「 卓を囲むか! 」



 「将来、青年と化した息子たちと麻雀したいなあ」
というのが、密かな楽しみであった。

 「お母さん、それ、ポン」
とか、
「兄ちゃん、僕、リーチだ」
とか、
「あら、悪いわね、母は、ロンざます!」
とか、子供たちとやったら楽しいだろうなあ、なんて。

 それが今、突然、叶いそうになっている。 

 先日、hana一家が、「ドンジャラ」を持って遊びに来て、
すっかりハマってしまった中1の四男が、
「ぼく、ドンジャラ買う!」
と言い出したのだ。

 私が、
「ドンジャラ買うなら、いっそ麻雀買って本格的にやったら」
と言うと、四男は、
「麻雀やる! やりたい!」
と、大乗り気になったのだ。

 早速、リサイクル屋で中古の麻雀セットを1600円くらいで買ってきた四男は、
台所の床で、小1の長女と共に、夫から麻雀のルールを習っていた。

 前に使っていたこたつの天板には、
裏に麻雀用に緑の布が張ってあったが、
今のものには、無い。

 というか、いまどき、こたつの天板の裏が
麻雀用に加工してある方が少ないんじゃないだろうか?

 昔は、おっさんが4人以上集まれば、すぐ麻雀していたが、
今は、各自自分のゲームを持ち寄り、
丸くなって通信しているのかもしれない。

 やってることは、いつの時代も同じようなことなのだろうが、
ここは、あえて、「卓を囲む」ってことをしたいじゃないか。

 聞けば、長男は、
大学の寮で友だちとしょっちゅう麻雀をやっているというし、
次男や三男も、スマホとかゲームで役やルールを覚えればいいじゃないか。

 これなら、この夏休みにでも、
すぐに卓を囲める。

 いや、待てよ。

 いまや「雀卓」がなかなか売ってないとすると、お取り寄せか?

 いや。
 台所のテーブルを兼ねた「卓」を、
自分で作っちゃえばいいんじゃないか?

 天板も、テーブル用の足も、ホームセンターで売っていたじゃないか。
 オリジナルの「卓」、作ってみたいぞ!

 いつもは、素朴な、カントリー調のテーブルで、
ひっくり返せば、「雀卓」、なんて、おもしろいじゃないか。

 おお、「家族で麻雀」の楽しみと、「日曜大工魂」が相まって、
わくわくが止まらないぞ〜!!!

 この夏は、電動ドライバー片手に、
心は、「リーチ」!!!

 ただ、ひとつ気がかりなのは、
夫がメンツに加わろうとしちゃっていることだ。

 みんなが、頑張って面白い役を組み立てているのに、
夫は、いつも必ず、
しょ〜〜〜〜〜もない、セコい役で、
先に上がってしまうのだ。

 「どんな小さい役でも、勝ちは勝ち」
って、確かにそうかもしれない。

 でも、でもね!

 座がしらけるんだよ!
 あんたのやり口!
 あんたの生きザマは!!!

 人々を不快にさせるほど異常にセコいヤツは、
「卓」を囲むな!

 楽しみたいのよ、ゲームだもの!

 地道なのは、日常生活の中だけで十分!
 遊びくらいは、「地味で安泰で確実」とか、
そういうものから離れたいじゃない!

 息子たちとは、麻雀したいけど、
夫とは、絶対お断りだからね!

 生きザマ出るのよ!
 麻雀は!!!!!

 あたいは、卓の上では、
「一世一代のバクチ打ち」として猛然と生きる!

 あんたは、勝手に、
何が楽しくて生きてるのかわからないような打ち方してろ!

 交わらないのさ、あたいたちの卓上人生はっ!

 「卓上離婚」ってやつさっ!!!

 ハッ!!!



    (了)



(子だくさん)2012.7.31.あかじそ作