「 出てけ出てけの詩 」 |
すぐ横にいれば、あれこれと 口うるさく注意してしまう 傷ついているのを見かけたら、 「そういう時は、こうするといいよ」と具体的にアドバイスする 遠いところに出掛け、ちょっとでも帰りが遅いと 「今どこ?」とメールを送る それが親ってもんなのか? それとも自分が特別、過保護で過干渉か? 初めての子が進路を自分で決めてきて、 遠くの学校に行くことになり 家から通うか、寮に入るか、と、迷っていた時、 私は、迷わず、「寮に入れ」と言った 出ていけ、と 君がずっと近くにいてくれたら 私は、どんなに助かるか 君がいつも家を助けてくれたら 4人の弟妹は、どんなに楽できるか それは、あらためて考えなくても よくわかっている だからあえて 出てけと言った 君の人生を 君のために生きるために 今までいつもいつも、 お母さんを支えてくれて、 助けてくれて、 ありがとう アカンボが次々生まれて お母さんは、その世話に追われ 君のことをろくに抱いてやれなかった 2歳の頃から 泣いている君に 泣いてないで弟を見ていてちょうだい、と お母さんは、君に頼んだ お母さんにほめてもらいたくて お母さんに抱きしめてもらいたくて 君は、いつも我慢して お母さんのために働いてきたんだ 赤ちゃんが何人もいて、 それがみんな全然泣きやまなくて、 お母さんが髪振り乱して ご飯作ったりオムツ換えたりしている時、 君は、黙って雨戸を閉めてくれたね ストーブに給油をしてくれていたね まだお手々がモミジだった頃から このままだと みんな君に甘えてしまうから だから出ていくんだよ さあ、早く! 「僕は家から通う方がいいんだ」 と言う君に 突き放すように 出てけ、と言った 親の仕事は、 「子を巣立たせてなんぼ」。 大人になってゆく息子や娘に 家を出るな、せめて近くに住め、親の老後の世話をしろ、なんて 本末転倒のことを言う親は、 親失格なんだ 本当に子が可愛いんだったら、 親ってもんは、 独居だろうが 孤独死しようが 「全然淋しくないわ!」 「出てけ出てけ!」と、大ミエ切って、 子を追っ払わなくちゃ 腹の中で泣きながら 君が親から離れ 荒野に放り出されて 甘える相手も頼れる者もなく ひとりぼっちで傷つきながら 強い大人になってゆくことが 君のためになる もう父や母には頼れない、 自分で自分を何とかしなくちゃならないのだ、と、 君自身が思い知り、 踏ん張りはじめること それが子育てのゴールだと お母さんは、自分に言い聞かせる バイトを始めたんだってね 寮の近くの居酒屋で 建築の勉強は、面白いし、 この仕事に就きたいから 勉強は絶対頑張るから、と 心配する母に優しく言ってくれたけど ちゃんとご飯だけは食べてね 栄養のあるものを食べてよ 寮の仲間とスノボに行ったと言ってたね お友達ができてよかった 楽しんで生きているね 良かった この先、君の人生は、 楽しいことばかりじゃないだろう プライドをズタズタにされたり、 地を這うような思いをすることもあるだろう でも、負けんなよ! 希望を捨てるな! 頑張るんだ! 頑張るんだ!! 頑張るんだよ!!! (了) |
(子だくさん)2012.1.24.あかじそ作 |