「 待つ身 」



 結果は、まだ出ていないが、
一応、三男の公立高校受験は終わった。

 おそらく、不合格じゃないかと思う。

 倍率は、1.1だが、
内申点が低いので、学校からも、塾からも、
よっぱど本番のテストの点数がよくなければ難しいですよ、
と言われていたが、
1年間、わが家の有り金はたいて塾に通わせた結果、
寸前の模試では、合格圏に入ってきていたのだ。

 「受かるんじゃあ〜ないかな〜、何だかんだ言って〜」

 ・・・・・・と、誰もが楽観視していたが、
学力試験から帰ってきた三男が、
夕方のテレビ埼玉の番組を見ながら自己採点したら、
恐ろしく低い点数だったのだ。

 合格のボーダーラインから、
軽く50点は不足している。

 塾に通わせる以前の成績だったので、
雨の日も雪の日も塾代を稼ぐために頑張った親としては、
ショックでめまいがしてきた。

 大体、本人だって、
夏休みから塾に毎日毎日通い詰めたのに、
本番でまったく実力が発揮できなかったのは、悔しかろう。

 私と似ているのだ、本番に弱いところは。

 後日、面接もあるけれど、
もう、開き直って元気よくやるしかないよね、
と、落ち込む三男には声を掛けたが、
一番落ち込んでいるのは、私かもしれなかった。

 ハッキリ言って、私立に通わせる経済力が無いのだ、わが家には。

 あらゆる援助金を駆使して通わせることができたとしても、
本人が、「あんなバカ学校行きたくない」とか
「あんな遠いところ、通いきれない」とか、グチグチ言うのを聞くと、
その後ろ向き発言にどんどん滅入ってくる。

 それでも、必死に頭を切り替えて、
「どこの学校に行くとしても、とにかく前向きに頑張ってみようよ!」
と、声を掛けても、
「もうどうでもいい。死にて〜」
などとネガティブな発言を連発されると、
「テメーが部活引退するまで一切勉強しなかったのが悪いんだろうが、オラ〜!」
とぶち切れそうになるのだった。

 本人も不安だろうから、親の私がワタワタしていたら、
余計に不安定になるだろう。
 だから、努めて、
「受験なんざぁ全然たいしたことじゃないんだよ!」然としていようとは思うのだが、


心の中じゃ、凄まじく取り乱しているものだから、
ちょっとした夫のドジに対して、
変なテンションの吹き出し方で
「ちょっと何やっちゃってんだよ、おっさん! ゴラッ!」
などと、チンピラばりに巻き舌で怒鳴ってしまう。

 私のテンパり加減に気付いている夫は、
「はい、ごめんなさい」
と、えらく素直に謝り、
怒鳴る私の頭をナゼナゼして通り過ぎていくのだった。


 今日、土砂降りの中、面接から帰ってきた三男は、
「ダメだ! 完全に落ちた!」
と、半笑いで言った。

「たぶん受かってると思う」と余裕の発言をする
成績の良い友達に対しては、面接官も優しく、
「高校でも野球部続けるのかな?」
などと雑談まじりだったのに、
不合格候補の三男には、
「工作が好きだって言うけど、一体何作ったの?」
「え? 犬小屋? 他には? 何と何を何個くらい作ったの? え?!」
などと、つらく当たったのだと言う。

 「あ〜あ! 友達に落ちたって言うのイヤだなあ!!!」
と、大声で言う三男に、
「落ちたらそれは、ご縁が無かったってことなんだよ。
 その学校に言ってたら、通学中に事故死するかもしれないし、
中退になってるかもしれないけど、
私立行ったら、意外と自分と相性が良かったり、
一生付き合う親友ができたりするかもよ」
と、言ってやった。

 第一、私がそうだった。

 第一志望の地元の短大を落ちて、
滑り止めの大学で夫と出会い、
結婚して、5人の子供を持てた。

 夫と出会ってしまったのは、不運だったのかもしれないが(?)
子供を5人も持てたのだから、
無理矢理結論付ければ、
「第一志望落ちてよかった」
なのだ。

 負け惜しみに負け惜しみを重ねて、
親として三男に大いに語ってみたが、
試験の全部終わった彼は、
「もう、ジタバタしてもしょうがないしな」
と、案外さっぱりしていた。

 さて、合格発表、もしくは、不合格発表は、
いよいよ今週末。

 落ちることを大いに想定して、
私立高校に入学金を振り込む準備を万端にしてある。

 振り込み用紙にもばっちり名前や住所を書き込み、
現金も、バッグに入っている。

 週明け朝イチで、私立高校に行き、
入学手続きをするために、
仕事もしっかり休みを取ってある。

 ある意味、本人よりも落ちる気満々じゃないか!!

 さあ、乞うご期待!
 やっぱり落ちるのか?
 はたまた、奇跡は起きるのか?

 結果は、来週!

 カミングスーン!

 はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ぁ(+o+)



  (了)

(子だくさん)2011.3.6.あかじそ作