「 新春! ししまいの恋 」
テーマ★獅子舞

 正月、実家でおせちをつまみながらテレビを見ていると、
「いとこのチカチャン、今度結婚するんだって」
と、母が言った。
「あら、めでたいじゃん」
と、私が言うと、突然父が、
「全然めでたくない!」
と、叫んだ。

「は?」
と、私が、あんぐりしていると、
「相手が、孫3人いる50代の男だから」
と、母が言う。

「ええ〜〜〜〜〜〜!」

チカチャンは、今年30歳である。

 母は、イライラしながら続けた。

「それでさあ、カツシカのジイちゃんのトコから毎日電話があってさあ! 
「『お前も長女なんだったら、何か言ってやれ』なんて言うのよ!」
「誰に何言うの?」
「だから、チカチャンに! 『そんなオヤジやめろ』って言え、だって」
「それは、ダメだよー!」
「でしょう? チカチャンの親が許してるのに、
何であたしが出ていく必要があるのよ、ねえ!」
「そうだよ。大きなお世話だよ」
「ジイチャンたち、自分で意見言う勇気ないから、あたしに言わせようとしてさあ!」
「それは、おかしい!」
「ねえ! どうしても意見したいなら、自分で言いなさい、っつーの」
「うん。そうそう」
「もしあんたがオヤジ連れてきたら、ちょっと言うかもしれないけどさあ」
「うん、まあねえ」
「姪の人生にどうこう口出しするほど、あたしゃ暇じゃないわよ」
「もっともだ」

 すると、突然、父が立ち上がり、
「面白くねえ! チッ!」
と、舌打ちした。
 
「は?」
 私がまた、あんぐりしていると、
「お父さんも、気に食わないんだって」
と、母が言う。
「だって、チカチャンのこと全然興味ないくせに! 何で急に心配するのよ」
 私が、プルプルと怒りに震える父を見上げて言うと、
「い・・・い・・・いやらしい!」
と、真剣に怒っている。

「うらやましいのよ! そのオヤジのこと」

 母が笑う。

「違う!!」

 父は、ンガ〜、と言って、どすどす音を立てながら、2階へ上がっていって
しまった。

 母と私が、わはは、と笑いながら食器を洗ったり、
皿を食器棚に入れたりしていると、父が下に降りてきて、

「シシガシラみたいな顔して!」
と、怒鳴る。

 確かに、チカチャンの顔は獅子頭だ。      
でも、それとこれとは関係ない。
 でも父は叫ぶ。

「孫3人もいる男と・・・・・・うう・・・・・・いやらしい!」
 
「想像すんなって!!」

 母と私が、同時に突っ込んだ。
しかし、父は、まだ言う。

「シシガシラが・・・・・・オヤジと・・・・・・」                 

「オ〜ウ♪ シシ・・・マイ・・・ラ〜ブ♪ って?」

 私が言うと、父は、黙って2階へ行ってしまった。

 そして、しばらくすると、上から、

「だ〜〜〜〜っはっはっはっ!!」

と、父の爆笑が聞こえてきた。

 無責任で、寛容な私たち・・・・・・
ヒトゴトだと、なんと心の広いことよ。

 お幸せにね、チカチャン。
 獅子舞は、おめでたいものだから、寿2倍だね。

 獅子舞の獅子に噛まれると、その年1年間、病気しないんだって。
それならオヤジも長生きするしね。

・・・・・・って、想像しないのっ!


              (おわり) 
2002.01.19 作:あかじそ
区分 : しその草いきれ