「 サムライ三男 」 |
人間、暇だと、無意識のうちに、 無理やり「悩み事」を探し出して、 くだらないことに執着するようになり、 自分で自分を悲劇の主人公に仕立て上げ、 自己陶酔的にグジグジ悩みのドツボにはまってしまうものだ。 しかし、逆に、 同時多発的にいくつもの問題が発生すると、 そのひとつひとつについて、そんなに深く悩まなくなるから不思議だ。 つい最近も、そんな風に、 いくつもいくつもの問題が同時多発し、 結果、一個一個について、 自分なりにクールに対応することができた。 「同時多発的ストレス」=「ノンストレス」 ということか。 今、中1の三男が、学年で有名なワルたちと闘っている。 これは、「一方的ないじめられっ子だった」時期(小4)から、 「ワルたちから悪事を強要され、怖くて言うことを聞いてしまい、連日担任に家庭訪問される」(小5) といった時期を経て、 「『脅されても悪い事はしない』とワルに宣言したことで連日ボコボコにされる」(〜中1秋) という時期があり、 そして、現在、 「先生たちにも【実は、いい子】と理解され始め、ボコられても悪に屈しないと親子で決めた」 という段階だ。 ボコられるのは、イヤだが、もう実際、ボコられ慣れてしまうほど 連日ボコボコにされているから、それほど怖くは無いと言う。 それよりも、本当に怖いのは、 「嘘の噂を流され、自分が悪役にされてしまい、みんなにシカトされてしまうこと」 だという。 あまりに三男が我慢強いため、 奴らもあの手この手で精神的苦痛を与えようという作戦に出始めている。 三男だけでなく、 三男の学年には、奴らの被害者がたくさんおり、 ワルたちにやられて、相当数の生徒が不登校になってしまっているのだ。 そんな中においての三男の健闘は、手を叩いて褒めるに値するほどだと、 親の私も誇りに思っているし、部活の顧問にも人物を買われている。 連日、三男と、その親の私は、 ワルたちの陰謀と、それにうまく対応できない教師のおかげで、 一方的に悪者扱いされ、 理不尽にも、モンスターペアレント相手に頭を下げさせられていた。 三男の体じゅうの怪我を手当てし、 周りに誤解されているつらさを乗り越えて、 やっと最近、親子で明るいところへを出てきた感じだ。 本当にしんどかった。 言い訳を一切しない、サムライのような三男は、 友達の罪も黙って引き受けてきてしまうほどの男気の持ち主で、 これについては、「エライ」というべきか、「馬鹿」というべきか、 悩むところだが、 この男気は、誰が何と言っても、私ゆずりなのだから、 いかんともしがたい。 本当は誰よりも小心者で、かなり弱虫のくせに、 誰かに迷惑を掛けることは決してしたくない、自分の恥だ、 と思っているのが、よくわかる。 息子よ、一緒に頑張ろう。 子供のことより自分を最優先してしまう身勝手な親たち、 その親に育てられ、愛情枯渇からワルになってしまう子供たち、 何かあるとすぐに親に言いつけて、自分で解決しようとしない軟弱な子供たちと、 自分の子の立場からしか物を考えられないモンスターペアレンツ、 彼らへの対応に疲れ果て、ことなかれ主義となった教師たち。 そんな今の、「学校」というゆがんだ社会の中で、 右往左往する「要領の悪い子」が多数いる。 何かあるたびに学校へ怒鳴りこみ、 「裁判に訴える!」と泣き叫ぶ親たちの機嫌を取ることを、 学校は、最優先事項として考えているし、 ワルの親は、もっとたちの悪い、話の通じない大ワルだったりするので、 教師は、大ワルへの対応を怠り、 中途半端な成長途上のやんちゃ坊主のところへ罪を全部押しつけ、 その親に「相手の親のところへ行って謝っていただけませんか?」 と頼みに来る。 先生も同情に値するほど大変だが、 公平を欠いた教育現場で「信頼」というものを学び損ねた子供たちも不幸だ。 だから、せめて、家庭の中だけは、 地盤のしっかりしたところにしたいと思う。 「オテントさまは、いつも見てるぞ」 「その場に居なくても、いつも我々家族はお前の味方だ」 「問題を解決する方法を一緒に考えよう」 と、言おう。 家族の中でよく話し合って、 そして、ドンと構えて、 子供がやがてひとりで世の中を渡り歩けるように、 心に体力をつけてやりたい。 ああ、サムライ三男よ。 今は、砂漠や荒波のような毎日でも、 お前には、大好きな野球がある。 顧問の理解がある。 家族の支えがある。 悪に負けぬほどの、善のパワーが、 お前の細い背中を支えているのだ。 バットという刀を脇に差し、学校と言う荒野をさすらうのだ! グラウンドという戦場で、名をあげるのじゃ! ゆけ! 学校へ! 母は、毎朝、お前の肩に、 火打ち石を打ってやりましょうぞ! (了) |
(子だくさん)2010.3.9. あかじそ作 |