「 自分のスタイルを生きる 」


 配達の仕事をしていると、
毎日、いろいろな家を見ることになる。

 毎日の配達物によって、
その家の稼業や子供の学年、
趣味や生活習慣なども自然とわかってしまう。

 そんな中、いつも思うことがある。
 人が、スタイルが、家を作るのだ、と。


 例えば、こんな家がある。

 親子三代で医者をやっていて、
立派な注文住宅に住んでいて、
高級車が2台も3台も停まっているのに、
玄関先や庭先にゴミが山積みになっている家。
 大金持ちのゴミ屋敷。

 こんな家もある。

 今にも朽ち果てそうなボロアパートなのだが、
玄関や物干し台などに、
手入れの行き届いた花がたくさん飾ってあり、
センスのいいおばあさんが一人で清潔に住んでいる。
 最小限の物しか持たず、
しかし、季節を楽しみ、暮らしを味わい、
人生を爽やかに生きている女性がいる。

 更に、こんな家もあった。

 凄まじくボロボロのアパートの1室なのだが、
まるでそこの一画だけハワイなのだ。
 玄関先にサーフボードがいくつか並び、
外廊下にゆるりと一本張ったロープには、
ウエットスーツや色あせたTシャツが、
ハンガーで無造作に干してあり、
吹き抜ける風にハラハラと揺れている。
 思いきり開け放った玄関ドアから中をチラリと見ると、
土間には、ビーチサンダルが一組置いてあり、
横の壁に打ちつけてある釘には、
麦わら帽子がひとつ、掛かっている。


 経済力や、年齢、性別などは、関係ない。

 自分のスタイルを持って暮らしている人は、おしゃれだ。
 妥協をせず、自分のスタイルを貫いていると、
その家は、自然とおしゃれになる。

 心躍るような「テーマパーク」になる。

 ああ、憧れる。
 スタイルを貫いた暮らしに。

 いやらしく作り込んでいるものではなく、
金に物言わせて収拾したコレクションでもなく、
ただ、自分のスタイルで生きているだけで、
自然と集まる好みの道具や雑貨、
自然と出来上がってくるスタイルのある暮らし。

 それがおしゃれなのだ。

 ああ、自分のスタイルを持ちたい。
 自分のスタイルのテーマパークに住みたい。

 そこに暮らしているだけで、
毎日がキラキラ光って感じるような、
自分のスタイルに副った家に住みたい。

 そのためには、
自分のスタイルとは何か、を知ることだ。

 人に影響されることなく、
世間のハヤリにも流されず、
「自分、誰が何と言おうと、コレしかないっすから!」
というスタイルを見つけたい。

 元気も、やる気も、人生のキラメキも、
自分で起爆するものなのだから。

 起爆剤、それが、自分のスタイルっしょ!!!



    (了)

(しその草いきれ)2010.8.3.あかじそ作