文房具屋で四男の学校で使うノートを買った。 
 一緒にいた幼稚園児の長女も、ノートに字を書きたいと言うので、
本人が選んだディズニーの国語のノートを買ってあげた。

 四男が、ちゃぶ台の上にノートを置きっぱなしなのに対し、
長女は、すぐにノートを開き、
何やら書き始めた。

 「勉強してるの? えらいね〜」
と言うと、
「うん。じ、かいてるの」
と、ノートに目を近づけて何やら一生懸命に書いている。

 「目が近いよ。姿勢良くね」
と注意すると、
「はい!」
と言って、背筋を伸ばした。

 何を書いているのか、後ろからそっと覗きこむと、
覚えたての文字を、脈略もなく、羅列して書いていた。

 

 「ああ、上手だねえ。今度は、何か、意味のある言葉を書いてみたら?」
と言うと、長女は、
「あ、そっか!」
と言い、
また何か書き始めた。
 
 そして、少し書いた後、急に私に歌を歌えと言う。

 私が歌を歌うと、
「ちょっと! もっとゆっくり!」
と叱られた。

 どうやら、歌詞を聞き書きしているようだ。

 

 「おお〜〜〜! すごいじゃん!」
と大いにほめると、
気を良くして、
「もっと何か書きたい!」
とその場でピョンピョン跳ね始めた。

 「今、見たこと、思ったこと、感じたことを書いてごらん」
と言うと、
「うん!」
と目を輝かせ、
ちゃぶ台の上のノートに飛び込むほどの勢いで向かった。

 そして、何やら口の中で、もごもご言いながら書いている。

 見ると、こう書いてある。

 

  「ぷっ」
と、私が吹き出すと、
「だってそうなんだも〜ん」
と、嬉しそうに言う。


 それから、数日、 
しょっちゅうノートに向かって、
何やら夢中で書き込んでいたようだが、
こちらも忙しさにかまけて、中までは見ていなかった。

 ある日、長女と四男が、激しく喧嘩をしてるので、
「いい加減にしなさい!」
と叱った後、
長女がノートを持って泣きながら2階に上がったので、
「何だろう」
と思っていると、
夜、寝室の布団の下から、ノートが出てきた。

 中を見てみると・・・・・・

 

 「おお〜〜〜」
 と、思わず、感動の声を上げると、
「え? お母さん、なになに?!」
と、四男が、かけつけてきた。

 そこで、私は、ニヤニヤしながら、そのページを見せると、
心優しき小6の四男は、
「あ〜〜〜!!! ごめ〜ん! ごめんよ〜〜〜!!!」
と叫びながら、階段をバタバタ駆け降り、
長女を抱きしめていた。

 その様子を、むふふふ、と含み笑いしながら見ていると、
また数分後には、喧嘩している。

 「また〜! 何やってるの!」
と言うと、四男が、
「だって、いきなり僕の顔蹴るんだよ! ひどいよ!」
と言って顔を押さえている。

 「顔蹴るって、何それ〜!」
と長女を叱ると、長女には長女の言い分があるらしく、
「うわ〜〜〜〜〜!!!」
と、号泣しながら子供部屋に駆けこんでしまった。

 「やれやれだよ」
と思っていると、その晩、またノートに書き込みを発見した。

 

 やっぱり、子供の書く作文は、面白いな……



  (了)


 (子だくさん)2011.7.5.あかじそ作


子だくさん 「長女の国語ノートより」