子だくさん 「子育て第2章」
 
 
 お盆で仕事を続けて休んでしまった分を取り返そうと、
8月後半は、休み返上で毎日配達の仕事をしていた。
 それでも、7月後半から8月前半にかけて、
配達の量ががっくりと落ち込んでいたおかげで、
午前中にはちゃんちゃんと仕事は終わり、
午後は、自由に時間を使えていたので、
あまり疲れている自覚は持っていなかったのだ。
 
 ところが、8月の二十日前後から、
急激に配達の量が増え、
「休み無し」が結構体に響いてきた。
 
 若い頃痛めた腰や、
15年前の左手腱鞘炎、
左右の足首の靱帯損傷あと、
数年前の右手小指の骨折箇所、
先日バッティングセンターでひねった背中、
首の椎間板ヘルニアなどが、
一気に痛み始めた。
 
 もう、にっちもさっちもいかない。
 仕事中は気が張っているから何とかなっているが、
仕事が終わると、もういかん。
 
 体中の首という首(首と手首足首)が痛くてかなわない。
 晴れの日はまだいいが、
曇りの日は、もう、だめ!
 
 テレビの天気予報で「花粉症予報」と並んで、
「関節痛予報」というのをやっているのを見たことがあるが、
前なら「なんだ、それ」と笑えていたのに、
今では、
「明日の関節痛は、どうなんだ?!」
と、食らいついて見てしまう。
 
 このことを、実家の母に言うと、
ひとこと、
「疲れてるんだよ!」
と言われた。
 
 確かに。
 
 「疲れると、悪いところが一気に出てくるんだよ」
と言う。
 
 ほんとだ、それ。
 
 注意力散漫で、
小さいころから怪我ばかりしていたから、
私は、体じゅう古傷だらけで、
この「悪いところ」という爆弾を、たくさん持っていることになる。
 
 そう言えば、
体だけでなく、心の方の「古傷」も、
知らない間にあちこちうずいているではないか!
 
 ず〜〜〜〜〜〜〜っと、うすら憂鬱だし、
ここのところ、心配症にも拍車がかかっていた。
 子供の歩く後を追いかけながら、
くどくどといつまでも注意事項を繰り返し言い続け、
みんなに「しつこい!」と煙たがられていた。
 
 ああ、これも、
「疲れると、悪いところが出てくる」の一環か。
 
 夏休みが終わり、
学生4人が学校に行った後、
3歳の長女と二人で、シンとした茶の間に座り、
「今日は半月ぶりの休みだ」と思ったら、
急に、冷静になれた。
 
 野球部の三男の弁当水筒、ジャグ当番などで、
夏休み中は、ずっと朝4時起きだった。
 
 家事をすべて終わらせ、
寝るのは、相変わらず深夜で、
睡眠時間は、3時間あるかないか。
 6時間以上寝ないと体調を崩す体質なのに。
 
 これが2か月近く、ずっと続いていた。
 その間、仕事は無休。
 
 これか。
 
 疲れてたんだ。「寝」が足りなかったんだ。
 「気」が張り続けだったんだ。
 
 ああ、今までの夏休みは、
子供が連日わんさか家に居て、
大量の昼ごはんやら、騒音に悩まされていたけれど、
実は、そんなのは、
シンプルで幸せな一時の喧騒であり、
笑い話で済むお話だった。
 
 しかし、子供が大きくなってくると、
夏休みの内容もがらりと変わり、
運動部の連日の早起きと弁当・ジャグなどのハードな支度と、
試合や大会に向けて
浮かれたり落ち込んだりする子供たちの話を根気よく聞き、
励ます毎日。
 更に、「遊びデビュー」した高校生の、
「補導」やら「架空請求トラブル」やらのフォローを、
初めて体験し、慌てふためき、
厳しく、そして、包み込むように諭す作業がある。
 
 はっきり言って、
家にいるのは、小学生の四男と3歳の長女だけ。
 
 静かなものだ。
 
 二人とも小食なので、
食事の世話も、大したことなかった。
 
 いつの間にか、末っ子のおむつも取れ、
子供全員の下の世話は、終わった。
 食事も、
中学生は、昼は弁当、夕飯は部活の後だから8時近くになり、
私や小さい子の食べた後で、
ほとんど一緒に食べられない。
 高校生にいたっては、
昼も夜も友達と外で済ませてくることが増えて、
家族そろって食卓を囲むことがめっきり減った。
 
 これが、夏休みの第2ステージか。
 
 家に子供の姿の無い夏休み。
 全然居ない。
 
 居ないけれど、
子供にまつわるトラブルは、しょっちゅう発生し、
そのたび親が一生懸命に対応する。
 これが、次の子育てのステージだ。
 
 今までの、体動かしてナンボ、という子育ては終わり、
今度からは、デンと腹をくくって、
子供の自主的な育ちのフォローをするのだ。
 
 本当に親になれるのかどうか。
 ここからが正念場だ。
 
 「案ずるより産むが易し」とは言うが、
5人産んでもまだ、
「案じて」ばかりの「気苦労性」で、肝の据わらない母だった。
 
 しかし、これからは、
「案じるエネルギー」を「受け止めるエネルギー」に変換して、
子育て第2章をやっていこうではないか。
 
 ぶっ倒れるまで駆け出しまくるのは、もうやめて、
いつ何どき、子供から難しいパスを回されても、
バシッとしっかり受け止めて、
いい球を投げ返す力を温存しておこう。
 
 余力を持って暮らしていこう。
 
 
 
   (了)
 
 
 (子だくさん)2009.9.1.あかじそ作