「 3人同時入学準備 」


 算数セットのおはじきやら数え棒やら、
細かい一個一個に小さい名前シールを貼る作業。

 これで5組目。

 あんなに苦痛だったこの作業が、
5人目ともなると、さすがに要領を得てくる。

 あらかじめ下の名前を書き込んだ5ミリ四方ほどのシールを、
ピンセットでつまんで、おはじきの小さなくぼみに乗せ、
先っちょでこすって貼り付ける。

 まるで、伝統工芸の職人のごとく、
繊細かつ無駄の無い動きで、
次々と貼りつけてゆく。

 数年前の内職経験が、
これらの作業を素早く仕上げる腕を上げてくれた。

 布やらヒモやら、袋物の材料を子供と一緒に買いに行き、
その日のうちに、夜のテレビを見ながら縫い上げる。

 アイロンプリントで名前を付けて、出来上がり。

 黄色い通学帽に、町内ごとの色分けリボンを縫い付け、
体操服や上履きにも記名。

 5人目ではあるけれど、
今までは、ずっと男子のものだったので、
女子のものは、初めてで、新鮮だ。

 長女の小学校入学準備をほぼ終わらせ、
次は、四男の中学入学準備だ。

 先日、行きつけの制服屋さんで、
体操服やらジャージ上下やら、
バッグ2種類、上履き、体育館履き、
学生ズボン(学生服の上は、お下がりを使う)などを買ったので、
あとは、学生服の上を四男に着せて、
腕の長さを測り、たくしあげて縫い付けるだけだ。

 昼間、仕事の後に、
給食費等の引き落としの手続きをするため、
必要書類を銀行に持って行き、
夜は、ぞうきんを人数分×2枚づつ縫って、ひもを付ける。

 明日は、長女が入学式に着るスーツを、
長女と一緒に買いに行く。
 今は、AKB風のチェックのスカートと
ブレザージャケットの組み合わせがトレンドらしいので、
おそらく長女もそれを選ぶだろう。

 さて、お後は、一番問題の三男だ。

 まだ、入学する高校が決まっていない。

 埼玉県の県立高校の受験日は、3月の上旬。
 卒業式は、その数日後だ。

 第一志望の県立高校に受かってくれれば、
おなじみの制服屋でチャチャっと採寸して制服を作れるし、
高校用品一式、自転車で数分の学校に買いに行けば済む。

 ところが、公立に落ちたら、
速攻で百万円弱の金額を銀行に振り込みに行き、
その足で電車を乗り継いで、
片道1時間半ほどの私立高校に出向き、
入学手続きを済ませなければならない。

 公立の合格発表の翌日、3時までにだ。

 落ち込んでいる暇もない。

 その他にも、
テキストだの制服だのの用品購入や、入学説明会など、
何日かに分けて、何度も何度も親子で足を運ばなければならない。

 こりゃあ、大わらわだ。

 仕事のシフトも、セーブしておかないといけない。

 三男がらみの卒業・入学準備は、
どう考えても、時間に追われてバッタバタになるのは目に見えているので、
今のうちに、小学校中学校の準備は終わらせておこう。

 私は、以前、この高校入学準備で大失敗をしたことがあるのだ。

 次男の高校入学1週間前になって、
ハタと、
「あ!!! 高校の制服買ってないじゃん!」
ということに気付き、
血圧マックスで、なじみの無い学校指定の制服屋に駆け込み、
イヤミをたらたら言われながら、
無理を言って、超お急ぎで制服を発注したのだった。

 ああ、もう、あんな必死な思いをするのは、こりごりだ。

 今回は、余裕を持って準備しておきたい。

 なにせ、わが家には、3人いるのだ。
 新入生が。

 忙しい・・・・・・
 ああ、忙しい・・・・・・

 忙しいのは、苦手だ。
 急かされると、大パニックになってしまうのだ。

 必死になりたくない。
 あわてまくって、取り乱して、頭爆発したくない。

 一個一個、片づけていこう!
 一個一個!

 一個一個、確実に、よ!

 パ二クルな、私よ!
 パ二クッては、ならぬ!

 でも、でも、でも、でも、
どぅわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

 もう、ちょっとだけ、パ二クり始めている気がする〜〜〜〜〜う!!!


 (了)

(子だくさん)2012.2.7.あかじそ作