話の駄菓子屋 「ゴーヤ日記 2011.8.30.」
どんどん育つよ、と言われていたが、
思った以上に、どんどん育つ。
夏場の仕事の忙しさと、肉体疲労にかまけて、
庭の手入れを怠っている間に、
じわじわとゴーヤのツルが伸びまくり、
実がどんどん膨らんできていた。
気が付いた時には、
一回では食べきれないほど大量に実がなっていた。
母に何度もあげていたが、
あげてもあげてもまだあまる。
ゴーヤの苦さと闘うことから、逃げに逃げていたが、
やはり、闘いから目をそらすことはできなかった。
(そろそろ収穫しないと〜)
というほど大きくなった実を、見て見ぬふりして放っておいたら、
いつの間にか黄色になり、ある日、突然、
「パ〜〜〜ン!」
と弾けて、
その腹の中の真っ赤な種を
地面に撒き散らし始めているではないか!
「こ、怖い!」
「そして、グロい!」
なんと恐ろしく攻撃的な繁殖力!
放っておけない。
このままだと、次々に
「パ〜〜〜ン!」「パン!」「パ〜〜ン!」
と、弾けまくり、血のように赤い種が、
わが家の地面を埋め尽くしてしまうではないか!
怖い!
怖すぎる!
仕方なく、嫌々、収穫することにした。
苦いのイヤだぁ〜!
でも、すんごく栄養あるよ〜〜〜!
苦いの食べたくない〜!
でも、食べないと、どんどん増える〜〜〜!
子供たちに手伝ってもらって、
緑の短いゴーヤ数本を収穫し、
親の敵のように塩でもみ倒し、
水にさらしまくり、
更に、砂糖をまぶしまくって、
甘くコーティングしてやった。
そして、大量の豚肉と砂糖と醤油と共に炒め、
お菓子みたいに甘い佃煮を作った。
味見して、「やばっ!」と思った。
いくらなんでも甘すぎた。
こりゃ〜、駄菓子だ。
あんこ玉ばりにしつこいお味。
夕飯の時に子供たちに出してみると、
「甘くておいし〜!」
と言ったのは、野菜嫌いの長女だけで、
あとの子供たちは、
「あん〜〜〜っま過ぎ!」
と、べろを出して、のたうちまわっている。
「お母さん、もっと普通の苦いゴーヤ食べたいよ」
「ただ普通に料理してよ〜」
と、口ぐちに言う。
何という、野菜好きの子供たち!
親の私は、二十歳まで、
野菜と言えば、トマトとキューリとレタスしか食べられない、
極端な偏食だったのに・・・・・・
私が重症の野菜嫌いだったから、
自分自身が、美味しく食べられるように、
細かく刻んで、一生懸命美味しく味付けしていたのが効いたのか?
偉いなあ、君たち・・・・・・
次のゴーヤもどんどん大きくなっていく。
今度は、白ゴーヤが、収穫ラッシュだ。
(苦いの、ヤダよ〜)
と逃げているのも、もう限界で、
また収穫することになった。
これ以上大きくなってしまったら、
また、例のごとく、怖い感じで破裂してしまう。
早く食べてしまわねば!
2階のベランダにたわわになった実を、
四男と長女に採ってきてもらった。
例のごとく、薄切りにし、
塩でもみ、水に晒した。
母が、先日、
「よ〜く炒めれば、苦味気にならなくなるよ」
と教えてくれたので、
まるで玉ねぎを飴色になるまで炒めるように、
白い薄切りゴーヤを、中火でとろとろになるまで炒めてやった。
それから、また、苦味をごまかすために、
多めの豚肉を投入し、
ショウガと砂糖と醤油で炒めた。
一応、ショウガ焼きのイメージだったが、
あまりにしっかりゴーヤを炒めたため、
たくさん水が出てしまい、
結果的に、牛丼味のどんぶりの具が出来上がってしまった。
これを子供たちに食べてもらうと、
「旨い!」
と口々に言う。
やれやれ、とホッとしていると、
「この牛丼、旨い!」
と、案の定、牛丼だと思っている。
「特に、この玉ねぎがピリッとしていて旨い!」
とも言う。
「いやいやいやいや、玉ねぎは入っていないのよねえ。
よく炒めたから透明になっちゃったけど、これ、白ゴーヤだから」
と言うと、
「え〜〜〜! 全然苦くない!」
と言う。
そして、
「苦くてもいいのに〜!」
と、また怒られた。
こっそり、また、
炒める直前に砂糖を薄くまぶしたのがばれたか?
「でも、旨いよ。牛丼にしか思えないよ」
「豚丼だけどね」
ああ、いっぱい食べたのに、
まだまだたくさん実ができていく・・・・・・
美味しく料理できた。
ちょっと苦いけど、頑張れば、食べられるぞ・・・・・・
でも、やっぱりあんまり好きじゃない・・・・・・
ベランダには、緑の長いゴーヤもいっぱいぶら下がってるぞ!
どうする?!
緑は、白より苦いぞ〜!
連日、なるよ〜!
どんどん食べないと、
そこいらじゅうで「パ〜ン!」「パンパ〜ン!」って、爆発しまくるよ〜!
怖いよ〜!
苦いよ〜!
(了)
(話の駄菓子屋)2011.8.30.あかじそ作