「 母のジャニ歴なめんなよ 」


 息子たちが、
「お母さん、最近嵐が好きだよね」
と言うので、
「お前たちは何もわかってないな・・・・・・」
と、私は、大きくため息をついた。

 最近って言うけど、
嵐が嵐になる前の、十数年前に、
キンキキッズやX6の後ろで踊ってた幼い彼らを
この私が見逃していたと思うかい?

 嵐だけじゃないよ。

 上半身裸で大勢で踊っているジュニアの中の、
小さな小さなタッキーや翼くんに向かって、
「この子とこの子は、クルよ!」
と指さし、
「風邪ひくよ〜ほら〜、早く上着着られるように頑張んな」
と、つぶやきながらアカンボに乳をやっていたのだよ。

 「お母さん、ジャニオタ?」
と、息子は、聞くけど、
それは、違うでしょう?

 私は、彼らの成長を静かにずっと見守り、
母のような気持ちで「育てている」つもりなのだから。


 「あんなに青臭かったこの子が、やっと色気が出てきた。
 そうか、女を知ったか。淋しいけど、大人になったのね」
・・・・・・とか、
 「無邪気な笑顔に陰りが出てきたな。何かあったね。
 今が正念場だぞ、負けんなよ。私は味方だからね」
・・・・・・とか、
 「ああ、乗り切ったね。吹っ切れて、またひとつ大人になったよ。
 いい顔になった!」
・・・・・・とか、
ジャニーズの子たちそれぞれを、長い目で見守っている。

 子供が少年になり、青年になり、おじさんになっていく。
 何人もの人間の成長を、うなづきながら見ている。

 愛を以て。

 それを「ジャニオタ」とか「ハマってる」とか、
薄っぺらい言葉で表現して欲しくはないものですな。

 そりゃあ、最初は、私も中学生だったし、
たのきん世代だし、
キャーキャー言ってた時代もあったけど、
今じゃすっかり親心全開だもんね。

 たのきん時代から、ずっと心配してたよっちゃんも、
今じゃ好きなギターで身を立てて、
えらい出世じゃないですか!

 あんなに可愛かったあの子も、この子も、
今じゃおじさん俳優となって頑張ってる。
 ナーバスだったあの子は、
一時は舞台で頑張ってたのに、
やっぱり自分に負けて道を外しちゃったか。

 あの子も結婚した。
 あの子は、子供ができた。

 幼い少年たちの人生を丁寧に目で追って、
遠巻きにエールを送っているのだ。

 まるで光源氏が、
愛してはいけない義理の母を終生慕い、
彼女に似た幼女、紫の君を自分好みに育て上げたみたいな、
親子愛と肉の愛とが混濁した、禁断のエロチシズム。

 う〜ん、こいつぁ〜たまらん!
 やめられないね!

 だから、母のジャニ愛、なめんなよ!
 いくつもの人生を、抱きしめているのさ!



  (了)

(話の駄菓子屋)2011.1.18.あかじそ作