「 同時多発的育児問題 」

 子供は、それぞれみんな、
毎日、めまぐるしく変化し、育っていっている。

 それは、親が思うより激しく、速く、凄まじい変化だ。


 この不景気で物騒な世の中は、
まるで、荒波の大海にも似て、
真っ暗闇のどこから襲ってくるとも知れぬ大波に怯えながらも、
気持ちを振り絞って子を産み、育てている。
 親となった「この間まで子供だった者」たちは、
傷つきながら、へとへとに疲れながらも、
24時間、必死に家族と言う小舟を操り、
今にも折れそうなか細いオールを半べそで漕いでいる。

 連日の嵐の最中、
同じ小舟に乗るおさなごを気遣い、確認して声を掛ける。

 「みんな無事か?!」
 「大丈夫か?!」

 そう叫びながら、子を振り向くと、
「んがっ!」
「えええええええ〜〜〜?!」
と、驚き、そっくり返ることになる。

 「お前、そんなにおっきかったっけ?」
 「お前、全然勉強してなかったのか?」
 「お前、いつの間に声変わりしたんだ?」
 「お前、いい女になってるぞ!」
 「お前、どこ行った〜〜〜〜〜!!!」

 ちょっと目を放した隙に、
あの、可愛かったチビちゃんたちが、
なんか違う物になってるじゃないかよ〜ぅ!!!

 下手すりゃあ、

 「お前、誰?!」

ってほど、おたまじゃくしがカエルになるくらい、
姿かたちが激変していることだってあるのだ。

 ほんのちょっとの隙に、だ。

 うちの場合は、親が人一倍ぼんやりしているものだから、
振り返ったときの衝撃が尋常じゃなかった。

 「長男! 何か、全体的に、もう、どっちかというと【大人】になってる?!」
 「次男! バイト全盛。大金持ち。服もレジャーも食べ物も、贅沢三昧! 勉強もして〜!!」
 「三男! いつの間にグレて、アホの子になってた? で、いつの間に更生してた?」
 「四男! 『この間、アナフィラキシ―ショックで呼吸ヤバかった』って、何カ月も経ってから言うな〜!」
 「長女! 女子力半端ない! もう、すぐにでも嫁に行けるし、だめんずの世話もできるな!」

 な〜〜〜〜〜んも変わってない親。
 ぜ〜〜〜〜〜んぜん違う生き物になってた子供たち。

 えっと・・・・・・
 どこから手をつけたらいいですか?

 長男の次年度の奨学金の申請?
 次男の大学進学問題?
 三男の受験応援と、不合格の時の心の準備と金の準備?
 四男の各科病院通い?(アレルギー科と耳鼻科と整形外科、その他)
 長女の入学準備と、家の中の女子専用スペース作り?

 ああ、同時多発的に育児は進む。

 親は、二人しかいないのに。
 というか、父親は、ほとんど家に居ないから、
実質カーチャンひとりで全部全部背負うのに。

 負いきれんのか?!
 潰れないのか?

 第一、全てに目が届くのか〜〜〜?!

 (おそらく届きません!!!)




   (了)

(子だくさん)2012.1.31.あかじそ作