「 続続・また腫瘍発見! 」


 検査の結果を聞きに病院に行った。

 先生は、こう言う。

 「検査が午後一番だったから、まあ、こんなもんなのかなあ・・・・・・
 あのですね、ホルモンというのは、
非常に環境や状況に影響を受けやすくてですね、
検査を受けた時間帯や、環境で簡単に数値が動いてしまうんですよ。
 で、今回の結果は、午後一番としては、まあ、ありかな、という数値でして、
まあ、大丈夫なんじゃないかな〜、という境界線の上にあるんですよね。
 今のところ、血圧も正常だし、尿から糖も出ていないし、
ま〜、大丈夫、でしょう、ねえ・・・・・・、という感じなんですよね」

 先生の前にあるパソコンのモニターを覗き込んで見ると、
表に検査結果の数値がずらっと並んでいる中、
いくつかのコマが赤く塗りつぶされている。
 つまり、異常値を示しているのだ。

 先生曰く、異常値といっても、
たとえば、34までが正常で35からが異常とするなら、
35.2、とかいう数値は、異常と言っても、
しばらくは、様子見でいきましょう、というレベルなのだという。
 実際の糖尿病の患者さんは、
もっとけた違いの数値を打ちだすものなので、
気にすることは無いでしょう、ということらしい。

 しかし、
「白か黒か」
「ちょっとでもグレーがあるのは、気持ち悪いんだよっ」
という性格の私は、
自分でも気付かぬうちに「合点のいかない顔」をしていたのだろう。

 先生は、
「気になるのでしたら、さらに精密検査を受けることもできますが」
と言うので、その語尾にかぶせるように、即、
「ぜひ受けます」
と言った。

 その精密検査とは、
前の晩23時頃、ある薬を飲んでから眠り、
朝食を抜いた状態で翌朝9時頃採血して、
血中のホルモンを見る、というものらしい。

 その薬というのは、
検査中の心身に受けたストレスを帳消しにしたりするものなのだろうか?

 そう言えば、検査中、
カーテンの向こうから「ハム食え」だの「ちくわ食え」だのずっと聞こえていて、
かなり精神的に揺れてしまっていた。
 この薬は、そういった精神的ストレスを除去してくれるものなのだろうか?

 さっそく、3月の20日過ぎ、精密検査の予約を入れて帰ってきた。

 薬局で薬の説明を受けて、驚いた。

 抗アレルギーの薬だったのだ。

 「アレルギー」と「ホルモン」?

 アレルギー体質と、血圧や糖尿をつかさどる臓器に関係がある、ということか。

 なるほど!!!

 私は・・・・・・、
というか、両親とも、
物凄く重症のアレルギー体質で、
私は、それをがっつり遺伝しているのだ。

 そして、両親のどちらの親戚にも、
高血圧と糖尿病患者がうようよいる。

 みんな、ひどいアレルギーで、
揃いも揃って、
顔色が悪く、車に酔い、感情的で、
大声でゲラゲラ笑っていたかと思えば、
ヒーヒー叫んで泣いて、異常に心配症で、
泣いて笑って叫んで怒って喜んで、と、まあ、
忙しいほどの情緒不安定、
最終的には、高血圧で糖尿病になり、心臓も悪くなる。

 つまり、アレルギーと、情緒不安定と、血圧と糖尿の疾病は、
ぜ〜んぶセットで与えられた【体質】で、
抱き合わせ商品だった、ってことか。

 前回の検査時、
花粉症等の各種アレルギー症状が起きていて、
その各種炎症が、ホルモンへ影響を与え、
異常な数値を出してしまったのかもしれない。

 だから、今回の精密検査では、
アレルギー症状を抑え、
純粋に血中ホルモンの内容を見る、ということなのだろう。

 なるほどなるほど。

 それにしても、
自分の大腸のポリープを疑って受けた検査から、
偶然、左副腎腫瘍が発見され、
それが、自分の血のルーツをどんどん明かしてゆき、
次々新たな展開が繰り広げられていくことに、
心配というより、
ある意味、ドラマを見ているような面白さを感じ始めている。

 どうする、どうなる?!

 我々一族の血の中に脈々と受け継がれてきた、
肉体と精神の絡まり合う格闘の歴史!!!

 今、私は、
血統の歴史の中で、
幕末の崖っぷちに立っている。

 ここで、歴史に流され、
高血圧や糖尿病になって、
古い体質とともに時代に飲みこまれていってしまうのか?

 それとも、血の歴史に新しい風を吹き入れ、
心と体の絡まり合った糸を一本一本ほどき、
「清々と整理された心と体」を一族にもたらす、
維新の志士となるのか?!

