「 受験終了`10 」


 やっと、やっと、
や〜〜〜〜〜〜〜〜っと、次男の高校受験が終わった。
 
 受験当日、次男が帰ってきたので、
私と長男が一緒に自己採点してやろうと問題用紙を受け取ると、
どの教科も一切書き込みがなく、
数学などでも、計算した形跡が何もない。
 
 きれいなものだ。
 
 で、夕刊に答案が出たので、
答え合わせするため、
「なんて答え書いた?」
と聞くと、
「覚えてないな〜」
と言う。
 
 さっき解いた問題だぞ!
 何にも覚えてないの〜?
 
 せっついて、何問か思い出させたところ、
数学は、冒頭の基本的な計算問題5問ほどしか解けず、
残りは、全部白紙で出したと言うし、
理科などは、「太陽が公転している」と書いたり、
ありえない間違いをしていた。
 
 「みんな『サービス問題だ』って言ってた」
という「日食」についての問題も、
きれいに間違っていた。
 
 その問題とは、
「日食時の、太陽と月と地球との位置関係」
で、太陽と地球があらかじめ描いてある答案用紙に、
月の位置を書き込む、というものだった。
 小4の四男に試しに聞いてみたら、
「太陽と地球の間に月」
と当然のように答えたというのに、
当の次男は、地球の後ろ側に月を描き込んできたと言う。
 
 おい〜〜〜!!!
 
 じゃあ、太陽を隠していたのは、誰ですか、っての!
 お前は、月から日食を見たんですか〜?
 地球が太陽を隠しているのを見たんですかね〜?!
 
 も〜〜〜〜お!
 
 それに、太陽が公転て何だよ!
 公転ってのは、惑星とかが太陽の周りを回ることだろうが!
 太陽がどこの周りを回ってるっていうんだよ?!
 お前か?
 
 太陽も、惑星も、
みんな、みんな、み〜〜〜んな、
お前の周りを、ぐるんぐるん回ってるってか?
 
 あ〜あ、そうかもしれないね。
 ある意味、正解だよな!
 自己中心的だもんな〜お前さんはな〜!
 
 んも〜〜〜〜う!
 
 2年間も毎日汗だくで配達して、
その稼ぎを全部、次男の塾代にはたいて、
それで、この結果か〜〜〜い!
 
 あほ〜〜〜〜〜!!!
 
 長男も、
「太陽が公転する、なんて書くやつが受かるわけないだろ!」
と、次男のバカぶりに呆れていたが、
何より私が頭に来たのは、
本番のテストだというのに、
数学など、解いてみようともしないで、
ちらっと見ただけで、
「出来ねえ!」
と捨ててしまったところだ。
 
 なぜ間違ってもいいから、
とことん粘って解いてみないのだ?!
 戦わずして、負けを認めたのだ?!
 なぜ、きれいに白紙のまま提出した?!
 
 それでもお母さんの子か?!
 負け戦でも、最後まで全力で向かっていくのが
お母さんの生きざまだってのに、
お前は、今まで何を見ていたんだ?!
 
 馬鹿野郎〜!!!
 
 
 「こりゃ、落ちたな・・・・・・」
 
 家族の誰もがそう思い、
問題集を揃え直すなど、二次募集の準備を始めたが、
本人は、
「ちょっと〜。今日ぐらいは休ませてよ〜。疲れたよ〜」
などと、ごろごろして、
あっという間にいびきをかき始めてしまった。
 
 長男は、怒るし、
弟たちは、呆れるし、
夫は、相変わらずノーコメントだし、
私は、がっかりするやら、神経がとがるやら、
もう、やんなってしまった。
 
 それから数日、
二次募集に向けて、連日問題集を一緒に解いてやったのだが、
まるでやる気が無く、
「何だかんだで受かるんじゃね?」
みたいな事を言うので、完全にあったまに来て、
「うむむむむむ……うぎゃ〜〜〜〜〜!!!」
と、次男に掴みかかっては、息子たちに取り押さえられた。
 
 おんまえ〜〜〜、
なんなんだあ〜〜〜、
そのふざけた態度は〜〜〜。
 
 私立なんて通わせる金は、ねえんだぞ〜〜〜!!!
 だから2年も無理して塾行かせてたのに、
よくよく聞いたら、
塾でもいつも寝てたっていうじゃねえか〜〜〜〜!!!!!
 
 うが〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
 
 もう、疲れ果て、
どうでもいい、もう、どうでもいいよ、
と、ボロボロの精神状態で迎えた合格発表の日、
気が気でない中、仕事に行く準備をしていたら、
友達と一緒に発表を見に行っていた次男から電話があった。
 
 「お母さん・・・・・・・
ぼく・・・・・・・
やっぱり・・・・・・」
 
 と、ポツリポツリ言う。
 
 「ああ、もういいよ。次頑張ればさ」
と言うと、
 
 「受かっちゃってました〜〜〜!!!」
と言うではないか?
 
 「は? 受かった?」
 「うん! 友達も受かった!」
 「お、おめでとう・・・・・・友達にもおめでとうって言って」
 「はぁ〜〜〜い。じゃ〜ね〜〜〜」
 
 何なんだ?
 受かったの?
 
 太陽公転してるのに?
 月から日食見てたのに?
 数学ほぼ白紙なのにぃ?
 
 おそらく、得意の英語と国語が、助けてくれたようだ。
 それに、内申書。
 何でもかんでも立候補する次男は、
委員会の委員長やら、合唱コンクールの指揮者やら、
誰もやりたがらないような役職をたくさんやっていた。
 ほとんど他の部員の足を引っ張っていた吹奏楽部のコンクールでも、
みんなのおかげで県大会に出場できたし、
得意の図画工作で何度も選ばれて出展されていたのも良かったらしい。
 
 勉強以外で、受かっちまった。
 
 ともあれ、合格したらしい。
 次男が前から「ここしか行きたくない」と決めていた、
第一志望の公立高校に。
 
 ああ・・・・・・。
 全然頑張らずに、マイペースで目的を達成しやがった。
 
 なんか・・・・・・
 嬉しいけど・・・・・・
釈然としないなあ・・・・・・・
 
 頑張ってる私が、いつまでも日の目を見ず、
頑張らない者が、楽々行きたい方向へ進むのは・・・・・・
 
 まあ、いいか。
 出来の悪い息子が、志望校に受かったことが、
「日の目を見る」ってことで。
 
 頑張らなくてもいいのかなあ・・・・・・
  
 人生、適当に、
力を抜いて、
楽に、体を流れにまかせて行くことが・・・・・・
それがいいのかなあ・・・・・・
 
 そういえば、夫も、頑張らないタイプだし・・・・・・
 
 何だかな〜〜〜。
 
 ナンダカナ〜〜〜〜〜!!!
 
 
(了)
 
(子だくさん)2010.3.2 あかじそ作