「 前5年後5年 」


 自宅のプリンターの調子が悪かったので、
先日、夫が直したときのことだ。

 いろいろ設定をいじって、何とか直ったようだったが、
その時試し刷りで使った写真の何枚かが茶の間に落ちていた。

 四男が幼稚園の制服を着ているから、5〜6年前の写真か。

 いまや反抗期で、
もっぱら不機嫌な野郎どもがうろうろしているわが家だが、
当時は、長男小5、次男小3、三男小1で、
近所の子たちと一緒に、朝の登校班で一列に並んで、
みんなでカメラに向かってニコニコしてピースを出している写真もある。

 彼らは、みんな揃って中高生になってしまい、
もはや、私にこの写真のような屈託の無い笑顔を向けてくれることはない。

 その代わり、近所の子たちは、たまにオモテで会うと、
クールに、大人のような表情で、
「あ、こんにちは」
と、社交辞令で挨拶をしてくれる。

 カメラを構えて、子供たちを撮ったのは、
ほんの少し前のような気もするが、
子供たちのあまりの姿形の変わりように、
5〜6年という月日の恐ろしさをじわじわ感じる。

 そう言えば、その頃お腹に入った長女が、
もうすぐ5歳になるではないか。

 その、細胞単位の生物未満だったお腹の子に、今や、
「お母さん、もっと落ち着いて生きなさいよ」
などと言われているのだから、
子供たちにとって「5年」というのは、どれだけ長い長い年月なのか、
大人には、本当に、はかり知れない。

 みんな顔がまん丸で、
「お母さんお母さん」とぶら下がってきていた5年前。

 手がかかって手がかかって、物凄くしんどかったが、
今思うと、あれが「女の盛り」だったな、と思う。

 乳離れできていないモチモチのバブバブが、
みんなで寄ってたかって
「お母さんお母さん」と自分の取り合いをしていてくれたかと思うと、
こんな幸せなことはない。

 しかし、その時期は、同時に、
24時間、365日、1秒も休みなく、
グチョグチョで、ミソクソで、キーキーで、ギ―ギ―で、
ンンギャ〜〜〜、の、フンギ〜〜〜、の、
ギャオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!
なのだから、母親にとって、そんな、
ほっこりとした幸福感なんて感じている心の余裕なんて無いのだった。


 ああ、5年。

 前5年のこの変動は、凄まじいものがある。

 だから、ああ、5年。

 この後5年の変動こそは、
見逃さずに、味わいながら過ごしていかねばなるまいな。
 子育て最終章になるやもしれぬ、これからの5年を!

 長男12歳、次男10歳、三男8歳、四男5歳、長女細胞単位だった5〜6年前。
 終始ブレまくりの母でも、「お母さんは、いつも正しい」と信じていた子供たち。

 それが、知らない間に、

 長男18歳、次男16歳、三男14歳、四男10歳、長女4歳9カ月。
 全員に「ダイジョウブかな、この人」と、思われている最近。

 これからは意識して暮らそう、5年間を。

 長男23歳、次男21歳、三男19歳、四男15歳、長女9歳9か月。
 「やっぱり、俺らのオフクロ、サイコーだよ」と思われるように、
頭シャキーン、とクリアにして、目玉キラ〜ン、と見開いて、
母親復権を掛けてバリバリ意識カッピライテ生きて行こう。

 子育て最終章を〜〜〜、
骨の髄まで〜〜〜、
ずずずい〜〜〜っ、と、
味わい、しゃぶり、ねぶりまわし、
すすり倒してやろうじゃないか〜い!

 ひ〜〜〜〜〜〜っひっひっひっひっひっひっひっ!!!!

 って、
こえ〜〜よ!!!


  (了)


(子だくさん)2010.8.24.あかじそ作