「 いまさら女子 」

 生まれてこの方、
自分のことを「女」だと意識したことは無かった。

 「チンチンが生えていないから、性別は、女子なんだろうけど」
くらいの感じだったが、
一応、恋愛対象が女ではなく、男なんだから、
まあ、そうなんでしょうな、程度のものだった。

 男と結婚し、子供を身ごもり、5人も産んだのだから、
女の機能も十二分に使用しているし、
おっぱいを吸わせる喜びも知ってる。

 お母ちゃんとしての幸せも味わわせてもらっている。

 だが!
 それなのだが!

 5番目に生まれてきた長女が、
「女子たるもの、いかにあるべきか」を、
日々追求しながら生きているのを見て、
女子歴45年目にして初めて、「ハッ」と気付いたのであった。

 「今までの私ったら、全然、女じゃないじゃん!!!」と。

 手つかずのド根性ボーボー眉に、
髪は、いつも一つに結わえたひっつめ頭、
化粧には、5分も掛からない。

 女性らしさなど考えたこともないので、
買う服も、着やすくてデザインが面白い
男の子用のポップなTシャツなどが多く、
スカートなど、ここ数年、とんとご無沙汰だ。

 いつも夫に、
「あんた最近、おじさんくさいの通り越して【おばあちゃん】じゃないの!」
と、苦言を呈してきたのだが、
そんなことを偉そうに言う私は、
女のかけらも残っていない、むさくるしい【おっさん】じゃないか!

 【おっさん】と【おばあちゃん】じゃあ、
ちょうどいいじゃないか!

 性別ばっちり、結婚成立してるじゃん!

 いやいやいやいやいやいやいやいや。
 これじゃあ、だめでしょう!

 6歳の長女がいつも言うように、
「女の子は、いつも可愛くしていないとダメなの!」
・・・・・・だろうが!

 夫に「男らくしろ」と言うのなら、
その前に妻は、ちゃんと【女】してなきゃあ!
 年齢的におばちゃんになっても、可愛い女じゃなくちゃ!

 ぼさぼさ頭もひっつめ頭も、ダメダメ!
 性格も、やさぐれてたら、ダメなんだって!

 いつもいつも、
「男とか女とかじゃなくて、人としてどうなんだ!」
とか、息子たちに偉そうに演説ぶっていたけれど、
「お前! 男として、それは、どうなんだい!」
とも、啖呵を切ってもいた。

 しかしながら、そんな風にスパッと叫ぶ私の、
女らしさは、いずこへ?

 完全に、「男の中の男」に向かって、ばく進中じゃないか!


 女子力上げよう!
 自分の性別、思い出そう!

 私ときたら、長女が生まれるまでの13年間、
男4人を、力づくで育ててきたせいか、
ますます男気ばかり上がってきているんだって!

 ダメ!
 このままじゃ、どんどん「イイ男」になっちゃう!

 女性ホルモンだそう!
 イソフラボン採ろう!

 豆乳がぶ飲みだよ!

 いや、その【がぶ飲み】が、男っぽいと言うんだよ!

 ちゃんと、シャラ〜ンとしたグラスに注いて、
両手でグラスを大事そうに持ち、
ちょっとづつ、クピクピ飲んで、
しかし、一気に飲み干さず、
途中で一回、苦しそうにグラスを口から放し、
「ハアハア」と、可愛く息切れし、
クリクリお目々で、「よ〜し」と天井を睨んでから、
もう一回グラスに向かっていくのよ!

 ケナゲに!

 ケナゲに豆乳ちゃんを、クピクピ飲むのよ〜〜〜ぅ!!!

 (ん? なんか違う・・・・・・)
 (目指す女子の有りようとは、何かが違うぞ・・・・・・)
 (「女子」らしくしたことないから、全然「女子」のやり方わかんないぞ〜!)

 よしっ!

 とにかく、ホルモン出してこ!

 更年期直前スペシャル! 
 女性ホルモン30%拡大バージョンだよ!!!

 【最終回直前スペシャル!  30分拡大放送】
・・・・・・みたいにね!

 何かの本で読んだぞ。
 女性は、(月経が)上がる前に、
もう一回、物凄い発情期が来るってことを。

 産めなくなる前に、
「ちょっと待て! 最後にもう一回、産んでみないか!」
「ラストチャンス! ファイナルアンサー?」
・・・・・・みたいな事を、体が問うてくるわけだ。

 女たちに。
 女たちの体に!

 ああ、いいさ!
 いいともよ!

 5人産んだから、もう心残りは無いけれど、
映画「君に届け」での三浦春馬の、
あの【ラヴラヴ目ぢから】を思い出しながら、
女子力振り絞って、行こうぜい!

・・・・・・じゃなくって、

行くわよぉ〜〜〜ん(@_@)

 (やっぱ、なんか違〜〜〜〜〜う!!!)



 (了)


(話の駄菓子屋)2011.12.13.あかじそ作