なんて別にどこでもいいじゃん。着いたら教えてよ」
と、めんどくさそうに席を移り、また寝てしまうし、
次男は、終始イヤホンをつけてゲームをしているし、
三男と四男は、漫画を取り合って読んでいるし、
いつも嫌な光景だな、と思って見ているよその子の生態と同じなのだった。

 そんな空気を一掃しようと、
立ち上がって、車両の隅にあるトイレに行ってみた。
 中に入ると、完全に懐かしい昭和の列車トイレだった。

 狭いし、和式だし、
前の手すりにつかまらないと揺れて落ちそうだし、
コックを踏むと、青い水が、強烈な芳香剤の匂いと共に流れる。
 「そんなにか」というほど物凄い勢いで。

 ああ、今のトイレで、
自分の中では、だいぶ盛り上がってきたぞ!


 そんなことをしているうちに、
なんと、もう、目的地の駅に到着してしまった。

 朝10時。
 駅前のバス停は、空いている。

 もう、春休みも終わるのだ。
 無理もない。

 駅前のタクシー乗り場で集まって雑談していた運転手さんのひとりが、
「まだ春休み中かい?」
と聞いてきたので、
「明日までです」
と答えると、
「ああ、そうなのかい」
と、素朴に笑って返してくれた。

 ホント、それにしても、空いている。

 ガラガラの循環バスに乗ったのは、
私たちの他に、週末を利用して遊びに来たOLの二人組だけだった。
 ある意味貸切状態で、
私の中の「公的交通機関で子供たちに規律を守らせねば」的な縛りは、
 カシャン、と外れた。

 外れたと同時に、
日常での緊張感が、一気にほぐれていくのがわかった。

 「見てみて、あの看板! ロ〜カル〜」
 「あの店、完全に某チェーン店のパクリでしょう!」

 次男と一緒に、目的地の日光江戸村まで、
観光地にありがちな「ガンバッテマス」というノリに突っ込みを入れながら、
楽しく過ごした。

 説教ではなく、
子供たちとくだらない話題で笑い合うのは、久しぶりかもしれない。

 いや、楽しいじゃないか。


 日光江戸村に着くと、
いきなり門の前で水戸黄門のようなおじさんと、
町人のような格好の人たちが出迎えてくれて、
「写真を撮ってあげるでござる」
というような感じで話しかけられた。

 「来たな」
と、一瞬ひるんだが、
夫の持っていたデジカメを渡すと、
家族全員と江戸時代の住人たちが同じフレームに納まり、
シャッターがきられた。

 ここも出来てからだいぶ経っているだろうし、
春休みも終盤だろうから、
そんなに盛り上がってもいないかな、と思っていたが、
いや、そうでもなかった。

 侍やら町人やら町娘やらが
そこいらじゅうにうろうろ歩いていて、
手裏剣投げコーナーなどは、結構な盛り上がりを見せていた。

 時間が経つにつれ、人もどんどん増えてきて、
にぎわってきた。

 さっきまでドッチラケだった長男が、
いつの間にか目をキラキラさせて、早足で歩いている。

 「あんた、小学校の修学旅行で1回ここ来てるよね」
と聞くと、
「うん、物凄く面白かった。久しぶりに来たけど、やっぱ、ここいいわあ!」
と、もう、駆け出して前を走っている。

 鯉のえさコーナーに、なぜか猛然と走り寄り、
100円で、何やら臭いエサの粒つぶを一袋買い、
弟妹に分けてやっている。
 自分がバイトで稼いだお金で・・・・・・

 (兄らしいところもあるじゃないか)

と、感心していると、
少ないエサを兄弟5人で池のふちで取り合って、
5人ともども池に落ちそうになっている。

 「うわ〜わ〜わ〜」
 「あぶね〜〜〜」
 「おっとっとっとっと〜い」

 何とかみんなで支えあって全員冠水は避けれらたが、
久しぶりにほほえましいというか、
しょうもない映像を見た気がした。

 しばらくは、「忍者の地下秘密基地」とか「恐怖の館」的な、
「お化け屋敷もどき」ばかりが続いたので、
内心、(え〜、全編こんな感じ?)と、がっかりしかけたが、
そうでもなかった。

 リアルなセットと人形で歴史を説明するコーナーがあったり、
ほぼ45度に傾いた、思わず部屋の隅から隅へ落っこちてしまうような、
やりすぎとも言えるほどに激しい忍者からくり屋敷など、
「あれ、結構すごくない?」
というものもたくさんあった。


 「遠山の金さん」のお芝居を見た時は、
「こんなところで時間使わないで、もっとお土産とか見たい〜」
と渋っていた次男が、
一番大笑いして受けていたし、
(現に、お笑いライブ並に面白かった)
この話を知らない三男四男は、
クライマックスのお白州のシーンで、
「お母さん、あの【お奉行様】って人、さっきの【遊び人の金さん】と同じ人がやってる」
と、自分だけが気付いたかのように得意げに訴えてきた。
 「この桜吹雪を忘れたとは言わせねえぜ」
のところでは、
「うわ〜! そうだったのかあ!」
と叫び、罪人役の人よりもリアクションが大きかった。

 何だか・・・・・・楽しいぞ! ここ!
 子供たちが、物凄く盛り上がっているし!


 夫が、ぜひ見たいと言い出して、
芝居小屋で水芸を見たが、
初め、「何の見世物? なんか、かったる〜」
と言っていた子供たちも、
ありえないところから次々と水が飛び出してくるのを見て、
「え〜! どうやって!!!」
「うそ!! 何で?!」
などと、ついつい大きな声で叫んでいるではないか。

 我々の世代は、
お正月の芸能人かくし芸大会で死ぬほど見たけれど、
今の子供たちにとっては、まるっきり初めて見るもので、
返って斬新なマジックに見えるらしい。

 かく言う私も、テレビでしか見たことがなかったせいか、
実際、最前列で水シブキをビシバシ浴びながらライブで見ると、
思わず、「おお!」と歓声を上げてしまうのだった。

 私は、土産物屋で、
ここのオリジナルキャラクター「ニャンマゲ」の柄のバンダナを買った。
 25年位前から、
ディズニーリゾートに行くたびに、
毎回、一枚づつ記念のバンダナを買っているが、
今回も、そんなテンションでニャンマゲバンダナをコレクションに加えてしまった。

 私がそんなテンションになるくらいなのだから、
子供たちも相当盛り上がっていて、
じじばばからそれぞれもらったお餞別各2,000円で、
木刀やら手裏剣付きチェーンやら、名前刻印付きキーホルダーやら、
お気に入りのものをがっつり買っていた。

 ディズニーのように完璧でもなく、
ツッコミどころ満載ながらも、
人をこうも高揚させてしまう日光江戸村って、何なんだろう。

 入場料が、ちと高いな、とも思ったが、
これだけ一家揃って同じもので笑い、盛り上がったのだから、
安いものだと思う。


 さて、予定していた午後3時。
 また巡回バスに乗って、駅前の温泉ホテルに向かった。

 大きい。

 「わあ! 僕たち、こんな凄いところに泊まれるの?」
と三男が叫んだとたん、
熟練の番頭さんに案内された。

 そこから先は、「温泉旅行サイコー」参照のこと。


 そして、温泉の大浴場で思いっきりさっぱりした後、
今回の旅行の最大の目的・和洋中バイキングへと突入する。




  (つづく)  


(しその草いきれ)2009.4.21.あかじそ作