 どうだ?!
 どうなんだ、あたしよ!!!!!

 そりゃあ、もう、
 やるっきゃあ〜、ないでしょう!!!
 前へ前へ!!!

 心臓を押さえて道端で死んだおじちゃんや、
糖尿で好きなモノも我慢我慢だったばあちゃん、
私は、あなたたちの苦闘を無駄にしません!!!

 健康な子孫の繁栄のために、人生を捧げます!!!


 さて、精密検査の日時が近づいてきたある日、
東日本に未曾有の大地震が起きた。

 連日の計画停電で、
商店も、病院も、やってたりやってなかったりだ。

 果たして、検査はできるのか?
 病院は第何グループなんだ?!

 かくして、検査の当日、早々と病院の入り口に並ぶと、
何とか診察や検査はやってくれる、とのことだった。

 やれやれ、
前夜にすでに例の薬を飲んでしまったので、
これで検査が停電でできなくなったら、
薬を処方してもらうところからやり直さなければならず、
仕事との調整が大変になるところだった。 

 採血は、1分で済んだ。

 結果は、翌週に出る。

 そして、結果を聞く当日、
その日も何とか運よく計画停電の時間帯とかぶらず、
診察してもらえることになった。

 結果は、こうだ。

 左副腎の腫瘍からは、
高血圧や糖尿病を引き起こす良くないホルモンが、
微妙だが、確かに出ている。

 異常あり、である。

 しかし、それは非常に微量で、
今のところ、高血圧や糖尿といった症状が出ていない。
 だから、今すぐに治療や手術の必要は無い。

 ただし、定期的にホルモン検査をして、
経過観察をする必要がある。

 目下直径2センチの腫瘍が、
良性だろうが悪性だろうが、大きくなるまで、様子見。

 許容範囲を超えて大きくなってきたり、
高血圧や糖尿病を発症する傾向がみられたら、
即、左副腎腫瘍切除の手術をしましょう、と。

 この次の検査は、9月末になった。
 予約も入れた。

 「白か黒か?」 と問われれば、「黒」。

 ち〜〜〜〜っちゃい「黒」。

 自分の中に、ちょっととでも黒くて悪いものがあるのなら、
即刻手術で取り除いてもらいたいのだが、
左副腎は、心臓のすぐ下にあり、
背中近くの、非常に深く難しい位置にあるので、
必要以上に刺激しない方がいいらしい。

 ほ〜らね!!!

 また、様子見の箇所が増えちゃった!

 右足の靱帯、
交通事故で伸びちゃって障害が出てるけど、
スポーツ選手でも何でもないから、様子見。

 両手の腱鞘炎も、症状が治まっているうちは、様子見。

 首の椎間板ヘルニアも、
手術が危険な箇所なため、
とりあえず、痛み止めを飲みながら、様子見。

 背中の黄色靱帯骨症も、
痛くなければ様子見。

 様子見、様子見、様子見だらけのこの体。

 だんだん年取ってきた、ってことだろう。

 「もう年なんだから、しょうがないよね」
ってやつだろう。
(これ、一番嫌いなフレーズ!)

 「白か黒か」を、はっきりさせたい性格の人間にも、
どうしても「グレー」と付き合わなければならない日がくるのだ。

 「どっちでもない」「どうしようもない」
という、何だか、奥歯にモノが挟まったままの状態で、
毎日、それらを忘れたふりして暮らしていく、
あるいは、だましだまし付き合っていく、
または、「病を得た」と心得て、主体的に付き合う、
そういうすべを身に付けなければならないのだ。

 精神的なストレスは、
若い頃は、自分を育てる糧になるのだろうが、
中高年には、ただの毒でしかない、と聞いた。

 やっぱり。

 ああ、一番下の娘は、まだ5歳。
 学校行って、結婚して、孫産んで、
「お母さん手伝って」と言われたら、快く手伝ってあげたいし、
自分が寝たきりになって育児と介護を同時に背負わせるのは避けたい。

 だから、まだ、
くたばるわけにはいかないんだよ!!!

 石にかじりついてでも、
健康保つっきゃないんだぜ!!!

 だから、ストレス、ダメ〜〜〜!!!

 嫌なこと、だけど、しなけりゃならないことは、
知恵絞って、楽しいことに変換させて、
ストレスレスで生きて行くっきゃないんだっつーの!!!

 生きて行くって、そういうことなんだっつ〜〜〜の!!!



 (了)

 (話の駄菓子屋)2011.4.19.あかじそ作