「 青空で帳消し 」



 雨の日も、雪の日も、
台風の日も、配達。

 そう、風の日も、風邪の日も。

 半べそで頑張らなければならない日もあるけれど、
今日のような爽やかな秋晴れの日は、
そんな鬱憤を一掃してしまう。


 青空は、不思議だ。

 長く苦しい日々の中にいても、
天井知らずの青空を見上げれば、
「ま、いっか」
と思えてしまう。


 肉体の苦痛は、
精神の苦痛を呼び、
精神の苦痛は、
肉体の苦痛を呼ぶ。

 それならいっそ、
そんな個人の事情など、
一切おかまいなしの青空に、
全部きれいにしてもらおう。

 難しいことを考えたり、
あれやこれやと余計な詮索をして、
自分から苦しみを作り出してしまうような人間は、
理屈抜きで青い、あの空を見上げて、
頭ん中、空っぽにしようではないか。

 生まれたものは、やがて死ぬ。
 だから、その間、生きるのだ。

 たった何十年かの短い時間を、
どう生きようと一瞬のことだ。

 「しんどい」とか、「きつい」とか、
そんな気持ちも一瞬のうちの更に一瞬なのだ。

 あの青空を見上げて、
帳消しにしよう。

 人への疑い、恨み憎しみ、
そんな自分の首を絞めるだけの感情など、
もう、捨てよう。

 マイナーな感情は、すべて、青空で帳消しに。

 澄みきった空気で、心を洗おう。

 もう、理屈抜き!!!



  (了)


(話の駄菓子屋)2009.10.13.あかじそ作