「 備蓄ままならず 」

 新型インフルエンザが一旦収まっているように思えるが、
過去の例から見ると、第2波・第3波の方が、もっと怖いように思える。

 特に我が家は、
子供たちがみな喘息持ちで、
現に長男は、幼稚園の時、
インフルエンザから肺炎を併発し、
長く入院した、という経緯もある。

 そういえば、母方のじいちゃんの父親も、
若くしてソ連風邪で亡くなったというし、
用心に越したことはないと思う。


 今回、関西方面で最初に新型インフルエンザの感染がわかったとき、
ちょうど中3の次男が大阪・京都に修学旅行に行っていた。
 更に、埼玉で感染者が見つかったのだが、
その人の住所は、長男の学校の近くで、
思いきりその地が地元だという友人が大勢いて、
また、長男も、彼らと毎日仲良く遊びまくっていた。

 今回のことで、
どこかでひとりでも感染者が出れば、
人から人へ、物凄いスピードで伝染し、
あっという間に自分のもとへとウイルスがやってくる、
ということが、よく分かった。

 これが強毒性であったら、
うちの子供たちの何人が生き残れるだろう?
 いや、子供のことなど言っている余裕があるだろうか?
 普段から疲れがたまっている夫や私が、
一番先にやられてしまうかもしれない。

 これから冬になる南半球で、
どんどんこのウイルスが強毒化していったとして、
その後寒くなってくる北半球では、
どういうことになってくるのだろう?

 ワクチンが早めに出来てきそうだということだが、
一体、こっちにまで回ってくるんだろうか?

 一応、今年は受験生がいるから、
家族揃ってワクチンを打っておこうと思っているのだが、
我が家のように、学生の多い世帯は、
教室や電車で病気をもらってくる確立も自然と高くなる。
 ひとつのクラスに30人強の子供がいるとして、
その子のそれぞれに2〜3人位の同居家族がいて、
その家族も、あちこちに通勤通学して、
あちこちからいろんな菌を集めてきている。

 【30人以上×3人位】
と、単純計算したとしても、
90人から100人の人間が持ち寄ったウイルスや菌が、
ひとクラスに集まり、
締めっきりの教室に充満するのだ。

 おお、これは、まずい。


 今のうちに、うちの虚弱体質軍団に抵抗力をつけないと、
本当にやばいではないか?

 マスクをつけると言ったって、
マスクの内側を手で触ったり、
わざわざマスクを持ち上げて咳やくしゃみをする人もいるから、
あてには、ならない。

 やはり、基本は、手洗いうがい、抵抗力だ。

 そうそう、「マスク」といえば、
関西でマスクが売り切れ続出で手に入りにくくなっている、
というニュースを見て、その後、ドラッグストアに買い物に行くと、
埼玉のマスクも、すでに品切れだった。

 みな、急にあせって買い占めたらしく、
おとといまで山積みだった大箱入りのマスクが、
完全に売り切れてしまっていたのだ。

 そしてまた、騒ぎが落ち着いてきたつい最近、
マスク売り場には、またもや箱入りのマスクが大量に積まれ、
誰もみな、興味なさそうに素通りなのだった。

 何ナンだ、このあきっぽさ!
 この楽観性と、ご都合主義!

 それでまた、冬になると、
みな、一斉に神経質になって、
いろんなものを買い占めるのだろう。

 いや、だから!

 石油ショックの頃にトイレットペーパーの取り合いをした母の世代に続き、
15年前の米不足の時の米の取り合い、
そしてまた、マスクを奪い合って買う事態。

 何か、いつの時代も人は、
急に慌てて買いためて、そしてまた、すぐに飽きるようだ。

 こんなことなら、いざと言うときに慌てないように、
今からいろいろ備えておけばいいのだ。

 インフルエンザ対策だけでなく、災害対策として、
少しづつ備蓄しておけば、
いろいろなところでパニックにならずに済むのに。


 我が家でも、数年前から、
いつライフラインが途絶えて、キャンプ生活に入っても大丈夫なように、
いろいろ備えておこうとしているのだが、
いかんせん、うまく揃わない。

 いや、揃ったと思ったら、
いつの間にか消えて無くなってしまうのだ。

 安売りのたびにコツコツ買いためた、
インスタントラーメンや乾麺類、
レトルト食品に、缶詰の数々、
ミネラルウォーターに、乾パン、
紙おむつに生理用ナプキン、
トイレットペーパーにラップやビニール、
調味料に各種薬、
灯油に電池に冷凍食品。

 「これだけあれば大丈夫!」と言って、準備するそばから、
「お母さん腹減った」
と、一年中言ってくる息子たち。
 「今は何も無いのよ」
 「じゃあこのラーメンはダメ?」
 「ああ、それは非常用」
 「ああ、でも腹へって死にそう」
 「じゃあいいわよ、ちょっとだけよ」
 「やった、サンキュー、いただきま〜す」
と、いうわけで、
一生懸命揃えたインスタントラーメンやレトルト食品が、
あれよあれよと言う間に消費され、
やっと揃えた備蓄食料も、
すでに底をついているという、ばかげた事実!


 備蓄のスピードより、消費のスピードの方が、
断然早いのだった。


 これじゃあ、本当にライフラインが途絶えたら、
我が家は、すぐに飢え死にじゃないか〜!
 箱で買っておいたマスクも、
気がつきゃ子供が給食当番や掃除用に学校に持て行ってしまって
残り少ないし〜〜〜!


 最低2週間分、およそ2か月分の備蓄が必要だと言われているのに、
このありさま・・・・・・

 備えりゃ使われ、備えりゃ使われ・・・・・・

 いつになったら満タンになるのだ、うちの備蓄は・・・・・・


 道は、・・・・・・まだ遠い!




    (了)

(しその草いきれ)2009.6.16.あかじそ作