「 コンセント戦争 」

 長男、次男、三男が、スマートフォンに機種変更した。

 今まで外出時連絡専用だったものを四男用にし、
今年小学校に上がった長女に子供携帯を契約したので、
ついに我が家は、一人一台、
計7台の携帯電話を持つことになった。

 次男は、自分のバイト代で代金を支払っているが、
大学の勉強を優先している長男と、
高校でがっつり運動部に入る予定の三男、
中学生になった四男、
小学生になった長女の携帯料金は、
家計から支払うことになったので、
えらい出費である。

 高校生になり、
バイトして通信料を自分で払うのならば
携帯を契約してもいい、という約束で今まできたのだが、
運動部に打ちこみたいと言う子に無理やりバイトは強要できない。

 かといって、このご時世、
高校生に携帯電話を持たせない、ということは、
友人関係を断絶させてしまうことにもなる。
 仕方なく、しぶしぶ契約してやった。

 また、今まで土日祝日に私が仕事で家を空けるとき、
四男が長女を見ていてくれたので安心だったが、
今年度から四男が中学生になって部活を始めるので、
土日、長女がひとりで留守番する時間ができてしまう。

 だから、地震発生時の連絡や防犯のために、
6歳の長女でも操作できる子供携帯を持たせることにしたのだ。

 そんなわけで、非常に不本意ながら、
我が家は、一人一台になった。


 そこで、問題が発生した。

 一軒に携帯電話が7台。

 正確に言うと、
私の仕事用の会社の携帯と、
夫の仕事用のiPadもあるので、
合計9台の要充電のものが存在しているのだ。

 我が家は、築30年を超える老朽化した家屋で、
コンセントカバーもバリバリに割れ、
うまいことコンセントが差せても、何だかぐらぐらなのだ。

 そして何より、コンセントの数が異常に少ない。

 ただでさえ少ない居間のコンセントに、
常時、電話、テレビ、ビデオデッキ2台、
石油ファンヒーター、サーキュレーター、
仕事用携帯充電機が差さった状態で、
残りのコンセントを兄弟たちが奪い合って充電している。

 しかも、あの、スマートフォンというやつは、
なぜあんなにコードが短いのだろう?

 コンセントの前の狭っ苦しい壁際に、
帰省中の長男、春休み中の次男三男が、
頬寄せ合って固まって座り、
コンセントからつながるスマホをいじっている。

 みんながみんなコードが短いので、
コンセントの前に集まって座りこむしかないのだが、
それにしても、
「押すな」とか「もっとあっち行け」とか言いながら、
男子学生3人が部屋の片隅に集まり、
団子になってくっついている景色は、
いかにもむさくるしく、どう見ても滑稽だ。

 充電しているだけならまだいい。 
 その場に居なくてもいいのだから。
 しかし彼らは、充電しながらアプリで遊んでいるのだ。

 また、だれかが充電している間、その場から離れると、
違う誰かがその携帯充電機をコンセントから抜き、
自分の充電機をつなげてしまう。

 「ぼくの充電切ったの誰!」
という叫び声が、毎日何回も聞こえてくる。

 ある日、私は、機転を利かせたつもりで
延長コードを買ってきて、コンセントに差し、
延長コードの先の三口コンセントを部屋の比較的広いスペースに置いた。

 「これなら同時にいっぱい差せるし、狭い所で肩寄せ合うこともないでしょう」
と言うと、
「おお!」
と、一同感嘆したのだが、
結局、その三口コンセントの差し込み口部分に
でかい図体のお兄さん3人が頬寄せ合って集まっているのである。

 結局、充電機のコード自体が短いので、
壁のコンセントで充電しようが、
延長コードで部屋の真ん中で充電しようが、
集まってしまうことには変わらないのであった。

 コンセントの奪い合いと、コンセント周りの渋滞。

 何とかならんのか、これ!



  (了)

(子だくさん)2012.4.10.あかじそ作