「 節電モード 」


 物凄くたくさん仕事をしなければいけないのに、
全然元気が無い時や、
まったく力が湧いてこないとき、
すべて投げ捨てて逃げ出してしまいたくなる。

 でも、そうはいかない。
 それは、やっちゃならぬ。

 となると、
「こんなにもぐだぐだなのに、こんなにも大荷物どうしたら」
と、重い気持ちになるのだが、

 ふと、こうしたらいいんじゃないか、と、思いついた。


 自分を節電モードに設定する。

 やらなきゃいけないことは、一応やる。
 でも、全力は出さない。
 あえて、出さない。

 うすら元気でうすら笑顔でうすら真面目に、淡々とやる。

 本気で仕事していることには違い無い。
 ただ、全力じゃない。

 これなら、なんとか、
何にもやる気が出ない時でも、
仕事を最後まで遂行できるんじゃないか。


 あるいは・・・・・・

 「自分は、多重人格である」という設定にして、
【いつも自分の中には居るんだけど、表面には出てきていない人格】
・・・・・・を呼び出してみる。

 「いつもは、頑張り屋の【あかじそちゃん】が表に出ているけど、
今日は、のん気でマイペースな【ピンクジソちゃん】が出てきている」
とか何とか思いこんで、
いつもならきっちりやらきゃ気が済まないことを、
適当にサラッと済ませてしまう。

 いつものあかじそちゃんなら
「そんなのダメだよ! ちゃんとしようよ!」
と、いちいちお堅いことを言うけれど、
ピンクジソちゃんなら、
「ま、いいんじゃない? 楽しくやろうよ、テキトーに♪」
と言えてしまう。

 嫌なことがあったり、つらいことがあると、
あかじそちゃんなら、真正面からがっつり受け止めて、
「つらい! でも、この状況を何が何でも、自分の力で何とかしなくちゃだわ!!!」

と、頑張りまくるけど、
凶暴で気の荒い【ブラックじそ君】が出てきたら、
「そんなもん関係ねえよ!」
とか言って、椅子のひとつも蹴り倒してから、
夜の街にでも繰り出すんだろう。

 それでいいじゃないか。


 人生、電池切れになるときがたびたびあるし、
充電が間に合わなくなる時もある。

 そんな時は、いちいち正面衝突で玉砕するんじゃなくて、
節電モードにして、3割の力で生きたっていいじゃないか。

 もう、自分というキャラクターに飽き飽きして、
嫌気がさして、死にたくなっちゃうような時には、
自分のキャラを取り替えたっていいんだ。


 要は、最後まで投げ出さず、
あの手この手でごまかしてでも、
人生をまっとうすることが大事なんだから。

 生ききることが肝心なんだ。

 力が出ないときは、無理に力を出さない。
 ちょっとだけ腰を上げて、適当に、しゅしゅしゅっ、とやる。

 節電の後には、きっと充電も完了し、
元気が戻れば、いつものキャラが戻ってくるだろう。

 それでいいじゃん。
 それで行こ!


   (了)


(話の駄菓子屋)2011.3.1.あかじそ作