「 6畳一間収納無し 


 中3の次男の高校受験が迫ってきている。
 公立高校受験に関しては、
中学の先生が手続きを進めてくれるが、
私立に関しては、親が自分でどんどん動かなければ、
どこにも入れない。

 現在、高校2年生の長男が受験の時も、
私は、何も知らず、
三者面談の時に、先生に
「私立に親子で行って、確約とってきていますよね?」
と聞かれ、
「なんすかそれ?」
となり、
「急いで成績表持って、親子で私立に行って来てください!」
と、せかされた覚えがある。

 しかし、今年は、
私立のシステムは知っていたものの、
長女の幼稚園の入園手続き等でバタバタしていて、
まだ「確約取り」に行っていない。

 やばい。

 とにかく、
子供が多くてしょっちゅう行事や何かが
重複しまくっているので、
頭の中が、ごっちゃごちゃなのだ。

 頭がよくて、整理上手な人なら、
たくさんの情報をうまく管理し、
戸惑うことなく保護者の役目をサクサクこなすのだろうが、
私のように、病的に情報管理音痴だと、
もう、ダメだ。

 10月の末から次男の学級閉鎖に引き続き、学年閉鎖があり、
それが終わったと思ったら、三男の学級閉鎖、
そして、それがまた明けたと思ったら、
四男の学級閉鎖で、
もう、我が家はちょっとした秋休み状態なのだ。
 誰が「出」で、誰が「出勤」か、
全然わからなくなってきている。

 仕事の忙しさに加え、
子供の病気やけがやトラブルがぶっ続けで巻き起こり、
末っ子の幼稚園の入園手続きも、
頭爆発状態で何とか終わらせたところだ。

 この上、次男の受験の手続きだの何だので、
もう、限界を3まわり以上超えている。

 洗濯機は壊れるし、
新しい洗濯機は使いこなせなくて連日パニックだし、
10年以上使い込んだオーブンは逝ってしまったし、
新しいものを買うお金は無いし、
も〜〜〜う、無理だ。

 これ以上の情報は、
「6畳一間収納無し」の私の頭には入らない。

 キャパシティを無視した新情報の洪水に、
もう、ダメ!
 全然できない!
 何にもできない!!

 私の脳は、完全にフリーズしてしまった!

 「6畳一間収納無し」の狭い私の脳内に、
家族7人が居候していて、
そのうち、自分の脳を使って考える人は、
私しかしないだ。

 みんな、家族じゅう、
自分らのすべての段取りを
私にすべて丸投げだ。

 もう、無理。
 これ以上、完全に無理。

 狭い!
 きつい!
 圧、尋常じゃない!

 脳圧、パンパンだから!!!

 助けろ!
 誰か、家族、
私を助けろや〜!


 そんなこんなで、
夕方から夜にかけて
目の焦点の合わない状態で
茶の間でぼんやり座っていると、
明日、就学旅行に出発する長男のことを思い出した。

 旅行中の食費と小遣い、合計2万円也をください、
と言われていたんだっけ。

 長男は、明日の早朝の出発に向けて、
夜の9時にとっとと寝てしまったので、
私が長男のかばんの中に入っている財布を取り出し、
そこに2万円を千円札20枚にして入れた。

 おっちょこちょいの長男が、財布を落としたり、
カツアゲされて全財産巻き上げられないように、
4つの財布に5千円づつ分けて入れて、
かばんに入れておいた。

 (相変わらず過保護な馬鹿母やってしまった。
 だから、息子がいつまでも子供っぽいのだ)

 と、ひとり自戒する。

 すると、かばんのポケットに、
以前私が使っていたポーチがポツンと入っているのを見つけ、
「あれ?」と、中をのぞいてみると、
何と、
なな、何と、
嗚呼、
ひ……
ひ……
ひ……
避妊具が入っているではないか!!!


 ああああああああああああああああ………

 「6畳一間収納無し」!

 もう入らないから!!!!!

 私の頭には、
これ以上何も、
もう、刺激も情報の一滴も、
入らないって言ってるのに〜〜〜!!!

 こんな大津波が急にやって来たら、
今までの40数年の脳の情報、
全部流れ出しちゃうって〜〜〜〜〜!!!


 うお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!
 うお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!
 うお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!



  (了)


(子だくさん)2009.11.10.あかじそ作