『長男の嫁かつ長男の母の主張』
  テーマ★長男の嫁


結婚している長男の数だけ、長男の嫁がいる。
そのうち何割かの人たちが、「本家」とか呼ばれて、
何だか大変なことになっているらしい。
 かくいう私も「長男の嫁」だが、分家も分家、
もう、どうでもいいくらい分かれに分かれちゃった、
ものすごく幹から離れた葉っぱの血筋なので、
本家の苦労は、しなくて済んでいる。
 ただ、生物学的には、本家も分家もないのだから、
やっぱりダンナの家のDNAを継いだ子を産んで、
一応、ダンナの祖先のお役には立てたと思う。

 それにしても、
「○○家の血を絶やさない」とか、
「○○家の墓を守る」とか、
何だか凄いな、と思う。
 「種の保存」をシステム化してしまう強烈な文化!
「後継ぎ」だ「本家」だと、生まれたときから本人の意
志など、
まるで無視した、かなり強引なシステム!
 
「長男よ、家をやるから、親を看よ」という、
絶対的、そして、交換条件的家庭教育!
「その嫁は、夫の家に、尽くすの当然」
という、無言の契約!

 介護保険もマッツァオな、恐ろしく緻密なシステム。
それは、人間の依存心を巧みに利用した、
脅迫的な胸ぐらつかみ合いシステム!
 これは、「旧システム」と化しているとはいえ、
まだ厳然と存在しているという事実!

 最近の流れとしては、「娘の夫」が、
旧システムの「長男の嫁」的な役割を担っているよう
だ。
「結局、下の世話から何から、どうせ女にやらせるんで
しょう?!」
という、女たちの開き直りから、
「それなら他人より娘に看てもらいたいわねえ」
と、母は思い、娘とて
「ママ、将来面倒見るから、子育て手伝ってね」
と、全体的に思っているふしがある。
 
 私は、この新システム「母娘互助システム」は、
非常に合理的だと思う。
 でも、男だって仕事ばっかりしてないで、夜中に起き
て、
親のトイレの付き合いくらいしようよ、とも思う。
「明日仕事があるから」
なんて言い訳は、通用しない。
 女にだって仕事はあるのだ。

 年寄りが年寄りを介護している現状は、本人にとって
は、
地獄のような生活だと思う。
 力仕事に、睡眠不足、経済的な困窮や、精神的な疲
れ。
 
今現在も、無数の閉じられた部屋の中で、
眠ることすら許されない、疲れきった孤独な介護者が、
疲れを通り越した絶望の中で、心まで病みながら闘って
いるのだ。
 彼らは、疲れ果て、助けを呼ぶ声も出せずにいる。
もし、そのうちの誰かが、病んだ心で、
自分の愛する者をあやめてしまったら、
我々は、その介護者に、何の罪名をつけるのか。
 罰せられるべき者は、その状況を放置した者、つま
り、我々すべてなのではないのか?

 政府は、たくさんの良質な介護士を、至急、養成すべ
きだ!
 介護士は、仕事がしやすいように、パート制にすれ
ば、
家庭内で眠っている労働力も、かり出せる。
 人海戦術で、ひとりひとりの疲れを癒す時間が作れ
る。 

 今すぐ実行! すぐ実行!

でないと、
「子供を4人も産み育て、しかし、それが全員男児」
「頼れる娘がおりませぬ」
という私の老後は、悲惨だっつーの!
 ウンチ垂れ流しだっつーの!

男も介護!
みんなで介護!
ひとごとじゃ、ないっつーの!



           (おわり)
2001.11.9 作:あかじそ