「 がんばれ! 新学期! 」 |
クラス替えだけでも若干情緒不安定になる子供たちだが、 新入学ともなると、相当神経が疲れるようだ。 幼稚園から小学校に上がった長女。 たまたま幼稚園で仲の良かった子と同じクラスになり、 出席番号も前後で、席も近かったため、 親が想像したよりも緊張せずに通えているようだ。 しかし、もともと私似で緊張の強い子なので、 連日、帰宅するなり、蒼い顔でぐったりと横になり、 こたつで居眠りしてしまう。 ミルクアレルギーで、 みんなと同じものを食べられないのも、 少しストレスになっているようだった。 それから、中学に入学した四男。 彼は、おとなしくて気が弱いようでいて、 結構、打たれ強く、柔軟な子のようだ。 小学校のころから、人並にトラブルには巻き込まれていたが、 泣き虫で、始終メソメソしている割には、 「まあ、何とかなるでしょ」 と、案外割り切りも早く、 うまい具合に事後の対策も立てて過ごせるタイプだ。 誰かにいじめられそうになっても、 のらりくらりとターゲットから外れていく技術も持っている。 いつもニコニコ笑っているせいか、 女子には、強めに「イジラレル」けれど、 男子には、割と好かれているようなので、 ある程度人間関係に対しては、安心できる。 問題は、高校に入学したばかりの三男だ。 今まで、常に何人かの友だちとつるみ、 肩を組んだり、背中をつつき合ったりして、 スキンシップまみれの生活を過ごしてきたが、 クラス全員初対面なので、 入学以来、極度に萎縮して過ごしているらしい。 クラスの半分が野球部に入部していて、 すでに仲良しグループができあがっているらしく、 入りこむ隙もないという。 三男は、高校からテニス部に入ろうと思っていたので、 野球部軍団から見事に弾かれ、 入学以来、1週間、ずっと、誰とも口をきかず、 お弁当も、教室の隅で、ひとりで黙って食べているという。 今まで、学校では、 常に友だちとベタベタつるんでいた三男にとって、 この状況は地獄のような状態で、 やっと入った学校なのに、 「もう嫌だ、早く卒業して働きたい」 と毎日言っている。 「大丈夫だよ、部活に入れば、親友もできるよ」 「実習とか始まれば、一緒に作業するから、嫌でも声掛け合って仲よくなるって」 と、私も声を掛けているのだが、 学校の話題になると、暗い表情になり、 みるみる元気がなくなってしまう。 三男がため息をつくたびに、 「ニコニコ笑ってなよ。【いいヤツオーラ】出してれば、絶対人が寄ってくるから」 とか、 「一日一回でいいから、自分から声を掛けてみたら」 とか、 「最初から盛り上がるわけないんだから、空回り上等、って思ってなよ」 とか、言ってみるが、 「うん」と元気無くうなづくだけだ。 高3の次男は、 「僕も最初、うまく話せなかったけど、 とにかく、早めに誰かと絡むようにした方がいいよ」 と、兄らしくアドバイスしていたが、 次男は次男で、 バイト先のパートさんたちが、 自分の事を陰でボロクソ言っていることを知り、 ちょっとへこんでいるのだった。 長男は、春休み中に友だちと行ったスノーボードで、 友だちと正面衝突して、友だちが鼻の骨を折ってしまい、 責任を感じて落ち込んでいた。 私も、長男の加入している賠償保険を手続きして、 治療費を折半しようと、いろいろ手伝ったが、 結局、友だちがいい人で、「君のせいじゃないよ」と言ってくれ、 今までと同じように仲よくつきあってくれているらしい。 子供たちは、いつも人生の訓練を受けている。 それは、時に、神経をすり減らし、心を強く傷つけ、 迷いと戸惑いの渦中に巻き込まれることとなるが、 親は、それを横で見守るしかないのだ。 手を出して助けるのは、簡単だ。 見守ることより、手を出し、口を出す方が、100倍楽だ。 しかし、子供を想うのならば、 出しゃばらずに、じっと我慢して、 子供が傷つき、泣き、つかまり立ちし、自立し、 そして、また歩き出すまでを、 「素知らぬ顔」で傍観しなければいけない。 それが親の仕事なのだ。 中には、傍観すらしないで、 子供の存在を忘れて自分だけ楽しんでしまう親もいるが、 たいていのまともな親は、 ここいら辺で、子育ての構えを変える、という修行を積むことになる。 口笛でも吹きながら、横目でちらっと見て、 本当に危ない時だけ、 本人に気付かれないように、 ちょちょっ、と、背中に手を添えたりして、 支えてやるだけだ。 ご飯を食べさせる。 笑顔を注ぐ。 早く寝かせる。 ちょっと肩を抱く。 背中をポンとたたく。 それしかないのだ。 子育ての最終段階。 さあさあ、子供たち。 がんばれよ、新学期! 知らん顔してるけど、カーチャンは、ずっと見てるぞ!!! (了) |
(子だくさん)2012.4.17.あかじそ作 |